ＧＷ特集 ～ 「センス」を考える4

糸井重里御大やみうらじゅんの話でお分かりのように、「芸」でなくとも「センス」のみでひきこまれてしまうのが、実は「笑い」の世界だったりするのです。

「笑い」の世界にはいくつかのパターンがあるので、まずその解説を。

代表的な例あげると、まずは「形が面白いもの」。これは長続きしません。だいたいが“子供ウケ”でマネしやすく、大ブレイクしますが“ヒケ”早いです。例えば、レイザー・ラモンHG「フォ～」やレギュラー「あるある探検隊」は早々に消えました、「♪なんでだろ～」のテツandトモなんか今どこに？小島よしお「そんなの関係ねぇ～」はもう時間の問題、エドはるみ「ぐぅ～」、藤崎マーケット「♪ララララ～イ」も同じ運命ですね。「センス」のカケラも感じない「哀しい笑い」です（エドはるみの「コォ～！」には、「唐突さ」と平時の彼女とのギャップという意味で若干の「センス」を感じます。彼女この路線で行けるなら、残れる可能性ありですね）。

次に「しゃべくりの面白さ、テンポの良さ」。これはけっこう長続きします。どちらかといえば実力派。古くは「やすきよ」「阪神巨人」、その後は「ダウンタウン」「ナイナイ」「爆笑問題」などなど。最近のＭ１グランプリ組は、まさに実力派という意味でこの類です。「欧米か？」で昨年大ブレイクのタカトシは、先の「形ネタ」っぽいですが、実は「欧米か？」が面白いのではなく、そこに至るかけ合いが面白いわけで、これは「しゃべくり」に分類されます。けっこう長続きしそうです。この組は本当の「芸人」の類ですから、「センス」というよりも「技」ですね。

さらに、大物の類。タケシや紳助は元々「しゃべくり」芸の面白さで人気を博している間に、他人を“こき下ろす”ある種「毒舌ネタ」へ移行し、カッコたる地位を築いた芸人です。長続きの秘訣はまさに「他人をこき下ろす毒舌」にこそあるのです。なぜ長続きかと言えば、“こき下ろす”対象が次々変わり際限なく続くからに他なりません。私はこれを「レバレッジお笑い芸」と呼んでいます。

「レバレッジ」＝「テコの原理」。他人の力を借りて、自分をより大きく見せる訳です。毒舌ではない「レバレッジ」の代表格はタモリ。素人相手の「レバレッジ」芸はさんまです。「レバレッジ」は瞬時の判断を要するので、ある意味、お笑いに関する「天才的な回転の良さ」が必要なのは事実ですが、「センス」とは一線を隔すものです。「頭のいいお笑い」と言ってもいいでしょう。「ダウンタウン」や「爆笑問題」も最近は、松本人志、太田光の芸風中心に「レバレッジ」に移行しています。

では「センスある笑い」とは何か？とにかく基本に凡人離れした「発想」があり、かつその上で秘かに「計算」もされた芸風です。これぞ天性の「笑いの思想」＝「笑いのセンス」なのです。具体的には誰か？まず確実に名前を挙げられるのは、「さまぁ～ず」大竹一樹。芸風を変えることなく、次々繰り出される脈絡のないギャグや受け答えはまさに「センス」の塊。彼の「笑いのセンス」を知る例として、単なるコミックバンドに終わらせない音楽ネタ「マイナスターズ」はその極致でしょう。今も「レバレッジ芸風」へ移行せず、「センス」一辺倒で笑いの王道を歩んでいる印象です。

今一人、このところブレイク気味の「センス」芸人が「なべあつ」こと渡辺鐘（わたなべあつむ）です。この人の芸「3の倍数と3の付く数字だけアホになり、5の倍数だけ犬っぽくなります」って見たことあると思います。その「笑い」の発想そのものに、とてつもない「センス」を感じませんか。この類の「笑い」ってものすごく思いつきっぽくありながら、考えてみると実はよく計算されたものでもあると思えます。私は先の「さまぁ～ず」大竹とも共通するこの手の作られた笑いの構造こそ、「思いつき」＋「計算」＝「センスある笑い」と定義しております。

「なべあつ」は、“ぽっと出”ではなく芸歴は古く、ピン芸の他にお笑いコンビ「ジャリズム」のボケ役もこなし、さらには「笑っていいとも！」「アメトーク」などの構成作家も務めています。まさに「センス」を活かした多彩な「笑いの仕掛け人」なのです。

今日のお話、なんとなくお分りいただけますか。
お分かりいただけない方は、動画をご覧いただき、「笑いのセンス」を実感していただければと思います。コメント欄よりどうぞ。