とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

あちこち「SYOWA」 135 一番美しく ・黒澤明

2017-04-11 00:11:16 | 日記
戦意高揚。黒澤明はこういう大義名分の中にも映像の中に密かに反戦の志を潜ませていました。AAkiraはそれが痛いほど分かりました。

一番美しく (The Most Beautiful) Trailer


『一番美しく』(いちばんうつくしく)は、1944年(昭和19年)4月13日公開の日本映画である。東宝製作、映画配給社(紅系)配給。監督は黒澤明。モノクロ、スタンダード、85分。
第二次世界大戦中に、軍需工場で働く女子挺身隊員達の姿を描いたヒューマンドラマ。21名の女優を実際にロケ地の日本光学工業に入寮させ工員同様の生活を行わせることで[1]、女子挺身隊の日常をドキュメンタリータッチに描いた。

あらすじ

兵器に搭載される光学機器を生産している東亜光学平塚製作所では、戦時非常態勢により生産の倍増を計画発令する。男子工員は通常の2倍、女子工員は1.5倍という目標数値が出されるが、女子組長の渡辺ツルを筆頭とする女子工員達は、男子の半分ではなく2/3を目標にしてくれと懇願、受け入れられる。奮発する女子達だが目標達成は生易しくはなく、一時的に上昇した生産高は疲労や怪我、苛立ちから来る仲違い等により下降する。しかし、女子工員達の寮母や工場の上司達の暖かい協力、そして種々の問題を試行錯誤しながら解決し、更に結束を強めた彼女達の懸命な努力は再び報われ始める。

キャスト

石田五郎:志村喬
吉川荘一:清川荘司
真田健:菅井一郎
水島徳子:入江たか子
渡辺ツル:矢口陽子・・・後、監督黒澤明の妻となる
谷村百合子:谷間小百合
山崎幸子:尾崎幸子
西岡房枝:西垣シヅ子
鈴村あさ子:鈴木あさ子
小山正子:登山晴子
広田とき子:増愛子
二見和子:人見和子
山口久江:山口シズ子
岡部スエ:河野糸子
服部敏子:羽島敏子
阪東峰子:萬代峰子
鼓笛隊の先生:河野秋武
寮の小使:横山運平
鈴村の父:真木順

作品解説

戦時下に製作された映画は全て、何がしかの形で戦争協力を表現していなければならなかった。登場人物の言動が非協力的に描かれる事は許されず、本作品においても、戦争そのものを間接的にでも否定するような表現は為されてはおらず、プロパガンダとしての役割を帯びていたのは否めない。しかし、本作品の舞台は本当に稼働していた工場であり、俳優達は実際の生産作業の場に組み込まれ、その中において撮影が進められた。また鼓笛隊を組織、実際に朝の往来を演奏行進し、就労時間外にはバレーボールをやり、寮生活まで実際に経験させられた女優達は、各々が本当の女子工員であるが如く働き、喜び・苛立ち・悲しみなどの感情表現を豊かに見せている。

リアリティを求める監督の狙いが充分に功を奏している出来映えと評価された作品であった。
登場人物は全員献身的かつ謙譲に努めており、彼等の言動は多分に美化されすぎているように映るが、当時の宣伝映画としてはそれが狙いであり、個人的な苦労や悲哀を強調することのほうが避けられるべきことであった。女子工員の一人が病弱を理由に帰省するのだが、それは本人の口から「帰りたい」と言われるのではなく、本人はむしろ自分を帰さないでくれとまで懇願する。彼女を帰省させるのは寮母及び工場の管理職員である。現代の眼からすれば、彼女達の献身振りは却って奇異でありさえする。戦争という特殊な状況における一種の集団的躁状態と見る向きもあるが、ある意味では、現代日本人が忘れているかもしれない「他を尊重する心」を題字の如く美しく語っている、という見方もある。ラストシーンで、郷里の親の訃報に涙しつつレンズ調整に精を出す渡辺ツルの姿は痛々しくもあるが、他のために我が身を粉にする意味を考えさせる。今作品では、それはあくまで「お国のために」であるが、「何故そこまでして」と問う以前に、謙譲の美・献身の徳を再確認できる作品ともいえる。
女工たちが工場で敵国アメリカと戦う兵器生産のために熱心に働いている場面に敵国アメリカの作曲家スーザの行進曲を使うなど、黒澤らしい反骨精神も垣間見ることができる。この件に関し、黒澤はかつて自分の作品の描写に「米英的でけしからん」と何度もケチを付けた検閲官が、アメリカの行進曲を使ったのにもかかわらず何の文句もいわなかったことを皮肉っぽく『蝦蟇の油』(自伝)の中で述懐している。(Wikiより)