イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

コレだけですよ

2010-01-20 21:47:17 | バラエティ番組

昨日の午後は出先での待ち時間に、推定52インチのTVで開会早々の国会中継を音声抜きでチラ見していましたが、とりあえず議員の皆さん、資料だか原稿だかカンペだか知らないけど、紙、持ち過ぎですよ。

特に閣僚席、鳩山由紀夫総理を筆頭に、媒体で話題のあの事件この案件ですっかりお馴染みになったアノ大臣も、いまだ顔と名前と省庁名が一致しないコノ大臣も、机の上に紙並べ過ぎ。あんだけ並べたら、隣席の人用の紙と、境目がわからなくなりませんか。あんなに山のように紙を消費しないと進行できない議会ってのもどうなんでしょう。清き一票で選ばれた、いずれ劣らぬ選良の皆さん、記憶力、咀嚼理解力は抜群でしょうに。

そう言えば昭和の昔、日曜日の朝の番組とシュレッダーのCM「電話の長いヤツと、資料持ち過ぎのヤツは仕事でけまへんな」と力説、タモリさんにもよくモノマネされていた、元祖・七三分けならぬ一九(いちきゅう)分けヘアの評論家先生、最近お見かけしませんが、お元気でしょうか。

焦点の“政治とカネ”問題については、今般、政権が攻守ところを代えても抜本的な改革はまず望み薄だと思います。先日もここで書いたように、追及する追及すると息巻いている現・野党自体が金権の温床だったのだし、そもそも、小沢一郎さんだろうが誰だろうが、代議士たちを選んだ日本の選挙民自体が“おカネ大好き”過ぎます。

政治にカネがかかるようになったのは、結局、人の心がカネで動くからです。アタマカズをまとめ多数派にならなければ事が進まない、多数決制の民主主義において、最も確実に多くの人心を掌握するためには、詰まるところおカネ以上強力なものはない。洋の外の民主主義国がどれだけ清廉かつ進歩的か、付き合いがないので知りませんが、日本人は本当におカネが好き、おカネで贖えるモノが大好きです。

日本津々浦々の選挙民がおカネにいっさい興味がなく、食う寝るところ住むところ以上の物欲を持たず、芸能人セレブの豪邸披露番組も消滅し、プロアスリートの破格年俸や高額賞金も一顧だにされず、ブランド品店オープンやジャンボ宝くじにも行列ができず、小学生が「○○くんち夏休みにディズニーランドだって、うらやましいなぁボクも連れてってよー」ではなく、「○○くんのお父さんホームレスに自分のコートをあげたんだって、うらやましいなぁパパもそんな人になってよー」と言うようになれば、“政治とカネ”問題はきれいさっぱり無くなるでしょう。政治は人心の鏡でしかなく、小沢一郎さんが、あるいは民主党が自民党が、単体で腐敗しているわけではない。選ぶ選挙民たちがカネ(及びカネを要するモノ)を望むから、自然とカネまみれになっただけなのです。

月曜(18日)夜は『お試しかっ!』を出会いがしら視聴。芸人女装大会Aniコレ、アイドルとの1対1マッチプレー形式になってからあまりおもしろくなくなってしまったのですが、何が驚いたって大沢あかねさんが、なんだかものすごく威圧的になっていたのにびっくりしました。人妻の色気というより、すでにおっかさんの迫力ですな。ちょっと前までは可愛いガラッパチ生意気キャラだったのにね。そのうち本当におっ母さんになったらどこまで上がるのか末恐ろしい。

取りようで挑発的とか蠢惑的と言えなくもないけど、前回も森下千里さんが金子貴俊さんに敗れたように、アグレッシヴにオスの力量を問うようなヴォリュームある色気を、日本人の男性は「綺麗」と受け止めませんね。あかねちゃん作戦ミス。

石川梨華さんも久しぶりに見ましたが普通にふっくらしたかな。安田美沙子さんは相手(前回立証済み、脚線美と肉感リップのAAA西島隆弘さん)が悪かったし、キャバクラ火災で焼け出されたみたいな毛布ルック?もどうだったんでしょう。もったいない。南明奈さんのツンデレ表現はなかなかうまみがありました。

