やくもあやかし物語 2
「……ということは、今のわたしたちはお酒のとっくりということね(^▽^)」
お風呂のお湯が沸くのを待ちながら燗風呂の説明をしてあげると、子どものようにおもしろがるオリビア。燗風呂は元々はお酒をお燗するものだからね。
お風呂の湯は「わらわの風呂だからわらわが沸かす」と御息所がいっしゅんで水をお湯にした。日本に居たころから好きな時にお風呂に入るため、自然に覚えた魔法らしい。
で、お風呂が沸くと、三人でいっせいにお風呂に入る。
女同士だけど、すっ裸は恥ずかしがるかと思ったんだけど、オリビアはこだわりはないようで、わたしより先にスッポンポンになる。
「ああ、木の香りがとてもいいですね。なんだか、森林浴とお風呂を同時にやってるみたいですぅ」
「プリンスエドワード島は木のお風呂だったの?」
「ううん、FRPというのかしら、プラスチックの一種だと思うわ。学校の『福の湯』もいいけれど、こういうお風呂も素敵よ。日本はいろんなお風呂があって羨ましいわ。ね、御息所さん……あら?」
御息所は、わたしの肩に乗っかり首に寄りかかって居眠っている。
「まあ、かわいい。恋人たちの小道で出くわす妖精みたい」
恋人たちの小道で思い出した!
「プリンスエドワード島って『赤毛のアン』の島じゃない?」
「え、ええそうよ。そうか、やくもは『赤毛のアン』を知ってる人なんだ!」
「うん、愛読書だったからね(^_^;)」
他に『怪談奇談』とか『ゲゲゲの鬼太郎』とかあるんだけど、それは言わない。
「ということは孤児院から……」
言いかけて失礼だと思って口をつぐんでしまう。
「アハハ、アン・シャーリーじゃないわ。でも……ちょっと似てるかなあ」
「どういうこと?」
不躾だとは思いながら、つい身を乗り出してしまう。
「元々はトロント。でも、賑やかでごちゃごちゃしてるんで、お父さまが『大学に行くまでは静かで環境のいいところに住むべきだ』とおっしゃって、12歳の秋からプリンスエドワード島で暮らしているの」
「ひとりで?」
「ううん、家庭教師を兼ねたメイドさんがいっしょに、他にも交代で、島には、わたしの家の他にも会社の保養所があって。あ、もともと保養所があるんで、こっちの方がついでなのかもしれないわ」
「オリビアのお家って、会社を経営してるの?」
「あ、うん……」
あんまり家の事には触れない方がいいみたい。
「あ、そんなことない」
「え?」
「あ……」
「オリビアって、人の心が読めたり……?」
「え、あ、いや、そ、それはね(#'∀'#)」
あ、地雷を踏んでしまった?
☆彡主な登場人物
- やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
- ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
- ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
- メグ・キャリバーン 教頭先生
- カーナボン卿 校長先生
- 酒井 詩 コトハ 聴講生
- 同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
- 先生たち マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
- あやかしたち デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女