守れるのは わたしだけ
叫びたい衝動にかられ
駆け出したいと 揺れながら
生きているあかしを さがしてる
食べる 飲む 排泄 苦痛 眠る 微笑み くしゃみ 手をつなぐ あたたかい
喜ぶ 悔しがる 時を計る 手許の鏡 髪をすく
たすけるごとに あなたは
ありがとう… を言う
夢ならぬ さかんな生のあかしを ごらんなさいと
-☆-
プロジェクトは はじまったばかり
7日専門医によるセカンド オピニオン これまでの厳しい状況判断が覆ることはなかった
9日介助バー取り付け 10日介護認定調査 (火・金)訪問看護 (水)往診
弟の支え 姪の応援 蝦蟇さんの協力 子供たちの声援
… 蛙はひとりじゃない
あすの万葉講座もお休み とっても残念!!! 友だちに 会いたいな
車は緩やかに花のトンネルを抜ける。 わあ! 綺麗! ため息混じりのうららかな日和。 開け放しのルーフから花びらが舞い込む。 笑顔が戻った。
そのまま、これからお世話になるクリニックへ。 検査を受け、点滴をし3時に帰宅したのは、きのうのこと。
夜中3回起きたが、 3週間ぶりの我が家でぐっすりねむった。
きょうから週2回の訪問ケア 雨の中ご苦労さま。
体内酸素量、血圧、脈拍など測る。事務手続き、痛み緩和の呼吸法、軽い体操指導を含め1時間かけた。
ほかに週1回の往診がある。 緊急には24時間対応が家族を安心させている。
-☆-
医療は科学だ 実感する。 身体のなかは見えない、それをさまざまの測定により画像により状態がかなりわかる。 薬剤しかり、介護の技術から、心のケア、何もかも科学だとおもう。
むかし、成績はべつにして、どちらかと言えば理数が好きだった。覚えてないが、大学は理系に進んだ弟に教えていたと、今ごろになって知る。 そんなこともあったかなあ。
化学実験のおもしろさ。 現象すべてが理論で証明される快さ、物理も好きだった。 もう一度言う、成績は良くない。 しかし 愉しい授業を用意した先生も好きだった
… 桜のきせつに思いだす
-☆-
介護、最大の難関は母の入れ歯。 以前から、体温を感じる抜け殻のようで嫌だった。それも総入れ歯。魂が乗り移ったような生々しさ。何気なくはずしてあると、身震いした。
見るのも触るのもためらわれた。
今は 素直な気持ちで 毎食後 ていねいに磨いている。 清掃も科学…
自分でも驚くような変化をみる
花の雨は 強風に変わった 風速31.4メートル
花びらが くるくる転がりながら吹かれていく 欄干にしがみついて写真を撮った
見沼通船堀の桜並木 花大根のあかるい紫がポイント 水を道を桜いろに染めてながれる
退院は あした 自宅へかえる道すがら 車のなかでお花見する
どうか やさしい春風が そっと背中を押しますように
しとやかで 優雅な花が 彼女をなぐさめ 微笑みくれますように
-☆-
大いなるさくらを廻り陽の移る 秩父
天辺に水あるごときさくらかな 麦草
病室までみえた訪問看護ステーションのおふたりに 母は起きあがってきちんと挨拶した。
「まあ! 表情もしっかりしているし… お元気ですね」と蛙に耳打ちする。 驚いたようだ。
誇らしい! 91と聞けば、かなりのおばあさん。しかし話はきちんと通じる。
認知症は無いのだから。
「きょう… 先生に 家族は退院するって言ってますが こんなんで大丈夫ですかって聞いたんです。 そしたら、だいじょうぶ! 大丈夫って…」と お客の顔をみつめながら微笑んだ。
手にした資料を見ながら、トイレも一人でいかれますね。おふろも…。
すると母は ズボンの裾をひきあげ脛を出し、一.二、一.二と屈伸して見せた。
「あら! それなら 大丈夫!!」
黄色いカーテン仕切りの部屋に みんなの笑い声が響いた。 不安が消えていく。
心づよい助っ人さん これからどうぞよろしくおねがいします。蛙も頭をさげました。