この番組に限らず、女の子アイドルが大挙露出する絵を最近見かけると、10代の駆け出しの子でも、最近は“かわいい”を“演じる”ことにみんなまったくためらいがないし、演じの“基礎点”の向上が目覚ましいですね。アイドル黄金時代とも言われた1980年代前半の歌メインの女の子アイドルなんて、いまの子たちに比べると、(歌の能力は別にすると)こと“アイドルとしての立ち居”に関しては隙だらけで、ほとんどデクノボウみたいなもんでした。表現、表出のツール数が少ないし、ツールを増やし磨こうにも、お手本がなかったですから。

当時は女の子アイドルのそういう立ち居振る舞いの拙さや、受け身な巻き込まれ感、翻弄され感をも含めて愛玩したものです。昔よりよほど小顔で細っそり華奢でも、いまのアイドルはガンガン攻めている。「可愛くする」ことにも、「可愛く見られたい」と思う自分にも、微塵も照れがない。“ぶりっ子”なんて概念も、もはや成立しないのでしょうな。

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めぐるめぐる季節

2010-01-18 20:36:56 | ニュース

一度クチから出たものは引っ込めることはできません。鳩山由紀夫総理の、小沢一郎幹事長の政治資金問題について「党代表として幹事長を信じている」までは百歩譲って良しとしましょう。「どうぞ(検察と)存分に戦ってください」はまずいだろうに。小沢さんの金銭問題よりも、鳩山さんご自身のお母上からの“子ども手当”の一件よりも、はるかに民主党政権のイメージを悪くしたと思う。

いやしくも国権の最高機関たる国会で選出された、行政府の長である総理大臣が、外国じゃなく自国の司法府の検察を、“戦い”の相手として“敵視”するような語法を選択するっちゅうのは、よほどリテラシーが低いのか、いや理系と言えども東大卒の鳩山さんがそんなに直球のバカチンとは思えないので、やはり宇宙人なんでしょうな。ある意味で。一国の総理大臣という立場に、しっかり足腰が据わってなくて、どっか幽体離脱して成層圏の彼方から小沢さんもなんもかんも見下ろして「たたかってくださぁぁぁ~い(さぁいさぁいさぁい…)(←エコー)」と言ってるような感じがある。

大方の国民は、小沢さんの言わんこっちゃない金権体質以上に、鳩山さんのこういうふにゃらか体質にこそいちばんあきれたのではないでしょうか。

今回の小沢問題でいちばんの茶番は、「野党として徹底的に追及する、参考人招致する」か何か言ってる自民党が、いや、野党になったんだから当然言うでしょうし、言わなきゃしょうがないんでしょうけど、「政治とカネ」の話をし出したら、自分たちこそ“金権上等”の歴史をこってりまとって小沢さんを生んだ張本人集団だということ。小沢さんをなんぼ追及したって、ブーメラン投げて自分のとこに戻ってくるのを待ってるようなものです。「茶番とは」の教科書みたいな話。

あと、やりきれないのは逮捕された石川知裕議員の地元・北海道11区の選挙民でしょうね。ロレロレ会見の中川昭一さんに「いくら十勝が中川王国でも、かいていい恥と、かいちゃいけない恥がある」とNOを出したら、直後に後味悪く亡くなってしまったし、「若いし民主党だし、力のある小沢さんの子飼いなら地元の役に立ってくれそう」と選出した石川さんはと言えば、見事にこういうことになってしまった。

なんだか、2003年だかに、かつてのYKK(←なつかしい響き)のY・山崎拓さんが女性スキャンダルで落選、代わって民主党から選出された、何ちゃらいう元プロテニス選手が、今度は学歴詐称が露見して、「究明のためもう一度その(アメリカの)大学に行って卒業を証明する」とか息巻いて、結果ぜんぶ空振りで、赤っ恥の果てに辞職したというお粗末を思い出しました。あの時は補欠選挙が行なわれて、結局山崎さんが返り咲いたと記憶しますが、福岡2区の選挙民も憮然たる思いだったのではないでしょうか。地元選出の代議士が全国レベル、国際レベルで新聞ダネになるだけでもじゅうぶんこっ恥ずかしいのに、CHANGEを期待して選んだやつがまたまたダメだったっていうのは頭抱えます。

