『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

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『みちしるべ』**二酸化窒素測定活動の中間総括**<2009.11. Vol.61>

2009年11月02日 | 単独記事

二酸化窒素測定活動の中間総括

 みちと環境の会

  私たちが二酸化窒素測定活動に取り組み始めたのは1999年9月からです。当初は尼宝線沿いに、イズミヤから稲葉荘2丁目までの区間の44ポイントで測定していました。2001年9月からは、従来の尼宝線での測定ポイントを20に減らして、その分を山手幹線でも測定することにしました。

 武庫川に武庫大橋が架けられて、山手幹線が西宮側と連絡されると交通量が増え、山手幹線の二酸化窒素濃度は増えるだろうから、それを自分たちで把握するつもりでした。ところが、現実には私たちの測定方法は、経年的変化をつかむには不向きでした。

風速が強く、降水量が多いと、二酸化窒素濃度は低くなる

 01年2月から09年7月までの計47回の二酸化窒素濃度測定値と風速との関係がグラフ①で、降水量との関係がグラフ②です。一見してわかるように風速が強かったり、降水量が多いと二酸化窒素濃度は低くなる傾向にあります。自動車から排出された二酸化窒素は、風が強ければ道路沿道からより広範囲にまき散らされ、また雨が降ると、大気中に滞留している排ガスの一部が雨水に吸収されて地上に落されていきます。当然すぎる結果がこの二つのグラフに表れているのです。

行政の測定では、減少・横ばいの傾向

 尼崎市は、市内に6か所の自動車排ガス測定局をおき、365日1時間平均値を測定し続けています。一日の平均値をとり、それを低い方から順番に並べて98%目つまり358日目(=365日×0.98、一年を365日として)の一日平均値が、0.06ppm以下であれば環境基準を達していることになります。尼崎市が測定している排ガス測定局の98%値のデータがグラフ③です。

 尼崎市は、「尼崎と環境(平成20年版)」で「二酸化窒素 年平均値は、前年度から僅かに減少したが、ここ数年ほぼ横ばいで推移している。日平均値の年間98 %値はここ数年はほぼ横ばいで推移してきたが、前年度からはやや減少となっている」と慎重に表現しつつも、「環境基準は全測定所において適合した」と結局は問題なしの認識をにじませているようです。

 しかし、私たちがおこなっている測定のデータは違うことを訴えています。

ほとんどのポイントで行政の排ガス測定局の濃度を上回る

 私たちが測定している方法はカプセル方式で、二酸化窒素濃度測定データの信ぴょう性は高いのですが、年5~6日分しかデータを蓄積できません。しかも二酸化窒素濃度は前述したように風速や降雨の影響を受けやすいので、毎回大きく変化していました。これに対し行政は、自動車排ガス測定局をおき、一年中測定し続けています。尼宝線と山手幹線で行政は1ヶ所の自動車排ガスの測定局を置いているのに対して、私たちは48ポイントで測定してきました。

 そこで、経年的な変化は行政の自動車排ガス測定局のデータにゆだねることにして、その排ガス測定局と、私たちが測定している48ポイントのデータを比較する、平面的な変化を把握することにしました。

 2003年5月から私たちは、行政が設置している武庫総合高校の排ガス測定局の南北にカプセルを設置して、その他の46ポイントのデータと比較を重ねてきました。行政との平均差を平面図に落とし込んだのが図①です。

 特に二酸化窒素濃度が高いのが安倉バス停(東・西)、イズミヤ交差点(東・西)、尼宝線と山手幹線の交差点(東・西)、5合橋線と山手幹線との交差点(南)、玉江橋線と山手幹線の交差点(南)です。この8ポイントを含め、自動車排ガス測定局(武庫総合高校)より1.3倍も高いのが12ポイントもありました。

尼宝線、山手幹線の平均値ですら環境基準を超えている

 さて、私たちが測定してきた48ポイントのうち、尼宝線20ポイント、山手幹線22ポイントを行政の測定個所の南北2ポイントのデータと比較して補正したのがグラフ④です(ここでは安倉4ポイントは除いています)。

