とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

聖地に神殿を

2013-10-02 05:00:54 | 日記
聖地に神殿を




「神殿奉献」アンブロージョ・ロレンツエティ(1285~1348)


この作品は、イタリア・ルネサンスへの先鞭を付けた偉大な芸術家ジオットから強い影響を受けていると言われている。作者アンブロージョ・ロレンツエティは優れた文学者・哲学者でもあった。神殿奉献。何とすばらしいタイトルではないか。


 新阿国座の事務方数名が交渉のために出雲に来ました。その中に三朗もいました。それまでにご縁市場のそれぞれの店や部署の代表者会が開かれて協議されました。その結果、紆余曲折があったもののすべての経営権を委譲してもいいという結論に到達していました。市側も数多の遣り取りの結果、元小学校の土地建物、関連施設を売却する許可を劇団側に出しました。そういう動きを受けて最終の詰めに三朗たちはやってきたのです。
 こういう大きな規模の取り引きが成立した鍵は地域振興という目的があったからです。里見オーナーは奇跡だと述べたそうです。オーナーの資本力がものを言ったのは勿論、京都と出雲をご縁の力で結び付けようという発想が功を奏しました。物やお金だけではなく文化的、政治的な側面でも大きな流れが生じることになりました。あらゆる面での波及効果も期待されていました。・・・出雲のホテルから三朗が電話してきました。


 お義父さん、いよいよ三者の代表者が最終協議に入ります。我々はそのための準備協議に来ています。

 予想さえしていなかったことが旨く実現しそうだな。・・・体、大丈夫なのか。

 ありがとうございます。もう、病気している暇はありません。

 里見さんの力を改めて実感したよ。

 いや、ほんとにすごい方です。強大な守護霊がついておられるような・・・。

 それは、あの、春子さんでは・・・。

 そうかもしれないです。・・・いや、もっと大きな、て言うか、崇高な守護霊だと思います。

 ま、それはさておき、具体的にあのご縁市場の関係者はどういう処遇になるんだ。

 実質的にはあまり変わらないかもしれません。劇団から幹部が派遣されるということと、ボランティアも含めた従業員がすべて雇員になり、手当が支給されます。

 じゃ、古賀所長は解雇・・・。

 いや、そうではありません。そのままです。ただ、経営関係の顧問がつくことになります。

 では、劇団は・・・。

 これは大きな改革があるはずです。いろいろなケースが考えられますが、鼓笛がごっそり新阿国座の下部組織となり、スタッフは社員ということになると思います。勿論キャストもすべてです。ですから公演の内容には本部の劇団から指導が入ることになります。キャストの交流が自由に行われることになります。これが演じる側からすると大きな励みになると思います。関連して、地方公演の範囲が関東地区にも広がると思います。

 全国区になる訳だ。

 いずれほぼ全国をカバーすることになります。

 彩湖の会の維持はどうなるんだ。

 これも原則的には今まで通りです。地元の農業者の協力が必須です。全国的な劇団のひのき舞台に立つ可能性が増すので希望者がぐんと増えると思います。

 絵画とか陶芸もあるんだけど・・・。

 演劇主体ということではなく、文化全体をカバーしていく方針ですからそういう分野の全国的なエキスパートが指導のために派遣されるとになります。いずれ造形分野が独立することになると思います。

 里見さんはすごいねえ。

 そうです。オーナーは聖地に出雲大社とは違う新しい神殿を作りたいと仰っています。

 神殿。

 そうです。新阿国座のメイン劇場です。

 出雲に・・・。

 そういう構想です。

 いつ・・・。

 ご高齢ですから近い将来だと思います。

 どこに・・・。

 出雲の中心地です。

 具体的には・・・。

 それはご自身の胸の中に・・・。

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