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片頭痛に対する中国式ツボの鍼治療はツボを外した鍼治療と効果は同じ

2013年10月02日 | 神経
中国式ツボは本当に片頭痛に効果があるのかを調べる無作為割り付け臨床研究が報告されているのでご紹介します。

Acupuncture for patients with migraine: a randomized controlled trial.
JAMA. 2005 ;293:2118.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★☆☆)

ガイドラインに沿って片頭痛と診断された平均年齢43±11歳の302人が、12週間にわたり中国式のツボに鍼を打つ鍼治療群、ツボを外して12週間鍼治療をする群、研究と治療の待機をしていると伝えて、12週間鍼治療を行わない群にランダムに割り付けられ、12週間後まで頭痛症状に関する日記をつけてもらい、12週間、1週間ごとの症状のあった日数が調査されました。鍼治療は約10年鍼治療の研修をうけた専門家によって行われました。

ツボを外して12週間鍼治療をする群の患者には「ツボを外して治療をするが、効果があると認められた治療である」と伝えました。

治療待機群は研究開始13週~24週まで中国式のツボに鍼を打つ鍼治療が行われ、3群で24週後に同様の比較がなされました。

結果は、待機群(白い棒グラフ)に比較して鍼治療群の効果は認められたのですが、中国式のツボに鍼を打つ鍼治療群(濃いグレーの棒グラフ)とツボを外した鍼治療(薄いグレーの棒グラフ)の効果は同じでした。

結論は、鍼治療は片頭痛に効果があるが、それは中国式のツボ(経穴)に効果があるわけではなく、鍼の何らかの作用であろう、ということでした。

私が最近、鍼治療の臨床研究をご紹介しているのは、最近発刊された「代替医療解剖」という本を読んで、たいへん感銘を受けたからです。

代替医療解剖 (新潮文庫)

この本はお薦めです。

特に以下の文節が、非常に的確かつ科学的で素晴らしかったので、ご紹介いたします。
「針治療師は、ランダム化プラセボ対照比較試験のなかには鍼の有効性を示しているものがあるのだから、そういう結論を無視してよいはずがないと言う。もちろん、そういう根拠は無視されるものではないが、反対の結果を示す根拠と重みを比較して、裁判で陪審が行うように、どちらの結果がより説得的かを判断しなければならない。そこで両方の根拠の重みを比べてみよう、鍼は、合理的なあらゆる疑問を超えて広範な病気に効くのだろうか?答えは「ノー」である。鍼は、合理的なあらゆる疑問を超えて、痛みや吐き気に効くのだろうか?答えはやはり「ノー」である。

鍼治療師は、鍼はさまざまな代替医療と同じく、一人ひとりの患者に合わせた複雑な治療なので、臨床試験のように大規模な検証にはなじまないと言う。しかし、実際には、患者一人ひとりの特徴や状況の複雑さは、臨床試験のデザインに組み込むことができるのである。現に、既に組み込まれていることが多い。通常医療のほとんどは、鍼治療と同様、一人ひとりの患者に合わせた複雑な治療過程であるばかりか、臨床治療によって進歩する。たとえば、医師は患者に対して、病歴、年齢、全般的な健康状態、最近起こった食事習慣の変化や生活習慣の変化などを尋ねるのが普通だ。

鍼治療師の多くは、鍼の基礎にある哲学は通常科学とは相容れないので、臨床試験で鍼の有効性を検証するのは不適切だと言う。しかしこの非難は的外れだろう。なぜなら、臨床試験は哲学とは関係がないからだ。臨床試験で試されるのは、その治療が効くかどうかだけなのである。

鍼治療師は、代替医療の効果はきわめてデリケートなので、臨床試験にはなじまないと言う。しかし、もしも鍼の効果が検証できないほどデリケートなら、それは行うに値する治療なのだろうか?現代の臨床試験は、どんな治療法の有効性も評価できるほど高度に洗練され、状況に柔軟に対応できるので、むしろデリケートな効果を検証するのに適している。

最後に、鍼治療師のなかにはこう論じる人たちがいる。なるほど本物の鍼とも偽鍼と同程度の成績しか出せないかもしれないが、偽鍼が患者に医療効果を及ぼすならそれでよいではないか、と。しかし、鍼を浅く打ったり、経穴をはずして打ったりしても、経絡になんらの影響が及ぶとしたらどうだろう?だが、もしもそんな影響が現実にあるなら、鍼の哲学そのものが崩壊する。なぜならその場合、どの位置にどんな深さで鍼を打っても治療効果があることになるからである。」
(以上引用)

その一方で、私のレビューにコメントを下さった方の、コメントもご紹介いたします。
臨床試験は哲学と関係ありますよ。臨床試験を支えている近代自然科学は、要素還元主義や機械論的生命観などの哲学的思想を土台にして成り立っているからです。詳しくは、元東大科学史科学哲学教授の村上陽一郎氏の、科学哲学に関する著作を読んで見られることをお勧めします。なお、本書については、本屋で少し立ち読みしてみましたが、代替医療の危険性をデフォルメして採り上げる一方で、近代西洋医学の危険性や害悪を意図的に無視または軽視するという、およそ科学的(客観的)とは言えない研究態度が散見されました。両極端に偏らない、より客観的で真に科学的な研究が待たれるところです。

追加ですが、科学的根拠の有無を決定するEBMが主観性の影響を受けない完全に客観的な判断基準であるというのは、誤解です(より客観的な評価をめざそうと努力しているということは言えますが)。EBMについてちゃんと勉強した人なら分かっていることですが、EBM(科学的根拠にもとづく医療)の様々な判断基準は、そもそも主観性に大きく左右される要素を内包しています。例えば、何パーセント以下の確率で起きることが起きた時に「統計学的に有意な事象である」かと判断するかも、主観的に決められます。もしデータ数値そのものが客観的なものだったと仮定しても(まあ、完全に客観的なデータ数値などというものはこの世には存在しませんが)その数値をどう解釈するかということは主観によって判断されるからです。」
(以上引用)

この方は、本書を全部読んでいないからそうコメントするのだと思います。
「何パーセント以下の確率で起きることが起きた時に「統計学的に有意な事象である」かと判断するかも、主観的に決められます」という部分は統計学的p値が5%とか1%とか、すなわち20回に1回しか結果と異なることはないとか、100回に1回しか結果と異なることはないという事を指していて、リサーチマインドをお持ちの方と思われますが、20回に1回とか100回に1回などとあらかじめ結果判断のルールを決めておくのは非常に科学的であり、P<0.05、P<0.01といのは「統計学的に有意な事象である」というより、医学論文の読者は「この結果と異なることは20回に1回しかか起きないのだなぁ」とか「この結果と異なることは100回に1回しか起きないのだなぁ」と理解しながら、読んでいると思います。

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