日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ23 ~ 嫌な仕事振るべからず

2008-03-19 | 経営
前回は「社長のコミュニケーションは委譲するべからず」をお話しました。その関連で、社長が人に委譲してはいけないことシリーズです。

どんな立場やどんな業種でも、「嫌な仕事」は必ずあります。嫌な相手へのお願い事、重大なトラブル処理、社内組織維持に関わる人事処分の通告…、矢面に立つ仕事はできることなら自分でやらずに部下に押しつけたい、そう思うことってありますよね。上下力関係を使って、部下に押しつけちゃっていいものでしょうか?もちろん誰が考えても社長が出るような問題じゃない、というケースは除いての話です。

いろいろな会社のトラブル発生時に、端で見ていても社長が言えば、または社長が出れば、一発解決なのになぁ、と思うことって多々ありますね。トラブル発生時に自分は動かず、下に指示したがために余計に大事になったことってありませんか?それは、組織の責任分担ルール通りでないイレギュラー対応をしたがための、二次災害発生と言える現象です。社長に限らず、部長なり課長なりの部下を持つ人に発生しがちな誤った組織内行動であります。

なぜ自分で解決に乗り出さず、部下に押しつけようとするのでしょうか。もちろん端的には「自分が嫌な思いをしたくなく、かつ押しつけ可能な地位にいる」からですが、実際に押しつけ行動を起こしてしまう人は、ご自身の責任役割を正確にお分かりじゃないから、それに尽きます。社長でも、部長でも、課長でも、それぞれのポジションに従って偉くなることは、「平時の仕事は部下に任せてよい権限が与えられるとともに、有事(イレギュラー)の仕事は自分で対応しなくてはいけない責任が生まれる」と理解しなくてはいけません。有事の仕事も平時の仕事と同様に、部下に振ってしまう人は立場上の責任を回避していることになるのです。それでは職務失格です。

例えば大企業でも重大な不祥事発生時に、謝罪会見に社長が出ないで№2の専務が出たりすると、社長は見事に袋叩きですよね。謝罪会見を大々的にテレビで流されたりすることを想像すると、出るのは誰でも嫌です。だからと言って「専務頼むよ」では、世論は「社長は責任を分かってないのかぁ!」となる訳です。中小企業でも、全くそれと同じです。つまり、「嫌なこと」は大抵イレギュラーであるという意味では「有事」です。すなわち、やるのが「嫌だなぁ」と思ったことは、自分で直接言うなり手を下すなりしなくてはいけないと考えて間違いないのです。

上に行けば行くほど、責任が重くなるのでイレギュラーな仕事の嫌な度合いは益々増してくるわけです。でも仕方ありません。課長より部長、部長より社長は責任が重いのですから。嫌なことは、部下に振ることなく率先して自分でカタをつけてください。それでこそはじめて、「頼れる社長」として社員一同の信頼が得られ、本当の意味で会社をまとめることができるのです。

創業者は責任感も強く、「俺がやらねば」の気持が強いので大抵は「俺に任せろ」的な対応が得意です。問題は、二代目、三代目とサラリーマン社長ですね。まずは意識して、嫌だと思ったことを振らずに自ら動いてください。社長が社員から、信頼と尊敬の念を持って“オヤジ”と呼ばれる所以はそこにこそあるのですから。