大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語2・066『お風呂に入ろう!』

2024-08-15 14:12:50 | カントリーロード
くもやかし物語 2
066『お風呂に入ろう!』 



 せっかくだからお風呂に入ろうということになった。

『いくわよぉ……一の二の三(ヒのフのミ)!』

 メキメキメキ!

 御息所がデラシネからもらった手袋(036『交換手さんの提案』)を振ると、飯盒ほどの大きさだった燗風呂が立派なヒノキ造りのお風呂になった。

 おお(^〇^)(^◇^)!

『うん、今日は調子がいい。おまけよ!』

 ザザザザ!

 草原の草がひしめくように寄り集まって、脱衣所と囲いができる。

「あらあ、脱衣カゴにバスタオルもあるじゃありませんか(^▽^)」

『一通りはそろっておるぞよ』

「ほんとだ、洗い場にシャンプーとボディーソープもあるよ、御息所って、ここまでできたんだぁ!」

『うん、温泉の素とかもあるからなぁ……箱根の湯なんかどうだぁ?』

「すてき」

『ふふふ、看板も付けようか……それ!』

 囲いの上に『御息所温泉』の看板、入り口には『ゆ』のノレンまで付いた。

「さあ、あとはお水を入れて、お湯を沸かすだけですねえ」

「じゃあ、お湯を頼むよ、御息所」

『よし!…………それ!……えい!……やぁ!…………(;'∀')』

「どうしたぁ?」

『ま、魔力が切れた……(-_-;)』

「もう、肝心のお湯が無かったらなんにもならないじゃないよ!」

『し、仕方がないだろ、無いものは無いんだから(''◇'')』

「ここまでそろったのに、もったいないわ。近くに川とか池とかは無いのかしら?」

「そうだ、樺太の時みたいに空を飛んで探してみてよ」

『え、わらわがか!?』

「いくよぉ」

『ちょ、待っ……!!?』

 ビュン

 手袋に突っ込んで、空高く放り上げてやる。

 ウワアアアアアアアア!

 さすがデラシネの手袋、あっという間に空高く上がってしまったよ。



☆彡主な登場人物 
  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの  ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女
 
 

 


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REオフステージ(惣堀高校演劇部)121・大お祖母ちゃん・1

2024-08-15 08:24:54 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
121・大お祖母ちゃん・1 





 大お祖母ちゃんは十余年のブランクを感じさせない元気さだ。

 こんな夜中に帰ってくるのだから、こなした仕事は片手では足りないかもしれない。

「両手の指ほど難儀な人たちに会ってきたよ……」

 見透かしたように大お祖母ちゃん。きちんと挨拶しようと思っていたのに吸った息を言葉に出来ずに呼吸が止まってしまった。

「どうも、顔が怖いままのようだね。でも須磨も子供じゃない、深呼吸してごらん」

 素直に深呼吸一つ。

 ゆっくり息を吐きだすと、大お祖母ちゃんも微かに笑顔になった。

「制服でやって来たということは、須磨なりに気持ちがあってのことなんだね……校章の横にバッジが付いていた痕があるけど、なんのバッジを付けていたの?」

 言われてハッとした。

 二年生の秋から最初の三年の夏まで生徒会の副会長をやっていたんだった。

 あのころは卒業したら甲府の田舎に帰ってもいいと思っていた。お母さんやお祖母ちゃんが投げ出した跡継ぎをやってもいいと思っていたんだ。人の上に立つ役目を担うわけだから、生徒会の仕事で慣れておこうと思ったんだ。

 部室の問題で瀬戸内美晴に初めて会って、ちょっとデジャブだった。

「以前、生徒会の副会長をやっていました。二期務めたので痕が残って……」

 そこまで言ってハッとした。

 風呂上がりに、瀬奈さんが新品の制服を出してくれて着替えたはずだ。バッジの痕が残っているはずがない……しかし、手を伸ばしてみると、微かにバッジを付けた痕が感じられる。

 思い違いかと混乱したが、制服の生地の感触は新品のそれだ。

「たしかに、学生でいるうちはこちらのことは考えなくていいと言ったけどね。まさか十年も高校生でいるとはね」

 いや、まだ8年なんだけど。

「その……」

 もっと積極的な意味が制服にはあるのだが、大お祖母ちゃんを前にすると言えなかった。

 大お祖母ちゃんの前では、そんな制服一つのツッパリなど、ひどく子どもじみた意地にしか感じられないだろう。

 有り体に言えば位負けしている。それほど大お祖母ちゃんから受ける圧は凄かった。血のつながりを自覚していなければ逃げ出しているかもしれない……。

 大広間でもない大お祖母ちゃんの部屋が学校の体育館ほどの広さに感じるわたしだった。


☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  
  • 沢村留美        千歳の姉
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生 甲府の旧家にルーツがある
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生
  • シンディ―       サンフランシスコの高校生
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)
 
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