夜間の二酸化窒素濃度は昼間の9割
みちと環競の会 神崎敏則
風速が大きいほど、また降水量が多いほど二酸化窒索濃度は低い
『みちと環境の会』では毎年5~6回二酸化窒素を測定している。測定方法はザルツマン法と呼ばれるもので、試薬を浸したろ紙をカプセルの中に入れて道路沿いの電柱などに吊り下げ、フィルターごしに大気中の二酸化窒素を吸着させて24時間後に回収し、測定器でデータを採っている。簡単ではあるが、数回測定しただけで測定地点の二酸化窒素濃度や排ガス問題の結論を出すことはできない、という難点もある。
当初は尼宝線沿いに測定していたが、2001年からは山手幹線にも測定範囲をひろげ、6~7名で手分けして48~49ヶ所を測定地点にしている。20回を過ぎた頃から、気象条件と二酸化窒素濃度との相関関係が明かになり始めた。風速が大きいほど、また降水量が多いほど二酸化窒素濃度は低くなる傾向であることがデータから導き出された。
年 |
月日 |
昼 |
夜 |
2001 |
2/26~27 |
0.038 |
0.043 |
4/12~13 |
0.039 |
0.044 |
|
7/12~13 |
0.020 |
0.019 |
|
9/3~4 |
0.044 |
0.035 |
|
2002 |
1/28~29 |
0.041 |
0.019 |
2/18~19 |
0.029 |
0.017 |
|
4/30~5/1 |
0.028 |
0.025 |
|
6/6~7 |
0.043 |
0.037 |
|
8/27~28 |
0.028 |
0.017 |
|
12/16~17 |
0.058 |
0.043 |
|
2003 |
2/26~27 |
0.063 |
0.040 |
5/1~2 |
0.035 |
0.054 |
|
7/28~29 |
0.028 |
0.027 |
|
9/24~25 |
0.043 |
0.028 |
|
11/18~19 |
0.051 |
0.049 |
|
12/22~23 |
0.055 |
0.044 |
|
2004 |
2/18~19 |
0.057 |
0.059 |
4/24~25 |
0.026 |
0.027 |
|
7/22~23 |
0.030 |
0.028 |
|
9/27~28 |
0.037 |
0.032 |
|
11/25~26 |
0.046 |
0.040 |
|
2005 |
2/25~26 |
0.032 |
0.023 |
4/22~23 |
0.018 |
0.041 |
|
7/25~26 |
0.010 |
0.010 |
|
8/30~31 |
0.046 |
0.029 |
|
10/24~25 |
0.030 |
0.035 |
|
2006 |
2/23~24 |
0.035 |
0.034 |
3/28~29 |
0.039 |
0.017 |
|
5/23~24 |
0.028 |
0.026 |
|
7/31~8/1 |
0.026 |
0.021 |
|
9/3~4 |
0.036 |
0.026 |
|
9/30~10/1 |
0.026 |
0.029 |
|
2007 |
1/8~9 |
0.039 |
0.027 |
2/13~14 |
0.046 |
0.063 |
|
平均値 |
0.037 |
0.033 |
予想外の高濃度
今回おこなった測定日(2月13・14日)の気象条件は、風速が大きく、しかも降水も確認された。「今回はいつもよリデータは低いだろう」と思いながら、運営委員の麻生さん、虫明さんとデータを測定していたら、予想以上の高濃度のデータが得られた。49ヶ所の平均を毎回算出しているが、その平均値は過去34回の平均が0,040ppmであるのに、今回は0,0671ppmで2番目に高かった。
尼崎市環境対策部公害対策課のご協力をいただいて、当日の気象条件と、自動車排ガス測定局として行政が測定している武庫総合高校の二酸化窒素濃度を入手し、比較してみた。風速は3.2m/sで大きいと言えるほどではなかった。24時間総降永量も0.8mmと少なく、実感していた雨量とは乖離していた。しかしこれらの気象データから、いつもの1.5倍以上の高濃度となった原因を説明することはできない。
3連体あけは高濃度?
高濃度の原因は当日のクルマの渋滞がいうもよりもはるかに多かったから、と素直に推測することも可能だろう。2月10(土)、11(日)、12(振替休日)と3連体が続いた後の測定なので、当日の通行量はいつもよりも多かったと推測できる。自動車排ガス測定局において、一日あたりの渋滞が普段は1時間あったとすれば、仮に3連休の余波を受けて通行量が1.1倍だったとしたら、渋滞率は飛躍して2、3時間になることも考えられなくもない。が、少し強引な推測なので裏付けるデータを探すことにした。
『山手幹線沿線の環境を守る市民の会』のご好意によりいただいた甲子園口北町の2003年度の一年間の二酸化窒素データで確認してみた。
3連休は7回あり、その翌日の平均値は0.026ppmで、一年間平均値は0.027ppmだった(厳密には、3連休あけの18時からの24時間とすべきだが、印刷物でいただいたので、3連休明けの0時からの24時間平均値をそのまま転用した)。結局この推測を裏付けるデータは得られなかった。3連休明けの二酸化窒素濃度はどうなるのか、今後もデータを蓄積していく中で判断するしかないようだ。
夜間の二酸化窒素濃度は昼間の約9割
尼崎市から入手したデータも時間単位で採られているので、2001年からの34回分を昼間(7時~19時)と夜間(18時~翌6時)に分けてエクセルで再計算した。すると昼間よりも夜間の方が高かったのが9回になった。総平均では、夜間の二酸化窒素濃度は0.033ppmで、昼間の約9割に達している。
常識的には夜間の方がはるかに自動車通行量は少ないはずだが、昼間の9割に達した原因として考えられることは2点だ。
一つは、尼宝線の夜間の通行量が他の道路に比べて多いことだ。これは騒音値である程度推測できる。
武庫総合高校での騒音は、夜間(22時~翌6時)68dB、昼間(6時~18時)71dBとなり、県道米谷昆陽尼崎線・砂田子ども広場の夜間65dB昼間70dB、市道尼崎豊中線・園和小学校の夜間66dB昼間70dBと比べても騒音が高くなっている。3 dB低くなると騒音発生量は1/2になると言われているので、(大型車の混入率を無視すると)武庫総合高校の夜間の通行量は昼間の1/2もあり、砂田子ども広場の夜間の通行量の2倍と言える。
もう一点は、夜間の濃度のほうが高いのが9回あり、9回全てに当てはまるわけではないが、逆転層が形成されたことにより二酸化窒素濃度が高くなったと推測される。
一般には、大気は地表面付近が最も温度が高く、上昇気流で100m上昇する毎に0.65℃温度が下がる。ところが、夜間の放射冷却により、地表面付近の空気が最も冷たくなりその上層部に比較的温かい空気の層ができると、地表面付近の空気層の中だけで対流が繰り返される現象がうまれる。逆転層は秋から冬にかけて発生しやすく、発生すれば、排ガスの濃度が高くなると言われている。
特に2月13・14日の風速は、昼間5,0m/sに対して夜間は1.6m/sと約1/3になっていることからも、逆転層の発生の可能性がより高いと言える。また、夜間の風速が小さいことが直接作用して濃度が高くなったとも言える。
いずれにしても、尼宝線における夜間の二酸化窒素濃度が高いことは深刻な問題だ。