イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

世界はキミらを待っている

2008-11-03 21:34:36 | 夜ドラマ

『相棒 season7初回SP後編『還流 ~悪意の不在~』(1029日放送)、なんとなく先日みまかったポール・ニューマン主演の映画からとったようなエピソードタイトル。Absence of maliceですか。

いままで幾度となく特命係をフォローし、利用しているようでしっかりリスペクトし、警察組織の中の歯車とは一線を画す存在としてサポートしてくれた元・法務大臣瀬戸内米蔵(津川雅彦さん)でしたが、思いのほか思想が甘ちゃんで、詰めも甘かったという印象。もちろん今後塀の中で一生終わるわけじゃなく、今season中に鉄格子からの巻き返しもあるのでしょうが。

それに比べて、“いったん手を汚すと決めたらとことん汚す”“リスクもリターンも自己責任”とハラくくった小笠原役の西岡德馬さんがカッコよかった。捕まったのが自分ひとりという状況では黙秘を貫き、現場からの替え玉逃走役を引き受けた部下・田坂がスイスで拘束されたと知らされて初めて、深夜独房を訪ねて来て土下座で真相を乞うた亀山(寺脇康文さん)だけは真相を明かすべき相手と覚悟を決める。しかしこの時点でも、支援物資横流しプランを持ちかけたのが瀬戸内代議士であることは胸一つにおさめています。瀬戸内を売らずに無傷でおけば、あるいは田坂にだけは執行猶予を取りつけられると思ったかもしれないし、犯罪ではあっても遠い国の或る人々を確実に幾許かは幸福にしているこのプランを、自分と似たビジネスマンの誰かが継いでくれる目も心の隅で期待していたかもしれない。

横流しのバックと本当の資金還流先を知らぬまま脅迫に手を染めて、結果犠牲となった兼高(四方堂亘さん)に関しては亀山との同窓会再会場面、サルウィンの井戸を囲み村人たちと喜び合うシーン、カンボジアでの地雷撤去シーン、亀山宛て写真つき現地女性との結婚報告レターなど“人情家で、義理堅い好漢だった”を強調する描写が再三見られましたが、大手商社の本部長なら田坂以外にも大勢の部下を抱えていたであろう、年格好からいって妻子も居たに違いない小笠原についてはいっさい“人間性暗示による救済、酌量余地”を付加しなかったのがとてもよかった。瀬戸内との共謀スタートすら、ヘリ機内での瀬戸内のひとり語り中の回想としてワンカット(サルウィン現地のバーカウンター)入っただけです。小笠原がどんな人間で、どんな動機で料簡で、瀬戸内からの提案に乗ったのかはまったく説明されていない。“やったこと”しか描写されていないわけです。犯人役としてこういう描き方は月河、いちばん好きなんです。「作品をして語らしめよ」という感じがするじゃないですか。犯罪者の作品とは犯罪そのものですから。

瀬戸内がもっと全方位に周到であれば、実は兼高は殺されなくてもよかったのだし、小笠原も殺人犯にならないで済んだはず。瀬戸内がはしなくも漏らしたように「やってることは違法だ、犯罪だから」と、全員がどこかに持っていた“後ろめたさ”が、ひとりひとりの周囲に壁を築き、意思の疎通を塞ぎ、悲劇を招いた。瀬戸内が政治家として、志の師と仰ぐ京極民生(織本順吉さん)も、NGOペリカンの若者たちも含めて、一堂に会して夢を語り合う機会が一度でもあったならば。

Crime does’t pay悪意なき人々の犬死に、犬“死なせ”。先日ここで触れたseason4『最後の着信』もそうだし、同じseasonになるのか『アゲハ蝶』や『天才の系譜』『波紋』辺りも、一歩退いて見れば“空しい”殺人劇がモチーフになっている。犯罪に伴う、こういう残念さ、苦さ、悔しさこそ、『相棒』シリーズの得意とするところなのかもしれない。

