温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

パソロブレス市 リバーオークス温泉 River Oaks Hot Springs

2017年10月20日 | アメリカ

前回に引き続いてカリフォルニア州パソロブレスの温泉を巡ります。前回の「フランクリン温泉」は質素で長閑な施設でしたが、今回は小綺麗なスパ施設です。丘の上に広がる郊外の住宅地やゴルフ場の脇を抜けると、やがて目的地である「リバーオークス温泉」(River Oaks Hot Springs)に到着しました。


 
ゴルフ場から続く敷地はしっかり刈られた芝生で綺麗に整備されており、建物のまわりにはバラなどの花々で彩られていました。そして周囲の丘はワイン生産用のブドウ畑が広がっていました。


   
芝生広場の中に源泉施設と思しきものを発見。おそらくここからお湯がお風呂へ引かれているのでしょう。前々回記事の「シカモア温泉」や前回記事の「フランクリン温泉」と同様、ここも石油を掘削しようとしたら温泉が湧いちゃったんだとか。
ブドウ畑の手前の斜面では、この画像ではちょっと判別しにくいのですが、木々に隠れる形で、個室風呂の小屋が立ち並んでいました。なお今回はこの個室は利用していません。


 
さて、バラに囲まれたレセプション棟に入り、入浴したい旨を伝えると、目の前のラウンジでしばらく待つように指示され、やがて利用可能であると返答をもらいました。お風呂の数が少ないので、本来は予約をしておくべきなのですが、私は予約なしの飛び込みで伺ってしまったため、確認や準備のためのちょっと時間を要したのでした。もしここで温泉入浴を希望する場合は、予約しておくことをおすすめします。入浴料金と貸タオルの代金(オプション)を支払って中へ進みます。


 
今回案内されたのは廊下を突き進んだ一番奥の6号室でした。このスパではお風呂のほか、マッサージルームや各種セラピーを施術する部屋もあり、この白い廊下には目的に応じた部屋が並んでいるようでした。


 
廊下のドアを開けて飛び込んできた光景が左or上の画像です。浴室とはいえ半露天状態であり、丘からのそよ風がウッディーなお風呂へ入りこんでくる実に爽やかな環境です。梢の先で囀る小鳥たちの鳴き声が心地良いBGM。こんな快適なお風呂を独り占めできるのですから、幸せこの上ありません。台に上がって外の景色を眺めたところが右or下の画像。木々の向こうにブドウ畑が広がっています。まるで自分が油絵の世界に溶け込んでしまったかのような感覚に陥りました。


 
テーブルや腰掛が置かれているそばの壁には、アメリカらしい大きな注意書きが掲示されており、お風呂のキャパは6人、ライフガードはいない、飛び込み禁止、といった内容が記されていました。なおこの浴室にはシャワーがなく、石鹸類やシャンプーなどの使用も禁止されていますので、体や髪を洗う際には別室のシャワーを利用しましょう。
入室時、FRP製のバスタブではジャグジー稼働中でした。これもまたアメリカらしいところなのかもしれません。注意書きにはキャパが6人であると記されていたものの、その人数はあくまで室内の数値であり、バスタブ自体の容量は2~3人です。


 
バルブ付きの配管から温泉が吐出されており、その温度は49.3℃という結構な高温でした。源泉そのままなのか、あるいは加温されているのかは不明です。湯口のお湯をテイスティングしてみますと、フランクリン温泉と似たようなアブラ臭を伴う強いイオウ臭が香り、タマゴ味と弱い苦味が感じられました。


 
湯船の温度は38.4℃で、pH8.95というアルカリ性。この日はやや肌寒く、40℃以上のお風呂に入りたかったものですから、湯口のバルブを開けてお湯を継ぎ足させてもらいました。湯口では述のような香りがはっきり漂っていたものの、湯船では急激に弱くなり、ほんの僅かに漂っている程度でした。でもpH8.95という数値は伊達ではなく、湯中ではまるでローションに浸かっているかのようなヌルヌル感を伴う大変滑らかなツルスベ浴感が得られました。常住のようにこの施設ではアロマセラピーや各種エステの施術を行っていますが、このお湯はまさに美人の湯ですから、入浴するだけでもそれなりの効果が得られるかもしれませんよ。


 
室内をよく探したらジャグジーの操作パネルがあったので、その運転を止めてみたところ、静かになった浴槽のお湯は、透明ながらオリーブの実のようなグリーンを帯びているように見えました。右or下画像は湯加減を調整したバスタブでのんびり入浴している私です。貸切ですから水着は不要。清々しいロケーションのもと、実質的な露天風呂で大きなバスタブを独り占めできるのですから、文句の言いようがありません。大変素晴らしい湯浴みが楽しめ、制限時間の1時間があっという間でした。



