日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「ラジコン・ヘリ」に「たいやきくん」~賑わう?“中間管理職悲哀市場”

2008-03-13 | マーケティング
ラジコンのミニ・ヘリコプターが、思わぬヒット商品として巷をにぎわしています。

従来は動力にエンジンを使用する重厚長大な機種が主流で、価格は最低で数万円以上。いざ飛ばそうにも広い空間が必要でした。しかし、この数年で電動ラジコンが普及するとともに、小型化・低価格化が一気に進み、「室内向け」「インドア」を謳うものが増えています。

売れ筋は、手の平に乗るサイズのヘリコプターで、1万円以下が主流。安いものでは2~3千円台のものあって、昨秋以降各社がこぞって商品化し、テレビ番組などで紹介されたことをキッカケとして、「予想を上回る大ヒット商品」(ラジコンメーカー)になっているのです。

少子化などの影響で、子供向け玩具マーケットは将来性も含め縮小傾向にあり、業界の再編が進んでいます。ラジコン玩具市場も低迷傾向で、業界大手の老舗企業「タイヨー」が、昨年2月にセガトイズに売却され再出発するなど厳しい状況の中、小型ラジコンヘリが思わぬ大ヒット商品になったのです。

この商品、企画段階では中高校生向けの手軽な入門機という位置づけだったと聞きます。ところがフタを開けてみると、主な購入者は「圧倒的に30~40代の男性」とか。なるほど子供の頃、ラジコン玩具でも特に空を飛ぶヘリコプターは“高嶺の花”でした(確かに高価なおもちゃで、本当の金持ちの子供しか買えなかったですよね。ヘリを飛ばせる広い庭も必要でしたし・・・)。「俺も一度飛ばしてみたかったぁ」という思いで、おじさんたちが買いに走ったというのも事実でしょう。マスコミ等でも、おじさんたちの「積年の思い実現」が生んだヒット商品、と報道されています。

このヒット商品を分析していくと、マーケティング的にみて役立ちそうなもうひとつの「消費者心理」が見え隠れしています。それは、主な購入層である30~40代の男性諸氏が置かれている環境にヒントがあります。「30~40代の男性」といえば、組織内ではまさに「中間管理職」真っ只中。上からは押さえつけられ、下からは突き上げられて・・・。加えて最近では、「能力給制度」だとか「業績連動評価」だとか、大人しくしていては貰うものも貰えず、「こんな思いをするなら、いっそ外に飛び出すか!」と考える年代でもあります。

ここまで言えばお分かりですね。そうです。ラジコン・ヘリは、普段から上から下から“操縦”される自分からの「脱却」であり、自身の「操縦願望」「飛び出し願望」を実現してくれるおもちゃなのです。これが何十万もするものであれば、おいそれと手が出せるものではありませんが、数千円から「操縦」や「飛び出し」が体験できるのですから、「パパのお小遣い」でも十分に実現が可能になったと言うわけです。

似たような消費者心理で、現在ヒットの兆しが出始めているものに、「およげ!たいやきくん」CDがあります。過去に92年と99年にもCD化されたことのあるこの曲ですが、今回は3月5日に再発売されて(アニメDVD付とか)、いきなりオリコンの30位台に飛び込むヒットとなっています。

「およげ!たいやきくん」と言えば、日本レコード界最大のヒット曲であり、昭和の「サラリーマン哀歌」でもありあました。たいやき屋のおやじと喧嘩して海に逃げ込む「たいやきくん」の大ヒットに、組織で苦労する自分を重ねて見た「中間管理職層」の“思い”がみてとれます。

「たいやきくん」のヒットは、昭和50年。「オイルショック」が高度成長に終止符を投げかけた直後でもあり、「上から下からいじられて、働けど先行きの夢はおぼろな中間管理職」の悲哀が出た時期でありました。92年や99年のCD化の時でなく、3度目のCD化の今ヒットの兆しが出ていることは、小型ラジコンヘリ同様現在の「中間管理職層」の置かれた環境と無縁とは思えません。

まだまだ懐が深そうな「30~40台男性」の「飛び出し願望」マーケット。次なるヒット商品として何が登場するのか、興味津々です。弊社も一丁考えますかな。