11区でもとりわけ石川議員の出身地・足寄(あしょろ)町は、かつてあの鈴木宗男議員をも輩出していますから、ここのところ新聞を見るたび「またウチんとこのセンセイかよ」と暗澹たる思いでしょうな。十勝地方は冬場はマイナス二ケタ気温の極寒かつカラッと晴れた晴天が続くのですが、足寄の上空はどよーん雲が立ちこめているかも。足寄に金権上等な人間を生みやすい土壌があるわけではない……と思いたいですが、なぜだ?なぜかさっきから松山千春さんのシルエットがちらちら脳裏をよぎるのは。

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私は飛ぶ 飛ぶの

2010-01-16 20:04:57 | ニュース

連日報道される日本航空=JALは最悪の惨状を呈していますな。ついこの間までは大学生の人気企業ランキング上位常連だったのに、いまや公的救済にすがる、上場廃止目前のカミクズ会社になりさがってしまったと。

マイレージをためていた人なんかは気が気じゃないようです。月河は2ヶ月に一度は東京出張していたサラリーマン時代を遠ざかって久しいのであんまり関係ありませんが、痩せても枯れても“ナショナル・エアー”だった同社が、国民の血税を原資に救済されなければならないのかと思うと、いろいろ複雑な思いにもかられます。

日本人の中にも、終生飛行機に乗るような出張や旅行をすることなく地元に住んで税金を払い続けて一生を終わる人もいるはずだし、一方では自分が移動しなくても、八百屋さんや魚屋さんで、航空便輸送で店頭に並んだ食材を買って食べたり、本や雑貨のお取り寄せしたりする機会はあるはず。健康保険や介護保険同様、“恩典に浴する人も浴しない人も支え合い”の精神で血税負担はある程度は受け入れざるを得ないか。

子供の頃、お子ちゃま向けの小学館の雑誌に世界各国の飛行機が図鑑のように載っているページがあって、パン‐アメリカン航空、エールフランス航空、ルフトハンザドイツ航空、アリタリア‐イタリア航空、KLMオランダ航空、ヴァリグ‐ブラジル航空、香港キャセイパシフィック航空…と無意味に記憶して親や親戚の前でご披露したりしましたっけ。いま、もう存在しない会社もあるのかな。なんか、記憶力っちゅうものが急カーブ成長する幼年期の一時期、何の役にも立たないそういうことを丸暗記する、それだけで楽しい時期があるわけですよ。

おまけに、それプラス月河も一応女子ですから、各国航空のスチューワデスさんの制服のイラストを色鉛筆で描き写したりしてね。まだ客室乗務員とか、キャビン・アテンダント、CAなんて呼称はなく、高学年のお姉さんたちがもっぱら憧れの職場視していた時代。やっぱりエールフランスのがいちばんおシャレだなとか、それに比べるとJALはいまいちでがっかりだなとか(まだスッチーお姉さんの膝小僧が見えるミニスカートになる前です)。別に勝ち負けを争うジャンルではない、軍用ならぬ民生の分野なのに、空を飛ぶということには別格の魅力があるのか、どうも“国旗で張り合う”気分になってしまう。ナショナルエアー、“フラッグ(国旗)キャリア”とは伊達に言わないものです。

まー、いま日本航空がどうこうなったとしても、ANAほか民間航空がたくさんあるし、それだけが原因で日本の国が立ち行かなくなってしまうわけでもないでしょうが、やっぱり日の丸つけて外国に飛び、外国人をも乗せて運んでる会社が、潰れかけのボロ会社ってのは、日本人としてあまり気持ちのいいもんじゃありません。

