薄暮の別所をたづねたときから10日過ぎて、こんなに若葉が繁った。
きょうは中学生が野外スケッチにきている。ブルーのジャージが沼のぐるりを染めていた。「こんにちわ!」「こんにちわ!」と挨拶する。こちらも「こんにちわ、ありがとう。いいお天気でよかったね」と画板をのぞいてみる。すばらしいスケッチ日和になった。
神田文房堂にてルフランのパステル、緑系ばかりを200種類… どこかで読んだ。とくにパステル画を好み、その多くは中学生のころに描いたらしい。詩人も彼等をほほえましく眺めているにちがいない。そんな気がする。
ふりかえると柳の奥に小麦色したヒアシンスハウスが見える。ガイドのおふたりが、ちょうど旗を揚げているところだ。道造が好きなグリーンの無地… 深澤紅子に頼んでいたデザインは、道造には間に合わなかったのだ。
初夏のような陽差しが新緑をうつし、水面はぷるぷるゼリーのようにふるえる。風が吹くと、さあっとさざ波が走った。
パステル 立原道造
パステルは やはらかし
うれしかり ほのかなる 手ざはりは。
うれしかり パステルの 色あひは。