退屈日記

とりあえず日々のつれづれを。

幻想の力

2009-02-25 01:51:31 | Weblog
雨。夜になって止む。

キング・ヴィダー「群衆」(’28)を観る。

「大物になる」と夢を抱いた男は友人の紹介で出会った彼女と結婚、
貧しいながらも息子と娘の4人家族はどうにか日々を乗り切っていく。

ところが幼い娘がトラックに轢かれて死んでしまう。
ショックから立ち直れない夫は妻に黙って会社を辞める。

それでも彼を励まし内職で家計を支える妻に対して夫は職を転々、
見かねた妻の兄たちが紹介した仕事を断った夫に妻の堪忍袋の緒も切れる。

死のうとして死に切れない夫を救うのは幼い息子の言葉。
「パパのこと好きだよ。大きくなったらパパみたいになりたい」

3年後に「チャンプ」を撮ることになる監督らしい展開で
1979年のリメイクでは子役リッキー・シュローダーが観客を泣かせたもの。

80年前の上質のメロドラマは無声で
夫ジェイムズ・マレーの情けなさと妻エリノア・ボードマンがジョディ・フォスターを思わせるのに注目。

ベネディクト・アンダーソン「定本 想像の共同体」を途中まで読む。

近代に生まれた新しい「ナショナリズム」の力は強く
そのために多くの人々が自ら戦争に参加して死んだ。

神と人をつなぐ特権的な言語だったラテン語が衰えて俗語が広がる。
印刷技術の発達が俗語を読む新たな読者層を形成する。

「宗教改革」と大航海時代は
言語と人々の移動を媒介に「国家意識」の基礎を作り上げたのか。

宗主国の文化を身につけながら
植民地でしか自分を生かせないクレオールの存在も大きいという解釈もある。

そういえば「鉄砲伝来」は長篠の戦いで
当時最強と言われた武田の騎馬隊を信長が打ち破ることを可能にしたりもした。

「風が吹けば桶屋が儲かる」

そのカラクリの成否は別として
世界は幻想によってつながれているらしい。
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