雑誌を見てスッチーユニホの絵を描いていた頃から、数年後かな?TVドラマ『アテンションプリーズ』が放送されました。2006年の上戸彩さんヴァージョンではなく、紀比呂子さん主演のTBSのほうね。当時の日曜夜730~は、NHK大河の前に、子供がTVを占領していられる最後の時間帯でした。

紀さん演じる頑張り屋さんヒロイン洋子より、敵役、て言うかライバル役兼意地悪役のポジションだった皆川妙子さんの、外はねパーマ風のヘアスタイルが好きでしたね。当時からいい子ちゃんヒロインより、プラウドできっつい意地悪キャラが好きだったんだな。皆川さんはのちに『愛の戦士レインボーマン』でもお見かけすることになります。

洋子と同じ劣等生仲間?で明るく庶民的な性格の友人役だった麻衣ルリ子さんは、ちょっと襟足長めのオオカミカット風。さる事情で訓練が一期遅れ、洋子たちと同期に下りてきたミステリアスな役回りの范文雀さんはこれにもう少しトップのヴォリュームを押さえた感じでより大人っぽかった。范さんは同枠前番組の『サインはV』で期せずして一番人気となったので引き続きの出演になったと思います。

浅黒メイクに長い黒髪、ジュン・サンダース役の記憶も新しい范さんの、パーマありショートヘア自体が子供心に軽い衝撃で、それが動機でお話あまり理解できないままに継続視聴していたような気も。

もちろん撮影全面協力はくだんの日本航空。「ノーブルで難関なイメージの職業だけれど、容姿成績凡庸な女の子でも、努力すればなれるのよ」という、“あゝ昭和”な努力万能論メッセージもしっかり含まれていました。

あのまま行けばスチュワーデス志向のお姉さんたちと同じような路線に行ったかもしれないのに行かなかったのは、詰まるところ、閉所恐怖症の傾向のせいだと思います。“高”所は平気なんですけどね。一歩も外に出られない、出るときは非常時だという密閉カプセルみたいな中で、ニコニコと飲食のサービスしたりアイキョー振りまいたりは到底できないと、ある時点でまったく憧れの職業じゃなくなった。“制服”というものにやんわり拒否感を持つようになった時期と一致しているかもしれない。

まぁ、話を元に戻せば、企業の、外っかわから見ての人気や好イメージなんて、10年と言わず5年か6年でころころ変わったり失墜したりするものです。実家父が社会人デビューした頃は、“三白”“3Sと言って製紙、砂糖、繊維のどれかに入っときゃ間違いないみたいに言われていたらしい(実家父はぜんぶ落ちたそうです)し、世紀のかわりめ近辺にはブイブイ言わせていたIT系なんてドコ行っちゃったんでしょう。

テロ事件とか世界不況などいろんな逆風はあったにせよ、航空業、航空旅客運送業自体が社会的使命を終えて要らなくなってしまったわけではないのだから、日本航空の今般の窮状は煎じ詰めれば経営ミスだったということでしょう。自社の経営上の操縦桿もうまいことコントロールできない会社が運航する飛行機にあまり命預けて乗りたくないですが、当地も、地続きでない場所はどこへ行くにも同社がいちばん便数が多くて便利なんですよねぇ。

そう言えば、連日JALJALと紙面やTVを賑わすここ最近、お笑いのジャルジャルは迷惑しているのではないかなあ。関係ないか。

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ひと言いっとく

2010-01-15 20:16:20 | 夜ドラマ

14日にやっと年明け初回(第11話)の『不毛地帯』は、いくらか出来が持ち直しました。217日のサウンドトラックCDリリースを意識してか、劇中の音楽の使い方も若干大胆になった。FORK社覆面調査団極秘投宿先のホテルにマスコミが嗅ぎつけて来ていないか、壹岐(唐沢寿明さん)配下の不破(阿南健治さん)と八束(山崎樹範さん)がロビーをスクリーニングして回る場面の音楽はいささかトゥーマッチでした。そんなにサスペンスにするシーンでもないのにね。

