とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

25 私が死んだ訳 2

2015-05-08 17:31:08 | 日記


 私は、お金と言われ、ぐらぐらっとしたのです。私に理性というものがもともとあったのか、なかったのか。いや、そんなことではなく、素直にぐっときたのです。ヤクソクしてくれたらいくらでも貸せてあげる。その人は言いました。相当酔っ払っている感じでした。

 「約束・・・?」

「そう、ヤクソクよ」

 「どういう ?」

 「今は言わない」

 「わからないことを約束できない」

 「分からなくても、約束はできるわ」

 「そんな・・・」

 「ははっ、怖いんだ」

 「私を試している・・・」

 「そうかも」

 彼女は、通りかかったタクシーを呼び止めました。そして、私の手を引っ張って乗せました。北町の山根アパート。そう運転手に告げました。まもなくタクシーがアパートに着きました。また、手を引っ張って階段を上がりました。ここが私の部屋。そう言って、私を中に押し込みました。卓袱台の前に座ると、また酒が出てきました。

 「お茶がよかったかしら」

 「もう、止めなさい。これ以上飲んだら・・・」

 「ははっ、死ぬかもね」

 薄笑いを浮かべて私を見つめました。

 「約束って、・・・どういう・・・」

 「だから言えない」

 彼女は、コップの酒を一口飲んで立ち上がり、隣の部屋に入りました。しばらくすると紙袋を持って出てきました。いくら欲しいの ? 私はじっとその包を見つめていました。

 「いくらでも欲しい・・・。そんな顔をしている」

 彼女は、どさっと袋を私の前に投げました。

 「500万。・・・足らないの ?」

「・・・」

 「足らなかったら、また来てちょうだい」

 「どうして私に・・・」

 「直感。顔に書いてある」

 「・・・」

 「あのね。・・・ははっ。私は天使になりたいの」

 「どういうこと ?」

 「天使にしてくれる ?」

 彼女は、急に真顔になりました。

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