きのうは 『いえに帰るのは 不安…』 と答えた。
毎日、それとなく、どのように話したらいいのか迷いながら続いていた。
手術もない。 改善したと思えないのに何を言うかと緊張する。 毎度の話に耳を貸さなかった。
主治医の薦めもあるし、自宅でようすをみてみよう。これまでどおり痛みもなく過ごせるようにできる。家で別の先生に診てもらう、もっと快適になるよう訪問看護で、好きなもの食べて。 ハイビジョン見ようね と誘う。
「今言ったこと分かるよね 退院するのよ」 『わかった』 きょうは簡単に応じた。 『TV見てたら 老舗の和菓子が出てきて美味しそうなの ぜんぶ食べたいって思った』 「いろんな花も咲くよ いっしょに見よう」
堰き止めていた水が、急に流れだした。 思うことがあったのか。
庭で山吹が咲いていた。 母のへやの目の前で、たった一輪だけ。 撮ってきたのをモニターで見せた。
市が指定する居宅介護支援事業者のなかからたった一カ所を選ぶ。こちらの意にかなう所を捜すのは思いのほか大変だった。ここぞと思うところに電話をし面談をかさね、やっと探しあてた。
理想のかたちができそうだ。
本日、クリニックのN医師に会う。 会社を抜けだし、1時間以上電車に揺られ弟も臨んだ。
診察の合間を縫って 約束どおり誠実に対応してくださった。 実績もあり、医師、薬剤、介護が一体になっている。 話には説得力もある。HPも閲覧し納得のいくところ。
「病院ではできない医療を提供し、患者さんの満足とQOLの向上に応える」 力づよく響いた。 弟も喜んでくれた。夕方のメールには「姉の言う通りこれ以上の所は、もう無い様な気がします。ここまできちんと冷静に進捗させてきたことの成果であり感謝して居ます」とあった。
-☆-
痛みがなければ いつもとおなじ。 咲き初めしさくらかな。 白い顔にほのかなほのかな紅を浮かべ、やわらかな表情。つかの間、安堵する。
しかし、きょうは反対側も痛むと言っている。
ふたりそろって見舞えば元気もでる。 庭に咲いた山吹、カワラナデシコ、木瓜、椿の写真。新聞の料理面、相撲の記事など置いてくる。「新聞! なつかしい!」 よろこんでいた。 彼女の気持ちを、帰宅に向けるほうが難問だ。 治して帰る気でいる。
桜ばないのち一ぱいに咲くからに生命イノチをかけてわが眺めたり 岡本かの子歌集「浴身」
休日は面会も多い。向かいのベッドが賑やかだ。 見に行くとカーテン一枚の仕切りのなかで昼食もとらず本を読んでいる。
「食べたくない、痛くてたべられない」 食事は残してあった。
「美味しくない 味がない 」
「あのひとは足、こっちの人は目。 でも痛いところがないからいい」
「ねえ、見るたび 痩せた?」
「ピンクの頬で元気そう、綺麗だよ… 」 あとが続かない。
「こんなに迷惑かけて、 お父さんにいいこども持った たくさん世話になったって 伝えるからね」 なに言うの よくなるんでしょ
きのうは弟も来て 母はちょっと痛いよと言いながらも上機嫌だった。ぱっと華やいだ雰囲気になった。 きょうはナーバスになっている。
それでも写真をたくさん持ってきたので いつもの明るさになる。 Mさんが裏側にたのしいコメントをつけていて、異国のあざやかな風景と幼子の表情が多いに慰めてくれている。つかの間、痛みもうすらぐようだ。
これが届いたころ随分見たはずだったが、初めてだと言う。それならそれで良かった。新鮮で楽しさも増すのだろう。
おなじ症状も家族に甘え、なれたところで過ごせば気がまぎれる。 喜びだって見つかる、そのほうが幸せなのかも知れない。うちなら融通がきく、嘘のような時間もあるのだから、昼食が2時でも3時でもかまわない。
治る、信じて入院した。 軽い鎮痛剤だけで施す術がない。本人以外が重大なことを決めていいのだろうか。 人格の否定 しかし、言えない。 おおらかだが、かなり繊細な病人の性格からして。 ここに来てますます鋭敏になっている。
