六月の理想のやうな、青い空に、雲が吹き送られていくつもいくつもながれてゐた。
草の間に腰おろして、ふたり並んで、雲の行方を眺めてゐた。 (立原道造)
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三時過ぎのヒアシンスハウスは静かだ
ひとけない庭で マリーゴールドが迎える
水辺はいつも気持ちがいい 雲が面をなぞっている
噴水が一基 陥没したところは立ち入り禁止の侭
睡蓮の明暗たつきのピアノ打つ 草田男
たつき… ここでは よりどころとするピアノ ということかな
たつきを調べると
たつき たづき たずき… 方便 活計
1 生活の手段。生計 2 事をなすためのよりどころ。 たより。 よるべ。
3 ようす。 状態。 また、それを知る手がかり。
と あった。 花よりも おびただしい睡蓮の葉、 そのうえを ピアノの音が転がるようだ。 音は消えても なお耳に残る響き…