脱線しますが西岡德馬さん、月河にとっては数少ない“舞台でナマ拝見して、いまTVでバリ現役”俳優さんなんですよ。もう30年以上前ですが、当時の地元の興行団体に勤めていた知人から頼まれて切符を付き合い、モリエールの古典劇『ミザントロープ ~人間嫌い~』を現代劇に翻案したお芝居を観ました。西岡さんは主人公の人間嫌い・社交界嫌いアルセストの、世渡り上手・女性受け抜群の友人フィラント役だったと思います。当時推定29歳、脚が長く顔が小さくて、役柄以上にカッコよかった。アルセストに扮したのが江守徹さんだったからかもしれません(…失礼だ)。「宇津宮雅代さんの(前の)旦那さんだよ」と、同行した実家母に、後から聞きました。

正直、こんなにTV的にツブしの効く、器用な役者さんだとは思いませんでした。最近だと『富豪刑事』シリーズの焼畑署神山郁三署長がいちばん月河の贔屓です。「県警上層部のカタガタもタイヘン心配しておられる!」…刑事も、署長も、犯人もいける。コミカル漫画タッチも、シリアスもいける。居そうでなかなか居ませんよこういう俳優さん。どっちか、どれか“イタく”なるもの。

さて本日は久々午後からずっと在宅できる祝日、TVDVDも封印してNHKFM『今日は一日ジュリー三昧』で珍しい沢田研二さんのセルフトークを堪能中です。歌声は相変わらず若々しい沢田さんも、語りの声はさすがに還暦の渋み。1948(昭和23)年生まれの沢田さんは音楽人生が“ビートルズ以降の和製ポップス史”そのものだし、タイガース結成~上京して全国区ブレイクの過程などはさながら“ひとり『プロジェクトX』”の趣きです。

昨日の記事で、フランク永井さんのモノマネ『有楽町で逢いましょう』を一度だけTVで見たと書きましたが、タイガース時代はレコーディングでもライブでもサリー=岸部修三(現・岸部一徳)さんの低音ヴォイスと声質がそっくりなのを“利用”、トッポ=加橋かつみさんのソロパートなどでよく岸部ヴォイスでコーラス入れていたりしたらしいです。

あと、タイガース公式解散後も、岸部さん・タロー=森本太郎さんとは交流が続いているし、何度か復活再結集の機会もあったものの、完全に芸能界と絶縁したピー=瞳みのるさんとは本当に会えずにいるらしく、この点については心残りがひしひしと伝わってきますね。解散決めた時点で学生に戻る意志が固かった瞳さんと、解散後もバリバリ音楽活動する気満々で次のステップを模索していた沢田さんらとでは気持ちの体温が大幅に違ってしまい、そのためにやはり“わだかまり”に近いものが生じて、やはり現在も融けないでいる模様。音楽とか芸能活動の一環としてではなく、青春の一時期をともにした“同窓生”として再会のチャンスがあればいいのですが。

いきなり『勝手にしやがれ』の西ドイツでのリリース用英語ヴァージョンがかかってビックリしたり。祝日のNHKFMは大胆です。

深夜2500まで続く生放送、沢田さんはソロ歌手としてヒットチャートを飾っていた頃からそうですが、声、ノドに関してはフィジカルもテクニカルも驚異的ですね。今日の番組での回想トークを聞くにつけても、タイガース時代から、言うなれば売れ通しに売れていた約10数年は、睡眠休養がじゅうぶんだったことがないのではないかと思うのですが、声がダウンしたことは一度もないみたい。まさに天性のヴォーカリスト。歌うために生まれてきた人。

そう言えばサリー=岸部一徳さんと言えばいまや『相棒』小野田官房長ではありませんか。舞台・映画では俳優としてもいい仕事をされている沢田さん、ひと頃「得意」とご自分でも言っていた犯人役でゲストインはないかな。

コメント
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