『嵐がくれたもの』も、観るほうも放送するほうも、ともに10月30日の最終話までもうひとターボかけて行かなきゃいけませんが、今月に入って早々、次クール11月からの同枠帯ドラマの情報がリリースされましたね。
『Xmasの奇蹟』。レコード会社の女子社員が、ひとりの覆面ピアニストの作品を世に出すプロジェクトをきっかけに、若いやり手のディレクターと恋仲になるも、彼は不慮の事故で急死し悲しみのどん底へ。しかし彼の魂は、別の場所で事故に遭い生死の境をさまよっていた若者の肉体に宿り、失意の彼女の前に現れてやがて恋が…というスーパーナチュラルな、ファンタジックなラブストーリーのようです。
“Xmas”で“奇蹟”。この枠の昼帯ドラマとクリスマスって、縁があるようで実はいままであまりなかったように思います。もともと3ヶ月1クールの中で、何十年、複数世代にわたる“大きな”物語を展開してくることが多かった枠ですから、「春だから春らしいお話」「夏だから夏らしいお話」「クリスマスのある年末含みのクールだからクリスマスをクライマックスにするお話」という企画自体珍しい。2001年10月~12月放送の『レッド』ではクリスマスがらみのエピが数話あったように思いますが、そこへ向かって収斂していくような物語ではありませんでした。
放送クールと“リアルタイムの季節”が直結したのは、月河がレギュラー視聴した中では、2007年7~9月の離島リゾートひと夏の物語『金色の翼』が初めてかもしれない。
02年7~9月の『新・愛の嵐』放送前のTVブロスの特集で、出原弘之Pの「暑い夏だからこそ、とことん熱いラブストーリーをと思っ(て企画し)た」とのインタビューを読んだ記憶はありますが、実際放送されてみると、“夏”がさほど大きな意味を持つわけではない、普通の『嵐が丘』翻案メロドラマでした(内陸の山国・甲州育ちのヒロインが、横浜から来た浮浪児あがりの相手役少年のいざなう“海”に胸ときめかせる描写は劇中何度かあり、絵柄的な季節感はなくはなかった)。
11月~12月放送だからこその“クリスマスもの”。この枠伝統の“大きな物語”ではないのだろうなぁ…と、一抹失望はありますが、主役の女性宣伝部員に扮するのは高橋かおりさん。この枠の昼帯には03年『幸せ咲いた』、05年『危険な関係』、07年『愛の迷宮』と、主役・敵役ともに実績をお持ちですし、30代になっても少女子役時代の可憐さやけなげさ、“ほどのよいキツさ”を面影に残し、“もう若くはない女性が遭遇する、古めかしめのロマンティック・ファンタジー”にはぴったりの女優さんです。
悲運の相手役にはTo be continuedのVo.…と言うよりもうここ10年以上すっかり役者づいている岡田浩暉さん。月河は『相棒 season3』で前後編2週にわたった『女優』での羽田美智子さん彼氏役の、“使用人萌え”的色気が忘れられませんが、一般的には1996年の『愛していると言ってくれ』で常盤貴子さんに思いを寄せながら、お友達で終わってしまう劇団スタッフ役のほうが知られているかも。
神秘のいたずら?で彼の魂を宿しヒロインの前に現れる若者役は窪田正孝さん。NHK『浪花の華~緒方洪庵事件帖』では、脇が濃い人揃いの中、なかなかの目ヂカラで若き日の天才医学者を好演しました。なにげにジュノンスーパーボーイコンテスト出身なんですね(プレ最終選考敗退組らしいですが)。
他に主題歌を歌い本人役で顔出し出演もするパク・ヨンハさん…と耳と活字でお名前を見るだけでは、韓流にはさっぱり疎い月河はまったく顔が浮かばないのですが、『冬のソナタ』のサンヒョク役と言えばもう日本でもばりばりメジャーなのでしょうな。そう言えば『ミュージックステーション』で、歌うお姿は見た気もします。俳優さんにしてはなかなかの歌唱力だったと思いますが、半端ない汗っかきさんだったような。
…別の韓流さんと勘違いしてるかな。
あこがれの華やかな音楽業界を舞台に、働く女性と切れ者の男性、そして対照的な、ビジネスに染まらないピュアな若者がからみ、交通事故とアイデンティティ入れ替わりの悲恋物語…となるとストーリーからして韓流チックですが、3ヶ月クール時代のこの枠伝統だった、グランドな時代ロマンや、ぐっちゃぐちゃの愛憎くんずほぐれつは期待できなくても、押し詰まり行く年の瀬気分での視聴にふさわしい、せつなさを帯びた堅実な良作になら、かなりなりそう。
バブル期、高級ホテルやレストランが予約満杯になり、イブ直前の数日間でティファニー、シャネルが何億円も売れた“一億総サカリついた猫”時代が遠い語り草になったドン冷え日本で、あえて“クリスマスもの”という外しかたも、ある意味“注文相撲”かも。
脇キャストの中では、ヒロイン高橋さんの妹役と思われる、蒲生麻由さんが楽しみですね。04年『特捜戦隊デカレンジャー』サキュバス、05年『仮面ライダー響鬼』たちばな姉妹の姉・香須美さんの頃から、かすかなトゲと薄幸感のあるこの美貌、絶対昼帯向き!と、この枠への来演待望していた女優さんなんです。
同じ頃やはり嘱望していた、所属事務所が一緒の肘井美佳さんはすでに同枠でかなり重要な役をつとめてくれたし、次はきっと蒲生さんの開花する番になるはずです。
新旧クール交代期でも、水割りみたいな長時間スペシャルで埋めたりせず、金曜に前作が終わったら、三日後の月曜にはきっちり新作が始まる律義さも昼帯の好ましいところ。現行放送中『嵐がくれたもの』のもうひとターボとともに見守りましょう。
そう言えばこの『嵐くれ』こそ、台風シーズンにぶつけた“季節モノ”でしたね。