 て言うか、ほとんど“岸部一徳さんスペシャル”化してなかったですか。文字通り死んでも壹岐に手柄を立てさせたくない、死んでも死ぬ前に一日でも一時間でも社長の椅子に座りたい。里井副社長のこの執念、第11話に限って言えば実質主役と言ってもいいくらいの迫力でした。

 大門社長(原田芳雄さん)への電話での交渉報告の後、倒れた里井とネクタイをゆるめようとする壹岐の格好ったら。絞め殺し合ってるようにしか見えなかった(爆)。

壹岐にしても、亡き妻・佳子(和久井映見さん)への追憶、後ろめたさと綯い交ぜになったああいう夢を見るということは、出世出世のわかりやすいガリガリ亡者である里井に、己の中の自覚しない一面の投影を見ているのでしょうな。生粋の選良軍人教育を受けた壹岐のような男が、“手柄をあげ評価されて上の地位に上がる”ことに、きれいさっぱり恬淡無関心なはずがない。「キミは亭主を立てる良き妻のようだから、本当は出世したくてたまらないのだと、認めるように壹岐くんに言いなさい、副社長命令だ」と、自分ではなく佳子が里井から面罵され「副社長にお逆らいにならないで」と佳子から悲しげに懇願される悪夢は、壹岐の、日頃細心に折りたたんで秘めている潜在意識を表現して妙でした。

壹岐が里井の魂胆を承知しながらも承服できかねている裏には、経営不振ながら技術力は見るべきもののある千代田自動車を、極東進出に意欲的なFORKの軍門にまるっと下らせて、FORK絡みのおこぼれ商材で儲けられればいいという、小商人的な志の低さへの嫌悪感がありそうです。敗戦に立ち合い、11年のシベリア抑留という痛みを伴う責任も取らされた壹岐には、日本国の日本人の物づくり力と知力に対する負い目もあるが自負もある。自分なら日本人が作った自動車で、戦勝国アメリカともっと対等な、大きなビジネスにして見せるのに…という悔しさが、里井のなりふり構わぬ姑息的利益至上主義に反感含みの視線を向けさせ、その微妙な“上から目線”ぶりが「ボクに隠れてコソコソと…」とますます里井を刺激する。

まぁ、ここでの壹岐は、わかりやすい使命感とか、天下国家意識を持ったかっちょいいヒーロー像には描かれておらず、何らかのグランドデザインを持っているにしても、それらを部下たち相手に滔々と披瀝する的な表現はありません。そこがいいのですけれどね。

暮れの910話辺りでちょっともやもやしかけた旧・上官の遺児千里(小雪さん)との関係も、前述の亡妻が重石役で出てくる悪夢や、いつの間にかペアになっているグラスと、過日壹岐寝室で見つけた女の髪の毛とを結びつけて想像を逞しくし“先立たれた奥様に操を立てる立派なかたと思っていたのに、ベッドに女連れ込んで結局ただのオスだわフン”とばかり不快げな態度を隠さなくなったメイド(吉行和子さん)、千里の陶芸遊学中のガイド役を頼まれた塙(袴田吉彦さん)の「秋津さんと再婚する意志はおありなんですか」との問いに「…どんな形にせよ将来を見守ってあげなければと思っている」と、参謀流の婉曲表現ながら本音に近いところを吐露する壹岐…と、比較的すっきりした描写が続いて、靄が晴れてきました。千里にいま少し“亡くなってしまったから、逆に奥さんの存在が重くのしかかってきた”悩みや逡巡が垣間見えるといいのですが。

それにつけても、話が戻りますが、ここのところは本当に岸部一徳さんでもっているドラマになってますね。原田芳雄さんのガハハ社長っぷりもさすがですが。

昨暮れのNHK『再生の町』再放送に『相棒』元日SPと、ここのところプチ岸部さん鑑賞フェアみたいになっていたんですが、長身でヌウボウとした雰囲気の容姿といい、ここで何度も書いていささか失礼ながら基本的に“無表情役者”だと思うんです、岸部さん。

