山形の過去、現在、未来

写真入りで山形の歴史、建物、風景を紹介し、併せて社会への提言も行う

風格と綺麗さと

2010-01-14 20:35:41 | 建物
 国の登録有形文化財に認定されている山形市立第一小学校の旧校舎は昭和2年の建造だが、耐震補強を中心とした大幅な改修工事が施されていたが、ようやく一階と地階の部分の内装工事がほぼ完了し、来年度早期の利活用開始に向けて動き始めている。
 写真のうち左下のみが改修後の外観であり、あとの3枚は改修以前の外観であるが、いずれも蔦(つた)が建物の壁面を広くおおっている。
 緑の葉が鬱蒼となっている盛夏の時期も、また紅く色づいた晩秋における外観もまことに我々市民の目を楽しませてくれたものである。
 これに対して改修後の外観は蔦がすべて刈り払われているだけでなく、壁面全体が真新しく化粧直しされてウヅグスグ(美しく、綺麗に)なっている。
 だが、どうも風格や味わいに欠け、クールに感じられるだけでなく、美しく変身したはずなのにかえって「お色気」が失われてしまったように思われるから不思議である。
 文化財としての建造物ではあるが、もともとコンクリートによる地味な色合いの建造物であるから決してホットな感じがする建物ではなかったものの、年月を経るごとに風格が増してきていたことも事実である。そして風格が増すごとに観る者にとって親近感と愛しさも募ったのであるが、このたびの復原改修により一気に風格と親近感が奪われてしまったような感がある。
 私も、昭和初期の鉄筋コンクリート建築として貴重な建造物であるがゆえに「保存」を強く望んできた者の一員であるが、補強工事が施されて半恒久的になり、かつ外壁が原状に戻りながら、むしろ親しみにくいクールな外観になって途惑いを禁じえない。
 まことに勝手な話ではあるが、文化財の保存とはやはりなかなか難しいものである。
コメント (4)
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