補正の方法は、まず、年単位で

{(尼宝線20ポイントの平均)-(行政の測定個所の南北2ポイントの平均)}=A
{(山手幹線の22ポイントの平均)-(行政の測定個所の南北2ポイントの平均)}=B

を算出し、年ごとに

  A+(武庫総合高校の年間平均値)=A’
  B+(武庫総合高校の年間平均値)=B’

を算出しました。 また、年度単位で

(武庫総合高校の98%値)÷(武庫総合高校の年間平均値)=C

を算出し、

  A’×C={(尼宝線20ポイント平均)の年間98%値 補正}
 
 B’×C={(山手幹線22ポイント平均)の年間98%値 補正}

としました。これにより、私たちの測定個所の平均的な濃度のポイントでさえ、ゆるすぎる環境基準を超えていることが強く推測されます。

夜間も二酸化窒素濃度は低くない

 グラフ⑤は、私たちの測定結果を自動車排ガス測定局・武庫総合高校のデータと比較するために、その測定日分の市のデータを昼間(7時~18時)と夜間(19時~翌6時)に分けて、二酸化窒素濃度を比較したものです。

 このグラフからわかることは、31日のデータのうち、6日は夜間の方が二酸化窒素濃度が高く、昼夜がほとんど同じ濃度の日(12日)を加えると約6割に達します。

 一方、自動車交通量は、グラフ⑥に示すように、昼間の時間帯の交通量は、夜間のそれよりも1.8倍多いのです。このグラフでは、一時間当たりの交通量を縦軸にとり昼間(7時~18時)、夜間(19時~翌6時)のそれぞれの平均二酸化窒素濃度を横軸にとりました。交通量は昼間が1.8倍も多いのですが、二酸化窒素濃度に大きな違いは見られません。

 夜間は、交通量が圧倒的に多い昼間と同等あるいはそれ以上の高濃度になる日が6割も占めるのです。すなわち、二酸化窒素濃度は、夜間であっても安心できない日が少なくないのです。その理由は二つ考えられます。

 まず一つ目の理由は気象条件によるものです。大気は一般には地表面付近が最も温度が高く、100m上昇するごとに0.65℃低くなります。ところが、いくつかの気象条件がそろった時に、湿っている地表から水分が蒸発する際、地表面から奪われる気化熱が大きくなり、地表面に近い空気が冷やされて、その上層部の空気が地表近くの空気よりも暖かくなることが起きます。このことを逆転層の形成といいますが、これが起きると、排ガスがあまり拡散せずに滞留しやすくなり、高濃度のまま推移することがあります。

 二つ目の理由は、昼間に比べ、夜間は大型車の混入率が高いのではないか、という推測です。中長距離自動車貨物輸送では、昼間の渋滞を避けて夜間に運行する傾向にあります。尼宝線は、中国自動車道宝塚インターと阪神高速湾岸線末広ランプを南北に結びますので、特に夜間の大型車の混入率が高くなっている恐れがあるのです。

私たちのこれからの課題

 運営委員会で中間総括をおこない、今後に活かすべき課題も明らかになってきました。以下それらを列記します。

  1. 他の団体とも一緒に取り組むことを追求する。
  2. 市に対して、現状をどう考えているのか訊きたい。また行政との交渉をする上でも、あらかじめ論点を整理して、獲得目標を設定する。県道尼宝線の拡幅整備問題では、道路整備課との交渉を重ねて、自動車排ガスに無責任な姿勢しかうかがえなかったが、市には県とは違い、もっと住民の立場に立った対応を求めたい。市は県と住民との間で「第3者」ではなく、市民の健康被害をなくす立場を鮮明にしてもらいたい。
  3. 『みちと環境の会』と行政との話にしてしまうのではなくて、住民と一緒に行政と話し合っていくことが大事だ。周りの住民に広げていくことが問われている。
  4. 私たちも住民もそして行政も、ハイブリッドの宣伝でクルマ公害が終わってしまったかのようなイメージに流さないようにしたい。

 簡単にはいきませんが、これらの課題をこれからも追求していく予定です。

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