巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
遠くへ出かけるならあの人だ。
思ったとたんに声がした。
「いやあ、修学旅行以来だねぇ」
「わっ!」
ビックリして振り返ると、ニコニコしながら座っているのは、あの安倍晴天だ。
「あはは、以心伝心というやつだね。窓も開いてたし(^▽^)」
うちは特急魔法少女のお祖母ちゃんの家だから、凄腕の陰陽師と言えども勝手に入ってくることはできない。うかつに開けていた窓からさっさと入ってきたんだ……それにしても早すぎる。
「だから以心伝心。二人の心が呼び合えば5Gのルーターみたいなもんさ」
「じゃあ、さっそく……」
と、思ったら晴天は久留米絣。この人の久留米絣は呪物で、相手をなんでも従わせられる『言いくるめ絣』だ。
「そういうグッチだって……」
「え?」
驚いた。自分もいつのまにか『言いくるめ絣』のワンピを着ている。
「いやはや、腕を上げたねぇ。反射的に対抗魔法が使えるんだ」
「え、ああ……」
「それで赤いリボンを付けたら魔女みたいだよ」
ポポ
軽い刺激がしたと思ったら、頭に赤のリボンが載って、柱に立てかけて箒が現れた。
「あたしは魔女じゃないんです!」
言ったとたんにリボンと箒は消えてしまった。
「ほほう……で、特急魔法少女殿……の孫殿の御用は何かなぁ?」
「ええと、友だちと高松塚古墳を見に行きたいんだけど、鉄道とかで行くと大変でしょ。泊まりにもなっちゃうし」
「ほう、高松塚古墳……」
「それでね、万博の時(妖退治 115~120)みたいに送り迎えしてもらうと嬉しいんだけど」
「なんだ、そんなことか」
つまらなさそうに座ったまま後ろ手を突く晴天。なんだか、いっぺんに十歳くらい老けたみたいにオッサンぽくなる。
「なによぉ」
「グッチは、もうほとんど一人前なんだから、そんなの自分でやりなよ」
「ええ?」
「人間の五人や六人、念じるだけで運べるよ」
「え、そうなの( ゚Д゚)!?」
「うん。で、いっしょに行くのはMITAKAの諸君かなあ?」
「ああ、今度は一人……」
みんなで行きたいと思わないでは無かったけど、魔法で飛鳥まで飛んだら正体バレてしまうしね、あり得ない。
「で、相手は?」
「あ……」
ちょっと躊躇ったけど、晴天なら構わないだろう。
「ナースチャ、アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ」
「ほう、ロシア皇帝ニコライ二世第四皇女かぁ……」
キラリ ……☆
あ、晴天の瞳が輝かせてしまった(^_^;)。
「そうか、気が向いたらボクも行ってるかもしれない。魔法のいい練習になるかもしれないし……じゃあね(^▽^)」
いっしゅん扇風機が強で回ったような風がすると、窓枠がガタピシいって陰陽師の姿は掻き消えた。
☆彡 主な登場人物
- 時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
- 時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
- 滝川 志忠屋のマスター
- ペコさん 志忠屋のバイト
- 猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
- 宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
- 辻本 たみ子 2年3組 副委員長
- 高峰 秀夫 2年3組 委員長
- 吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
- 横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
- 加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
- ナースチャ アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
- ユリア ナースチャを狙う魔法少女
- 安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
- 藤田 勲 2年学年主任
- 先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
- 須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
- 御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
- 早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
- 時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
- 妖・魔物 アキラ 戦艦石見(アリヨール)
- その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
- 灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人