
しづかに靄がおりたといひ
眼を見あつてゐる――
花がにほつてゐるやうだ
時計がうたつてゐるやうだ
きつと誰かが帰つて来る
誰かが旅から帰つてくる
Ⅲ 一日は…… Ⅵ 立原道造
-☆-
桜には そんな力がある
すこしだけ 待ってみよう… きっと 帰ってくる
午前8時 人影もまばら
今朝もまた 寒い

青いシートが広げられ ビニールひもで線が引いてある
夕べのうちに 座る場所は確保しているらしい
鬱金桜は まだこれくらい 開花まで あとすこし
鶯の声の大きく静かさよ 虚子
ケキョケキョケキョ… 大きな声だけが 梢を渡る