イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

花より肝臓

2008-02-28 00:31:13 | アニメ・コミック・ゲーム

スーパーヒーロータイムのもう一方の正横綱『仮面ライダーキバ』は♯524日放送)まで来ましたが、“まだ助走”感が拭えません。

 仮面ライダーvs.悪の怪人集団、の図式のほかに、ライダー世界には必ず“ライダーとは別働で悪に対抗する組織”が出てきます。実社会の警察・司法組織や自衛隊、さらには巨大警備会社やシンクタンクをこれに合体させたようなのをイメージすれば手っ取り早い。

悪怪人撲滅と市民の安全、社会の安泰を目指すならライダーと協力し支援していけば好都合だろうに、ライダーの持つ“孤高”性と、組織との相性は基本的によろしくなく、組織のほうが“協力するふりをしてライダーの超人パワーを利用だけする”“利用したことはおろか、ライダーの存在と働き自体を世間から隠蔽しようとする”みたいな小賢しい方向に行っては、もれなくドン滑ってライダーのカッコよさの引き立て役になって終了、が常。

このへんは原作者・石ノ森章太郎さんの世界観が陰に陽に引き継がれているからこそと思います。危険を冒し自分の身体を痛めつつ人命を救い悪を退けることをヒーロー性として称揚しながらも“国家権力や財力、アタマカズの力で社会体制を平穏無事にまとめる”みたいなイメージは、純粋悪とは違う意味でヒーローと相容れずにおきたい気持ちが石ノ森さんにはあったのでしょう。

今作『キバ』ではファンガイアハンターという組織がすでに登場、ゆり(高橋優さん)と恵(柳沢ななさん)のキュートなツンデレ母娘2代女性ハンターや、完璧主義のナルなエリート・名護(加藤慶祐さん)が我こそはとばかりにファンガイアに立ち向かっていますが、肝心のタイトルロール=キバ=紅渡に“なぜ変身して戦うのか”の動機が見えてこない。

公式設定でも“その行動は本能、なぜ変身できるのかなぜ戦うのかは本人にもわかっていない”。

その“本能”のタネはおそらく1986年=22年前時制の父・紅音也(武田航平さん)によって蒔かれたと思われるのですが、その種明かし部分も併行して現在進行形で、いつ核心にたどり着くやら。

変身(=超人的パワーを得る)できる理由・戦う動機は、孤高性異形性という仮面ライダーの二本柱をサポートする不可欠の要素だというのに、そこをあえてマスキングしたかのような話の進め方には、何か遠大な意図が隠されているのか、それとも………

伝統ライダーにおける“改造手術”的な人工オペレーションを経ず“親から受け継いだ遺伝子にライダー性が組み込まれている”というのは、ある意味最強の“戦う動機”かもしれませんが。

一方、組織所属の訓練されたエリート名護が♯5で変身する気配を見せたので、言わば“プロアスリート型ライダー”として、“先天性ライダー”=キバとの対照が話をおもしろくしそうではあります。

さて、日曜朝ではなく、平日昼のほうは、再放送『真夏の薔薇』が25日に完結。最終話まで2話の段階で碧(安永亜衣さん)の亜急性劇症肝炎という急展開にどうなることかと思われましたが、交通事故で瀕死の重傷を負った靖顕(入江達也さん)が稲彦(池田政典さん)に自分の肝臓を碧に移植してくれるよう苦しい息の下から頼み込み、聞き届けた稲彦の執刀で碧は見事回復。

肝移植生還者は自分の手術痕を、その形状と移植にかかる費用の額から“ベンツマーク”と冗談めかして言うことがあるそうですが、碧の腹部にもできたんだろうなベンツマーク。

「新しく生まれ変わったつもりで、これからは美しく生きようと思う」決心した碧、「稲彦さんとやっと本当の兄妹になれた気がするわ」「お兄さんと呼んでもいい?」に稲彦も仕方なく「じゃあボクも碧を妹と思うことにするよ」。

朦朧とする意識の中で、夫である自分ではなく稲彦の名を呼び続ける碧を見て、負けを覚悟した靖顕がみずから命を投げ出して碧に肝臓を提供したともとれますが、土壇場での弱気封じ?にしこたま酒を飲んだ挙句の交通事故死とはなんともハタ迷惑な。巻き添え被害者を出す可能性とか少しは考えなかったのかな。お医者さんなのに。

脳死状態になる前に確実に稲彦の病院に救急搬送されるには?と彼なりに考えた末かな。

さらに、めでたく肝移植成功させ最愛の碧の命を救った“勝者”のはずの稲彦は「彼は肝臓を提供することで、碧と一心同体になった」「碧の命の中には添田さんがいるから、ボクは碧を女として抱けなくなった。やられたよ」と苦い祝杯をあげるはめに。

愛憎深い2人の間での臓器もしくは遺伝子(精子卵子)の提供が肉体関係、あるいは結婚に擬せられる転帰は、中島丈博さん脚本作『牡丹と薔薇』『麗わしき鬼』にも脈々と受け継がれる要素。

ひとり碧だけは、名実ともに一度死んで生まれ変わったような気持ちでさっぱりした表情。靖顕の遺児俊顕くんがこれからどんどん可愛くなっていく盛りだし、もう稲彦に異性としての未練はないばかりか、嘘と隠し事を重ねて自分たちの運命を狂わせた郁子(姿晴香さん)への怒りも恨みも洗い流された様子で、ちょっとそれズルくね?と思ってしまいますが、死線をさまよって生還したということで大目に見るしかない。

お郁さんの、娘の出生に関する二重の嘘が事態を複雑にし死ななくていい人まで死なせた話ですが、それを(無理やり)脇に置けば、結局碧をめぐる二人の男の“思い切りの悪さ合戦”で、勝負に勝って試合(て言うか人生)に惨敗した靖顕試合は辛勝したが勝負に負けた稲彦、ってところでしょうか。

昼ドラ最終話恒例の回想フラッシュをバックに劇中で初めて流れた主題歌『悲しみのためじゃない』(中西保志さん)の2番の歌詞、

♪ 時を重ね 僕は変わる

  棘を呑み込むような日々でも……

  誰もいない空を ただ見上げるよりも

  僕は今を諦めずにいたい

このフレーズが“稲彦のテーマ”にも聞こえます。

回想フラッシュの最後を飾ったのは、碧でも稲彦でも靖顕でもなく、火室ック(小野寺昭さん)とお郁さんの釈放祝いダンスで、結局はこの親世代2人の“迂回した復活愛物語”だったような気もします。

エンドマークからさらに1年ぐらい後、お郁さんが「いままで言えなかったけど、碧、本当はあなたのお父さんは…」ってまた言い出したりしてね。この人なら毎年1回ぐらいずつ、恒例行事のように言うかも。

昨年暮れ近くから三ヶ月楽しんだ『真夏の薔薇』の後のこの枠は、05年本放送『危険な関係』が。DVD化の要望しきりながら叶わなかった作品、待望の再放送ですが、なんだか結果的に小野寺昭さん&姿晴香さん祭りの枠となりました。

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