たとえば陰と陽、冷と温、硬と軟の振り幅が、広く大きいタイプの役者さんではない。

かと言って“どんな役を演じてもキャラや雰囲気がいつも一緒”という、“地のまんま”押しなタイプでもない。『再生』の寡黙で律義な地方公務員も、『相棒』のツッコミどころはあるが食えない腹黒官僚も、この『不毛』の小心でやっかみ上等な副社長も、しっかり違いはあるのですが、ものすごく狭いストライクゾーンの中での緩急、コースの出し入れです。

ひょっとしたら、ゾーン内出し入れすらしていないのかも。「いまのはインコースに見えた」「今度のはめっちゃ速いアウトコース真っ直ぐに見えた」と、観る側に“錯覚”させるのが上手いのかも。

現役時代、“星の王子様”の愛称があったオリックスの星野伸之投手は、細身の体型から繰り出すスローボールながら、現役時代を通じて高奪三振率に定評がありました。130キロそこそこしか出ない直球でも、さらに遅い80キロ台のスローカーブに織り交ぜることで、実際以上の豪速球と感じさせることができる。

星野投手は緩急差(正確には緩“急”ではなく、緩“超緩”差)の他に、ボールの出どころや握りをわかりにくくするフォームの工夫なんかもあったのですが、岸部さんの演技も星野投手のピッチングに相通じるものがあるような気がしますね。狭い振り幅を、出しようでどえらく広い落差に感じさせる。

ベースがローなトーンの声を、台詞の要所で裏返らせる発声の技術もあるかも。普段低音な人が急に一瞬カン高い声を出すと、怖かったりスリリングだったりしますよね。このへんはGS時代の音楽経験も活きているか。

ドクターストップがかかっているのに無理やり退院して帰国便に搭乗するラウンジでの「おかげですっかり元気になったよ」と壹岐たちにカラ元気を見せる場面、長身の背中の曲げ方加減もうまいですよね。クチは達者を装っても体はこたえているという感じがにじみ出ていた。容貌が茫洋寄りな代わり、この年代の俳優さんには珍しく身長に恵まれているのも大きい。

そう言えば、結構ホットな注目作に引きもきらず出演されているのに、番宣インタヴューなどにほとんど顔を出されませんよね。『徹子の部屋』とか『スタジオパーク』など。オファーはあると思うんだけど。

こうなるとなんだか里井副社長の今後が心配になるなあ。佳子役の和久井さんも「『ピュア』の優香ちゃんがいい女優さんになった」と感慨にふける間もなく退場してしまったし。無茶しないでもう少し長生きして鑑賞させて欲しいのですが。

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もっと深めろ

2010-01-14 21:59:22 | 再放送ドラマ

『外事警察』未視聴だった第1話を、待望の全話一挙再放送(BShi10日)で録画視聴。良かった良かった。普通に良かったですよ。「良かった」と直球で言える第1話だったことに安堵です。

 初見では“凡庸ではないけど、そこらにいなくはなさそうな公務員警察官”といった風情で登場する住本(渡部篤郎さん)もいいし、同期の中では優秀でモティベも高いけれど、突然の研修発令に戸惑い尻込み気味ながら「なにくそ、あんまナメないでよ」と飛び込んでいく、刑事志望の所轄婦警松沢陽菜ちゃん(尾野真千子さん)の醸し出すフレッシャーズな雰囲気もさわやかでした。

2人ともそれぞれに、FISH案件に深く踏み込んでしまうアフターとビフォーをちゃんと画面で確認できたので満足です。特に尾野さんの松沢は、最終話で倉田理事官(遠藤憲一さん)と向き合う場面のあのツラダマシイに成長変貌する前の、出発点はここにあったのか…と感慨さえ覚えるほど。1話での住本の台詞にあったように、かわいいけど「男の目を惹かず、かと言って不細工過ぎず目立たない」、地味で、いい意味で田舎っぽい尾野さんの持ち味がこんなに活きる役柄もそうはないと思う。派手な目鼻立ちの、記号的美人さん女優では絶対に成立しない役です。尾野さんの出演作は今後も注目ですな。

