ああ、春は遠くからけぶつて来る、
ぽつくりふくらんだ柳の芽のしたに、
やさしいくちびるをさしよせ、
をとめのくちづけを吸ひこみたさに、
春は遠くから ごむ輪のくるまにのつて来る。
萩原朔太郎 「月に吠える」 「陽春」より
麗らかな日がつづくと思えば 今日はまた北西の風
春は行きつ戻りつ 遠慮がち
壁にかけた写真の
とりどりのチューリップが部屋を明るくする
風に揺らぐひかりを集めて 小さな花が咲いた
わすれな草の思い出にのせて ゆらゆらと訪れる春