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医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

ビタミン摂取は肺ガンを予防しない

2005年10月28日 | 
今回もビタミン摂取に関する最新の話題です。International J of Cancer. 2005(Epub ahead of print) (インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)からの報告です。

この報告もメタアナリシスといって過去の多くの論文をまとめたものです。北米とヨーロッパで行われた8つの調査がまとめられました。合計430,281人のビタミンA、ビタミンC、ビタミンEおよび葉酸の摂取量が6年から16年調査されました。

結果ですが、年齢を補正しただけの解析ではビタミンの摂取は肺ガンの発症を抑制していましたが、喫煙の有無でも補正すると肺ガンの発症を抑制してはいませんでした。

補正の違いでどうしてこういう逆転が起きたかというと、喫煙をしていない人は元々健康に気を付けていてビタミンを多く摂っていたからです。つまり、ビタミンを多く摂ろうと心がけ実際に多く摂っている人は喫煙をしていないから、ビタミンが肺ガンを予防していたように見えたのです。話はそれますが、この補正という過程は疫学調査ではとても重要な処理です。このような補正をいかに施すかというのが研究者の手腕であり、正しい補正がなされていないために反対の結論を導いてしまう事を避けなければなりません。

話を戻しますが、この報告では、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEおよび葉酸の摂取は肺ガンを全く予防していないと結論づけています。

ビタミンには、例えば発熱などの消耗性疾患で失ったビタミンを補ったり、貧血に葉酸を内服したりという場合には短期的な効果はあるのでしょうが、長期的な有用性はなかなか見あたりません。

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適度な運動は乳ガンの予後を改善する

2005年05月28日 | 
3日前、5月25日付のアメリカ医師会雑誌JAMAに発表された論文です。(JAMA. 2005;293:2479) (インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

対象は米国の看護師2,987人。1984年から98年に他の臓器への転移がない乳がんと診断された人で、平均8年間追跡しました。がん治療終了後の余暇の運動量を尋ね、週に3Mets-hour(3Mets-hourは普通の速さ(3.2-4.6Km/時)で1時間歩く運動量に相当する)のほとんど運動しない人に比べ、最も死亡の危険が少なかったのが「週に9Mets-hour以上15Mets-hour未満運動をする」人(つまり週に3時間から5時間歩く運動量)で50%減でした。週に1時間から3時間歩く運動量では20%減で、週に5時間以上歩く運動量では40%減と頭打ちでした。そしてこの結果は、太っていてもやせていても傾向は同じでした。そして週に3時間歩くのに相当する運動量の人は1時間未満の人に較べて10年間の死亡率が6%減少していました。

運動のがん予防効果は以前から指摘されていましたが、がん診断後の運動のメリットを明確に示した研究はこれが初めてです。一般的な乳がんは女性ホルモンで悪化するのですが、運動すると体内を循環する女性ホルモンの量が減ると言われており、論文ではこのメカニズムが関係しているのではないかと説明しています。
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