『相棒』元日スペシャルで、ドラマ本筋とは関係なく嬉しかったのは、Season 8サウンドトラックCDでいちばん好きになったM‐14『木漏れ日』がやっと劇中で聴けたことですね。
このCDの中で何度も登場するモチーフの、ピアノソロ曲なのですが、ドラマのサントラということを離れても心安らぐ名曲。Season 7までのサントラに比べてお洒落めな曲が多いこの盤の中ではちょっとオールドファッションドで地味で、そこが安らぎの源でしょうね。シャッフルで聞いていてもこの曲に来るとホッと、気持ちいい緩み具合になります。
劇中で流れるとしたら、事件解決後、被害者遺族がなんらかの癒しを得る場面かな?悪かった人が立ち直るきっかけをつかむ場面かな?それとも、そんなこともぜんぶ終わって、特命コンビ(水谷豊さん及川光博さん)とたまきさん(益戸育江さん)とで、回顧モードでくつろぐ場面かな?等と、去年からいろいろ想像をめぐらしていました。
ちょっと違ったけど、神戸くんの、初めての自分語り@花の里のBGMとして使われて、『木漏れ日』ファンとしては80点ぐらい満足です。
最初は「学生時代の知り合い」→「恋人だったけど、卒業以来会ってない、連絡先も知らない」「(なぜ別れた?とたまきさんに訊かれて)と男と女が別れるのに、理由なんてないんじゃないですか」ととぼけて話題にしたくなさそげだった神戸くんですが、その元カノ・唯子(檀れいさん)が歴史サークルメンバー女占い師(山口美也子さん)殺害現場の第一発見者兼重要参考人として聴取されるはめになり、右京さんが香時計を使った真犯人の偽装工作を看破して釈放はされたものの、「君の周りで何が起きようとしているのか、考えていることでいいから話してくれないか」「俺はいま君に何ができる?」との問いには、答えたげにして答えぬまま、彼女は去ってしまいました。
京都から東京に戻って、小野田官房長(岸部一徳さん)経由で彼女がIPS細胞研究実用化のため製薬会社と極秘折衝中で、東京での事件時アリバイを明らかにできなかった理由だけは一応判明しますが、神戸くんが彼女との若き日のいきさつを開封、反芻してみる気になったのはこのあたりのよう。喧嘩も別れ話もなく、神戸は卒業後の警視庁入庁、唯子は大学院進学が決まり、そのまま交際が続けば結婚してもよかったのに、なぜか彼女は突然連絡を絶って京都の実家に帰ってしまった。「(別れた理由は)本当はボクにもまだわかってないんです」「でも彼女は、最後に会ったときと同じ、何か言いたいのに言えないでいる顔をしていました」「彼女は明らかに事件に関する何かを隠しています」「でも誤解しないでください(←右京さんに向かって)、別れた理由が知りたいからこの事件を調べてるんじゃない、刑事として真相を明らかにしたい、それだけです」…
彼の、ほぼ初めての“刑事”としての決意表明に、右京さんは何もコメントしませんが、真相解明は唯子を、隠し事から解放し、楽にするかもしれないし、結果的に隠し通すより辛い目に遭わせることにならないとも限らない。しかし「真実は、良い事も悪い事も、明らかにされるためにある」が信条の右京さんです。一抹「神戸くん大丈夫?」の危惧を抱きつつも、上司として、人生の先輩として、その意気やよしと、すがすがしい気持ちはあったからこその無言でしょう。
なにぶんこの段階では事件も捜査途上なら唯子の真意も不明で、『木漏れ日』、もう少し達成感のあるシーンで使って欲しかったなと思わないでもありませんが、事件そのものより、いままで、かみ合ってるような探り合ってるようなヘンテコな協働だった特命新コンビの波長がやっと一致した、ひとつの到達点と思えばやはりナイス選曲です。
ラスト近く、唯子が、神戸から離れてでも守りたかったものが何だったかがやっとわかった、ホロ苦くもさわやかな公園での抱擁見送りシーンには、『木漏れ日』と同モチーフ同メロのホーン版M‐27『Deference』がいいんじゃないかと思いましたが、だいぶ違いました。もう一度録画再生して聴いてみないとわからないけれど、あれはクラシックだったかな。
『Deference』も再出発モードで佳曲、佳アレンジで好きな曲のひとつですが、同じメロでもホーンにすると男らしさが立ってしまいますね。女性がからむシーンには合わないかも。こちらは今度いつ、どんな場面で流れるか楽しみです。ちょっと殉職の出棺とかにも合ってしまいそうなのが怖いんですけど。