先週セブンイレブンで見かけた、コンビニ限定・アサヒゴールド復刻版を試飲。
昭和33年に日本初の“缶入りビール”として発売された当時の味とパッケージデザインをリバイバルしたとのこと。当時は熱処理ビールだったのを、最新の食品工業技術で非熱処理=生ビールにしていますから、もちろん、そっくり昔と同じ味というわけにはいかないでしょうが、なかなかクラシックで、当時をリアルタイムで知らない月河でも懐かしさを感じる、いける味でしたよ。
昭和50年代、月河が背伸びして初体験した頃のビールの第一印象と言えば、失礼ながら「うえーニガい」「後味わるー」しかありませんでした。その頃はビールと言えばもっぱら大人の、男性の、なかんずく背広ネクタイのおじさんのためのものというイメージでしたから、「オジさんってのは、味覚共々人種が別なんだな」と思っていました。
しかし、♪時は流れ~すべてーはかーわり~(←『嵐がくれたもの』)、月河も長じて“嗜好がおじさんに近いおばさん”となったせいもあり、とりわけAsahiスーパードライ以降の国産ビールに慣れた舌と喉には、今般のゴールド復刻版、不思議な“甘さ”として感じられます。結構新鮮。
毎日、毎度ではちょっと飽きるかもしれませんが、同社最近作のザ・マスターが、同じクラシック路線な中にも、「本場ドイツの味」を強調するあまり、“必要以上に重い”飲みクチと香りになってしまっていたので、むしろこちらアサヒゴールドのほうを定番化してほしい気も。
ビールと言えば壜が当たり前だった時代に、いきなり缶ビールが登場したときの市場の反応はどんなだったのでしょうね。
同社スペシャルサイトには、当時の広告が載っていて、「いままでの“びん”よりずっと早く冷えます/冷蔵庫にも軽く倍は入ります/…容量は小びんより少し多く しかも目方は半分位です」と、改めて言われてみればごもっともな宣伝文が。確かに、業務用の大冷蔵庫をそなえた居酒屋やバー、レストランならぬ、一般家庭で冷えたビールを飲みたいと思ったら壜を冷やすほかなかった時代、当時サイズの家庭用冷蔵庫のキャパではたいそう難儀だったことでしょう。
実家母から昔、聞いた話ですが、昭和30年代後半、地方の父の赴任先の借り上げ社宅住まいの頃、近所のお宅に先んじて当時出はじめの冷蔵庫を大奮発して買ったのに、先輩社員やその奥様たちが週末になると争って「ビールを冷やさせてほしい」と持ち込んで来るので、いちばん冷やしたい、“このために奮発した”はずの牛乳や果物や鮮魚がワリを食い、さりとて社内職制的には旦那(=月河実家父)より上の人たちなので、むげにはねつけもできず大迷惑した…なんてこともあったそうです。
“新・三種の神器”ともてはやされ生活家電が日本国民のこよなき憧れだった頃、真っ先に張り込んで買うのはテレビ(←もちろん白黒)で、冷蔵庫はその次か次の次になる人が多かったらしい。テレビのあるお宅の茶の間に、プロレスや大相撲中継の時間になると近隣住民や子供たちが集まってきたという時代とたぶん一緒です。
“最新電化製品をシェアしたくて近隣住民が集まる”“頼まれれば(多少不本意でも)シェアさせてあげる”稲作農耕民族由来の地縁ムラ文化も健在だった。
母のこんな記憶の時代から間もなく、地方の酒屋さんにも缶ビールが行き渡るようになり、一方では冷蔵庫も一家に一台となり、消費は“ご近所単位”から“家庭単位”になり、やがては“個人単位”化していった。
復刻を機会に、“ビールが缶で買えて飲めること”自体に新鮮さを感じ、それが意味するいろんなことに思いをいたしつつ、味わってみるのもいいかも。
…と言っても、この復刻ラベル、コンビニ限定かつ数量限定販売なので、もう今日あたり行っても売り切れかな。