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とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

41 罪過の火花

2015-08-08 23:26:25 | 日記


 貴女は姫神様・・・? 私は別人のようになって現れた姿を見て、思わずそう言いました。

 「何だか一段と若々しくなられたような・・・」

 「そうですか。私は少しも変わっていないと思いますが・・・」

 「いや、私の錯覚ではありません。確かに少し若くなられました。しかも透き通るようなお姿です」

 「透き通る ? ああ、分かりました。貴方たちに私の罪障を述べたからです。しかも、私たちの家まで出かけていただいた。お花を供えていただいてありがとうございます。そのため夫と娘の霊が喜びのあまり私に乗り移ったからです。今、とても幸せです。家族のぬくもりを感じています。これからは個神としてではなく、合体神として仕事をすることになります」

 「合体神 ? ということはあの家の霊がすべていなくなったという・・・」

 「いえ、あそこにはあそこでちゃんと暮らします。分霊が宿ったのです。・・・ですから私は貴方たちにお願いがあります。私には貴方たちが必要です。私と一緒に御霊屋の仕事をしていただきたいのです」

 「御霊屋の仕事のお手伝い、・・・ですか ?」

 「そうです。ここの森に回された樹木の霊のお清めの祭礼のお手伝いです。私は貴方たちに訪ねていただいてから、大きな悟りを開きました。今まで苦行をして大願成就まで導いてきました。しかし、苦行という手段は樹木にとって過酷でした。私はそれを改めたいのです。御霊屋の祭壇で一心に祈る。限りない回数となりますが、その方が樹木にとって受け入れやすいと思いました」

 「祈りの儀式で私たちは何をすれば・・・」

 「香草や供花の準備、清掃などです」

 「出来るかどうか分かりませんが、ぜひやらせていただきたいと思います。花りんも同じ気持ちだと思います。しかし、私は、私自身の力では霊として動けません。花りんの力を借りなくては」

 「ああ、そうでした。分かりました。では、すぐに儀式をして単体の霊として活動できるようになっていただきます」




 「よろしいでしょうか。これから目を閉じて、一心に祈ってください。私も祈ります。新樹の貴方は、今の雑念、過去の罪障をすべて心の内から外に出すことをイメージしてください。成功すれば、貴方の身内から火花が迸り出ることでしょう。それが、すべて野の花となります。・・・ご覧になったと思いますが、御霊屋の周りの花畑はこの森の樹々の祈りの火花が花となったものです」

 「一心に、一心に・・・」

 「そうです。そうです。・・・ああ、火花がたくさん出てきました」

 「一心に、一心に・・・」

 「そうです。そうです。・・・おおっ、花がたくさん咲いてきました。成功です。成功です。この儀式が終わる頃には、貴方は単体の霊として動き出します」

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