大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語2・068『オリビアとお風呂に入る』

2024-08-23 14:55:25 | カントリーロード
くもやかし物語 2
068『オリビアとお風呂に入る』 




「……ということは、今のわたしたちはお酒のとっくりということね(^▽^)」

 お風呂のお湯が沸くのを待ちながら燗風呂の説明をしてあげると、子どものようにおもしろがるオリビア。燗風呂は元々はお酒をお燗するものだからね。
 
 お風呂の湯は「わらわの風呂だからわらわが沸かす」と御息所がいっしゅんで水をお湯にした。日本に居たころから好きな時にお風呂に入るため、自然に覚えた魔法らしい。

 で、お風呂が沸くと、三人でいっせいにお風呂に入る。

 女同士だけど、すっ裸は恥ずかしがるかと思ったんだけど、オリビアはこだわりはないようで、わたしより先にスッポンポンになる。

「ああ、木の香りがとてもいいですね。なんだか、森林浴とお風呂を同時にやってるみたいですぅ」

「プリンスエドワード島は木のお風呂だったの?」

「ううん、FRPというのかしら、プラスチックの一種だと思うわ。学校の『福の湯』もいいけれど、こういうお風呂も素敵よ。日本はいろんなお風呂があって羨ましいわ。ね、御息所さん……あら?」

 御息所は、わたしの肩に乗っかり首に寄りかかって居眠っている。

「まあ、かわいい。恋人たちの小道で出くわす妖精みたい」

 恋人たちの小道で思い出した!

「プリンスエドワード島って『赤毛のアン』の島じゃない?」

「え、ええそうよ。そうか、やくもは『赤毛のアン』を知ってる人なんだ!」

「うん、愛読書だったからね(^_^;)」

 他に『怪談奇談』とか『ゲゲゲの鬼太郎』とかあるんだけど、それは言わない。

「ということは孤児院から……」

 言いかけて失礼だと思って口をつぐんでしまう。

「アハハ、アン・シャーリーじゃないわ。でも……ちょっと似てるかなあ」

「どういうこと?」

 不躾だとは思いながら、つい身を乗り出してしまう。

「元々はトロント。でも、賑やかでごちゃごちゃしてるんで、お父さまが『大学に行くまでは静かで環境のいいところに住むべきだ』とおっしゃって、12歳の秋からプリンスエドワード島で暮らしているの」

「ひとりで?」

「ううん、家庭教師を兼ねたメイドさんがいっしょに、他にも交代で、島には、わたしの家の他にも会社の保養所があって。あ、もともと保養所があるんで、こっちの方がついでなのかもしれないわ」

「オリビアのお家って、会社を経営してるの?」

「あ、うん……」

 あんまり家の事には触れない方がいいみたい。

「あ、そんなことない」

「え?」

「あ……」

「オリビアって、人の心が読めたり……?」

「え、あ、いや、そ、それはね(#'∀'#)」

 あ、地雷を踏んでしまった?



☆彡主な登場人物 
  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの  ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女
 
 

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REオフステージ(惣堀高校演劇部)129・福引・2

2024-08-23 07:00:58 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
129・福引・2 





 校門を出て、ちょっと歩いて左に曲がると商店街。

 谷町筋に向かって上り坂になっていて、そこを高校生らしく駆け足で上がっていく。

 タタタタタタタタタタ

 中学では野球部に居たのは知ってるよな。

 いちおうピッチャーやったんやけど、攻守換わってマウンドに上がる時は駆けていく。ベンチからの短い距離を歩こうが走ろうが大して変わりはないんやけど、ノタクラしていては勝てる気がせえへん。

 監督は嫌いやったけど『試合中は走れ!』というコンセプトは正しいと思う。

 レトロな商店街のテーマ曲が流れ、そこを曲がったら『ふれあい広場』という角に福引のコーナーがある。まずまずの人気で、すでに五人のオッチャンやオバチャンが並んでる。

 赤いハッピと鉢巻のオッチャンがニコニコと番をしている……と思ったら先輩でもあるハイス薬局のオッチャン。

「お、惣堀演劇部、四等はフライドチキンのビッグバレルやで!」

 高校生には食い気のフライドチキンが有難いやろという気持ちなんやろうけど、こっちは一等狙いや。

「一等狙いです!」

 高らかに宣言する。

「欲かいたら、早死にするでえ」

「ええがなええがな、志は高い方がええ」

「アメチャンあげよ」

「ありがとう、いただきます」

「惚れ薬入りやでえ」

「え!?」

「ほら、いまドキっとしたやろ」

「てんごいいな(^▽^)/」

 先客のオバチャンたちがいじってくる。カラカラと福引のガラガラが回る。次の次がオレの番や、オレも口の中でアメチャン回して予行演習。

 ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ……。

「どんだけ回すねんな」

「いや、念を籠めんとなあ……えい!」

「おめでとう、四等ビッグバレル!」

「え、これが賞品?」

 アメチャンのオバチャンが四等を引き当てた。でも、渡されたバレルは空っぽ。

「これ持って、『肉よし』(商店街の精肉屋)に行ったら一杯入れてくれるさかい」

 なるほど、食品やから揚げたての新鮮さを大事にしてる……というか、思いっきり地元商店街の商品やないかい!……五等フライパン……六等食用油……七等ティッシュペーパー……上がって三等は洗剤一年分……二等テーブルゲームセット……そして一等南河内温泉宿泊券……これや! でも、南河内? なんかショボイ。

「ショボイ思たらあかんで、近場やけど、一等は三本もあるねんでえ!」

 三本!?

 福引券は十回分ある。野球だって九回の裏までやらなければ結果は分からない。それが、もう一回多い十回分、可能性はあるかもな!

 カランカランカラン! 一等賞!

 いや、まだ早いって(n*´ω`*n)、まだガラガラ回してないし。

 え? なんちゅうこっちゃ、アメチャンくれたオバチャンが当てちまった!

 い、いや、まだ二本ある。勝負は勢いやからな! オバチャンにあやかって……エイ!

「七等ティッシュペーパー!」

 まあ、一等が出た直後やからな……ガラガラガラ……エイ!

「七等ティッシュペーパー!」

 くそ、つぎこそは!

 ガラガラガラ……エイ!

「七等ティッシュペーパー!」

 く、くそ、もう一回(;'∀')!

 こんな調子で九回連続のティッシュペーパー。


 いよいよ最後の一球。


 オレは、福引台の前で、九回の裏同点の試合を思った。攻守どっちや? ピッチャーでは苦杯をなめ続け、あげくに肩を痛めて引退の憂き目にあったので、バッターのフルスィングのモーションをとってからガラガラに向かう。

 期せずして「かっ飛ばせー、ソーォホリッ!」のコールが湧きおこる、オバチャンたち、意外に若い声!

 ツーストライク、スリーボール! あとはねえ! エーーーーーイ!!

「おめでとう! 二等、テーブルゲームセットオオオオオオオオオオオ!!」

 え……二等賞?

 しまったあ、オレはピッチャーやったんやから、とことんピッチャーで行くべきやったんや。ピッチャーが打撃で勝負してどーーすんねん!

 それでも地元の商店街。オレは薬局のオッチャンから恭しく賞品を授与される。

「おめでとさん、ほら、お仲間も応援に来てくれてたんやし。またがんばろ」

 え、お仲間……?

 え(''◇'')ゞ

 振り返ると、演劇部の三人が残念な笑顔で並んでた……。


☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  
  • 沢村留美        千歳の姉
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生 甲府の旧家にルーツがある
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生
  • シンディ―       サンフランシスコの高校生
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)
 
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