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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

仁義なき撤退 池下のこと

2008-08-22 17:49:47 | よしなしごと
 名古屋の千種区に池下という街があります。
 私が長年親しんだ今池という街から地下鉄で一駅、東にあたる街です。
 この街は、ここ何年来、都市開発が進み、私の根城、今池を脅かす存在でした。
 私が今池の街興しに取り組んだ折りも、この池下がライバルともいえました。
 しかし、池下の没落を望んだわけではありません。
 池下が没落しても今池が隆盛する保証などどこにもなく、第一、この二つの街のコンセプトは全く違ったものだからです。

 

 しかし、今、この池下の街に異変が起こりつつあります。
 しかもそれは、まさに社会保険庁ずさんなありようと関連するものなのです。

 池下の街の存在感は、千種区役所の所在とその周りに出来たマンション群、それらをカバーするためのショッピングモールの存在にあります。
 そうしたスマートな町並みは、泥臭さを残した今池を上回るだろうと思います。

 

 しかし、池下にはもうひとつの集客装置があったのです。
 それが社会保険庁が展開した厚生年金会館でした。
 これらの類似の施設は全国に散在していますが、地域ごとのその構成は幾分異なるようです。池下の場合は、宿泊施設、会議場、結婚式場、それに1,660席の中型ホールから構成されています。
 とくにこのホールは、中型ホールの少ない名古屋にあっては、クラシックにはやや音響面で合わなかったようですが、健在な頃の美空ひばりを始めとする各エンターティメントの公演を始め、ジャズやシャンソンその他各種イベントのメッカとして、結構賑わっていました。

 

 ところがです、社保庁の天下りによる連中の経営感覚では、全国各地の同様の施設も含めて、この会館を維持できなかったのです。そこで彼らが選んだ方策は、この厚生年金会館全体の今秋の閉鎖でした。
 おそらくここで挙げられたはずの収益は、彼ら天下りの餌食となって霧散したのでしょう。
 社保庁の官僚どもが、一度退職金を手にしながら、ここへの勤務で再び不労所得を手にし、再度退職金を取るという詐欺まがいなことがなくなるのはいいことかもしれません。

    

 ただし、問題はこの商店街のほうです。
 厚生年金会館が、ヘタレ官僚の詐欺のような収入の場であったことはさておき、商店街はそこへの人の出入りを計算し、出資をしたり店の営業方針を定めてきたのでした。
 ところが、突然の閉鎖です。
 商店街にとっては青天の霹靂といった事態です。

 

 今更防衛策だの方針転換など出来ようはずがありません。
 確実に人の往来が減るという事実のみがのしかかってくるのです。
 この商店街のあちこちに張られている「なくさないで!」という張り紙は悲痛な叫びに聞こえます。

 

 近隣の商店街も人ごとではありません。
 池下へ来たついでに今池のなじみの店へ顔を出そうかという人や、覚王山を覗こうという人もいるはずです。

 どこかがこの施設を買い取って営業を再開してくれないでしょうか。
 さんざん稼いでいるトヨタが、メセナとしてこれを運用してはくれないでしょうか。
 「トヨタ」の看板が仰々しく掲げられるのも我慢します。

 ただでさえ商店街の維持運営が難しい時期ですが、私の第二の故郷の今池、その隣街の池下がこれに凹むことなく頑張ってくれたらいいと切に思っているのです。







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