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ドアの向こう

日々のメモ書き 

秋の唄

2005-08-24 | 別所沼だより

    けふは夏の日のをはり。 もう秋の日のはじめ。
    僕はボオドレエルの「秋の唄」の最後の行を愛する。 
    
              だれのために?  昨日は夏だった。 今、秋だ   
           不思議なひびきが 出発のやうに鳴りわたる。 
 
     蜂蜜のやうな、澄んだ、おだやかな陽ざしのなかに 
     子供らは樹に攀(ヨ)ぢる。鳶が輪を描いてゐる高い空。
    そこには、砂のやうな巻雲が、さらさらとながれてゐる。 
     地の上にも、光とかげとが美しい。花はしづかに溢れてゐる。
    けふは夏の日のをはり。 もう秋の日のはじめ。  
     
   水戸部アサイ宛 1938年9月4日付 軽井沢 (第五信より抜粋)                          

       -☆-

写真は 昭和十三年の水戸部アサイ 
青春のある時期、こんなに激しく純粋な時間を生きてしまった一人の少女。
 道造が婚約者と目された水戸部アサイに送った書簡は、全部で十五通。封書十四、 はがき一。 第一信1938.8.10、第十五信1938.12.3が全てである。
     (「立原道造・愛の手紙」 小川和佑より引用)

1938(昭和13)年春頃から 1939年(昭14)3月29日までの凝縮された、なんと透明な時間… 彼女の、それからの人生の重さ、哀しさ… 手紙の升目を埋める小さな癖のある文字がやわらかい。  
第十五信、希望を持っていた道造のアサイ宛、 これが最後の手紙。
その結びはつぎのように終わる。
 
  では、 着いたら また…     
        十二月三日朝   道造
     アサイ様  
  (けふは久しぶりに ワイシャツを着て… ネクタイをしめた)
   

     -☆-
 この記事を書き上げるまさにその時 Oさんからお手紙が届きました。美術展のご案内やら道造記念館のお知らせなど、うれしいプレゼントをありがとうございました。
 いつも思うことは一緒ですね。

     立原道造記念館で 2005.7.1 - 9.25 夏季企画展を開催中です 
        「立原道造が綴った真情  美しい書簡に託して」   

 

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