何より第1話、テロを含む犯罪違法行為とは無縁だったはずの、まじめな技術者社長・谷村(田口トモロヲさん)をからませることで、“無辜の一般善良市民がテロの魔手に取り込まれる恐怖”、ひいては“巨テロ阻止という大義のためなら市民をツールにするのも平気な、外事の峻烈さ”をきちんと描出した。

自分には責任のない爆発事故から自社の主力製品があらぬ疑いをかけられ、せっかく脱サラ起業して軌道に乗りかけていた事業が低迷、倒産の危機に。二度めの不渡りを出す寸前に、テロ組織と内通した某国外交官が大枚の金銭と、何より谷村が誇りとする技術力を誉めそやす甘言をもって誘惑します。

一度は断った谷村でしたが、救いの神だったはずのベンチャー融資が理不尽に打ち切られるに及んで、ついに禁断の木の実に食指が伸び……。

「いま止めて危険を知らせれば、谷村は犯罪に手を染めずにすむ、別居を余儀なくされている妻も、事故以来いじめに遭って引きこもりになっている息子も、犯罪者の家族にならずに済む」と焦る陽菜、若い女子相手にガチ組み合って介入を止める住本は「谷村が自殺したらそれも仕方がない、ラモン(←FISHと通じる某国スパイ)が次のターゲットを定めるのを待つ」と言い放ちます。

谷村がラモンに禁断の取引場所を指定、苦しんできた負債を一気返済して釣りの来る5,000万円の現金を手にしたら、別居の妻子と久々に外食をと連絡します。受け渡し現場に向かう途中の谷村を追尾する松沢の、いまにも「あの…行かないで」と話しかけたげな表情をモニターして「おいおいおいおい」とひやひやする住本班金沢(北見敏之さん、過去最高の当たり役!)。松沢の願い虚しく谷村は外為法違反の現行犯で“外事表(おもて)”の手で待ち伏せ逮捕、つゆ知らぬ妻子が楽しみに待つレストランの前をパトカー連行されてしまいます。

しかも谷村をいっとき天国に祭り上げたベンチャー金融は、五十嵐(片岡礼子さん)の調査でも素性が判らないはず、実は住本の雇ったダミー。「一度天国を垣間見た人間は、地獄の恐怖がもはや耐えられなくなる」…これを松沢に知らしめない語り口がいいのです。ここで陽菜ちゃんが住本の方法論をそこまで知ってしまったら、2話以降の下村愛子(石田ゆり子さん)取り込みの話が成立しなくなる。

標的のためなら人間であることをやめるさえ辞さない住本と、そんな“公安が生んだ魔物”とチームを組んでいるとはいまだ知らない松沢。努力型の優等生新人女子と、“モンスター”とのコンビは、なにやらクラリス・スターリング捜査官とハンニバル・レクター博士を連想させます。

1話の土台がしっかりあったから2話以降が活きた。最終話ラストシーンの住本も、“みずからの峻烈なやり口に復讐された”と取るもよし、逆に“このシーンが‘さらなる裏の裏’への一丁目”とも取れる。

いまや“草食系男子”の時代ですが、渡部篤郎さんの、“実は肉食の隠花植物”みたいな、一見へなへな、ほにょほにょした、軟体な佇まいが実に役柄にマッチ。輪郭の明晰な、きりっパリッとしたルックスの人、動物的な温もりや熱気のある人では住本は演れない。

全話視聴して、依然、芸風的に苦手なタイプの役者さんであることに鐚一文変わりはないのですが、力のあるドラマ、小説であれ映画であれ力のあるフィクションは「苦手だけどおもしろい、わくわくする、見逃せない」と思わせてくれるものなのです。

NHK土曜ドラマは、こういう、一種引き攣った娯楽感に満ちた作品を、最近よく放送してくれます。民放他局のドラマがCM不況のためか軒並み小粒になり、冒険しなくなっている現状、NHKには“TVドラマ製作局最後の牙城”として期待したいですね。

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