ひとの生死を預かる重さ、厳しさにふるえる。 帰宅を勧めても納得できないままだ。
苦しい選択に堂々めぐりしている。 2006.3.18
17日から。それは本人も納得ずみ。それが少し早まった。きのう、人生初めての入院をした。
「rugが待ってるから、早く帰ってあげて… 家のほう、よろしくおねがいします」 そう言った。 すでに本を読み始めている。 目を上げずにきっちりした声が返ってきた。 さすがだ。
娘は湿気った顔を見られずにすむ。
ゆうべ眠れなかった。 ここ1ヶ月ばかり添い寝をしていた。痛まないか、トイレはうまくいっただろうか。 夜中に4.5回は起きていたから。 気落ちしてないか。 あれこれ巡った。
ラジオ、目薬、先生のエッセイや佐藤愛子の読みかけなど持って、きょうも見舞った。彼女はどことなく佐藤愛子に似ている。四角っぽい顔だと思う。佐藤さん、ごめんなさい。どちらも明るい いい笑顔であたたかく包まれる。
部屋がきのうと変わっていた。 すでに昼食をすませウトウト始めているところ 「おかあさん、来・た・わ・よ」と耳元に告げる。
「わあ 来てくれた。遅かったじゃない」 上気した顔をほころばせ 夕べはよく眠れて。食事もみんな頂いて。 こちらの方は90歳、そちらの方は80代と、事情聴取の成果を挙げる。「私が一番おばあさんだね」と続けた。
すごい! 新しい環境に順応している。まるで女学生の合宿のように昂揚していた。
TVカードやイヤホンを求めておいたのにTVはみない、本が面白いと言う。 家でも新聞を私より熱心に読んでいた。 頭はすこぶる元気なのだ。
これから、治療がはじまる。どうぞ穏やかに過ごせますように。 ストレスも少なく快適に過ごして欲しい。 まだrugのことさえ伝えられない。 これからたくさんの嘘をかさねていくのだ。
愛さんのおくりもの いぜんのもあるけれど、色褪せを気にしてまた届けられた貝のおひな様。 お嬢さんの着物を解いて雛の衣裳にしている。 小さな柄をいかに上手くはめ込むか、試行錯誤とセンスかな。 なかにはお香を入れてるようで、雅なかおりが漂います。
母の顔もほころぶ、おだやかな春の一日だった。
それから弟も、CD10枚持ってやってくる。
作品全て読んだと言うが、藤沢狂いの彼は周平の10作品を朗読でも楽しんだ。母へのおみやげ。
読まなくても寝ながらでも鑑賞できる最良の贈りもの。 個性豊かな俳優陣の朗読は、山田洋次監修により作品の魅力も増しているのだろう。 約束、たそがれ清兵衛、夜の道、静かな木、赤い夕日 など
いつものようにiPodの説明を熱くエンドレステープはつづけた。30GB、25.000枚もの写真を取り込める。音楽は7500曲、落語などいくらでも持ち歩いているらしい。もちろん、このCDだって入っている。
いくつになっても変わらない、昔からそうだったね君は。 そこがまた面白いところだが。
おかげでiPodの虜になってしまった。試してみたい
説明は 本人に知られないようにひっそりと まるで遠い世界のできごとか よみさしの物語りをきくように淡々とつづく
ひとりで聞くには余りある おおきなものが目の前を塞いだ 実感がわかない 夢を見ているのだと 言い聞かせる
やけにあかるい春のひかり 眩しすぎるし 強すぎる みんなしずかで かわらない だのに 内だけ騒がしく 自分も見つからないが しっかり守ってあげたい
…講座に行けなかった
ひとりで聞くには余りある おおきなものが目の前を塞いだ 実感がわかない 夢を見ているのだと 言い聞かせる
やけにあかるい春のひかり 眩しすぎるし 強すぎる みんなしずかで かわらない だのに 内だけ騒がしく 自分も見つからないが しっかり守ってあげたい
…講座に行けなかった