日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

日銀総裁人事、財務官僚の非常識な「既得権」ポストへの執着心

2008-03-18 | ニュース雑感
日銀総裁人事がもめにもめています。

現在の福井総裁の後任人事として、政府がまず提示をしたのが、武藤敏郎副総裁の昇格でありました。この人事に噛み付いた民主党が問題視したのは、武藤氏が元大蔵・財務事務次官経験者であった点。「金融と財政の分離原則が確保されない」というのが表向きの理由でした。

元財務事務次官が日銀総裁に就任した場合に、日銀の独立性に本当に問題があるのかは、そんなに神経を尖らせる問題?という感じもしなくはありません。おそらく、表に出ない部分にある小沢=民主党の本音は、「財務省にいいように操られ、実質の天下りポスト確保を容認している政府自民党の体たらくを、許さん」といったところではないでしょうか。元自民党幹部の小沢氏ならではの、勝手知ったる自民党のお家事情を鋭く突いた、ある種の“意地悪”戦略であった訳です。

とまぁここまでは、私も静観しておりましたが、問題は第2ラウンドに起きました。

第1ラウンド、武藤氏はあえなく参院で否決され、やむなく政府は福井総裁任期切れ前に、これに変わる新人事を用意して一件落着かと思われた本日、第2ラウンドで繰り出された後任人事は、またしても元大蔵事務次官の田波耕治氏という、思わず耳を疑う大胆不敵なものでした。

大胆不敵なのは、本件に実権なしと思しき政府自民党ではなく、実質的人事権を握る財務省サイドのことです。武藤氏案にノーを突きつけられていながら、急激な円高進行という緊急事態下の総裁任期時間切れギリギリの段階で、大胆極まりない“強姦人事”を画策し、元大蔵事務次官経験者の田波氏で逃げ切りをはかった訳です(「しめた!」とばかりに、総裁候補を引き受けた田波氏のずうずうしさには、官僚の非常識がハッキリと見て取れます)。

官僚の「既得権確保」に向けた執念たるや、毎度のことですが恐ろしいほどのものがあります。今回も、財務省(旧大蔵省)にとっては、最大の天下り既得権ポストといえる日銀総裁です。そもそも、予算案の強行採決や総裁人事案提出の遅れを根に持ったと思しき今回の民主党の“反乱”は、政府自民党の失策であり財務省には関係ない、とでもタカをくくったのでしょう。元財務事次官を断られた直後に、再度別の元財務(大蔵)事務次官を提示するのですから、官僚の非常識と思い上がりここに極まれり、という以外にありません。

「官」の中の「官」たる財務省の、この「既得権」に当たり前の如く執着する様は、まさに日本国の「官」の悪癖の象徴です。民主党の再度の反対姿勢を耳にした福田首相をして、「この難しい時期に他に誰がいますか」などと言わしめる始末。最大の侮辱を受けた日銀の幹部社員たちは、声を大にして「バカにするのするのもいい加減にしろ!」と言って欲しいものです。

この不安定な為替状況下にもかかわらず日銀総裁ポストの空席化は、もはや避けられない情勢です。私にとって次期日銀総裁に誰がなるのかは、どうでもいいことですが、ただひとつこの機会に・・・。国民をなめくさった代替人事案を出してきた財務官僚に対して、その分厚い面の皮を少しでも削り取るぐらいの世論の批判を大量に浴びせ、彼らのエリート意識に起因する思い上がりの誤りとあきれ返るほどの非常識さを、しっかりと認識させてやりたいものだと感じております。