GPS 35.655233, -120.683626,

800 Clubhouse Drive Paso Robles, CA
805-238-4600
ホームページ

9:00~21:00 月曜定休
火曜~木曜→15ドル(1人・1時間)、金・土・日→18ドル(1人・1時間)

私の好み:★★+0.5
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パソロブレス市 フランクリン温泉 Franklin Hot Springs

2017年10月18日 | アメリカ

カリフォルニア州サンルイスオビスポ郡の都市パソロブレス(Paso Robles)は、人口増加が目覚ましい発展中の街ですが、住宅街からちょっと郊外へ離れると、果てしなく続く丘にワイン用のぶどう畑や牧草地が延々と広がっています。そんな長閑な丘の中を車で走っていると・・・


 
道路沿いに水を湛える用水池と遭遇。この池の前に立っている看板には"Franklin Hotsprings"と手書きされていました。もうおわかりかと思いますが、この「フランクリン温泉」が今回の目的地なのです。途中に案内標識のようなものはないので、もしGPSが無かったら辿り着けなかったかもしれません。


 
前回記事の「シカモア・ミネラルスプリング・リゾート」は、そこそこの価格帯に属するリゾートホテルでしたが、今回の「フランクリン温泉」は、リゾートとは正反対の価値観で営業している素朴な温泉入浴施設。池畔にちょこんと建つこの掘っ建て小屋が受付なのです。



ちなみに敷地の奥はキャンピングカーの駐車場になっており、自分の車で寝泊まりしながらここでしばらく滞在する旅人もいらっしゃいました。


 
私の訪問時、小屋の内部には誰もいませんでした。雑然とした室内にはたくさんの張り紙が掲示されているほか、ライフジャケットやフロートなどが出っ張りへ無造作に引っかけられていました。後述する温泉プールへ入る際、子供や泳ぎに自信がない人は、各自でこれを装着してね、ということなのでしょう。



壁に括りつけられている料金箱へセルフで料金の7ドルを投入。


 
小屋から反対側へ出ると、大きなプールがお湯を湛えていました。上画像が温泉プールの全景です。プールの大きさは(目測で)15m×30mはあるでしょう。果てしなく広がる丘の真ん中にぽつんと佇んでおり、周囲にはこれといった人工物が無いため、非常に開放的です。広い空ではヒバリが囀りながら飛び交っていました。


 
左or上画像はプール側から受付小屋を見たところ。いかに素朴で質素な施設であるかがおわかりいただけるかと思います。ちょうど小屋前のプールには黒いネットが屋根代わりに張られており、その直下には、まるでタコの足のように複数本のパイプが伸びた温泉吐出口が立ち上がっています。訪問時、この吐出口の下ではオジサンが頭からお湯を浴びながら、気持ちよさそうな表情を浮かべていました。洋の東西を問わず、頭から温泉を被る行為は人間に快楽をもたらすのですね。ちなみにプールサイドには少々の硫黄臭が漂っているのですが、詳しくはまた後程。



この温泉プールは男女共用で水着の着用が必要です。プールサイドに建てられたトイレ兼更衣室で着替えます。2室しかないので、もし混んでいたら、譲り合いながら使いましょう。


 
プールの水温は33.8℃でpH8.86。ちょっとぬるいので、一度お湯に入るとなかなか出られません。特にこの日は冷たい風が吹いていたので(おそらく外気温は12~3℃だったはず、プールから上がった直後には寒さで身震いしてしまいました。一方、pHの数値からも想像できるように、このお湯はとっても滑らか。ヌルヌルを伴うツルスベ浴感がかなり強く、湯中では何度も自分の肌を擦って、その滑らかさを楽しませてもらいました。


 
ポンプで汲み上げられたと思しきお湯は、武骨な姿をした複数のパイプを通じてプールへドバドバ大量に落とされていました。ひとつの鉄の塊から脚のようにいくつも伸びる吐出パイプの姿はあたかも地球外生物のようであり、そもそも色に緑や白といった温泉由来の色がこびりついているため、余計に一種独特な雰囲気を醸し出していました。
なお吐出口における温泉の温度は36.8℃。プールのお湯はモスグリーンに濁って見えますが、吐出される新鮮なお湯は無色透明であり、少々のアブラ臭を伴う濃厚なタマゴ臭が嗅ぎ取れ、タマゴ味と苦味が感じられました。


 
左or上画像は吐出口近くで浴感の良さに感動している私。右or下画像は、そんな私の目線でプールを眺めた様子です。体格が大きなアメリカ人向けに作られているためか、プールは基本的にやや深い造りなのですが、この吐出口まわりならば、身長165cmの私でも立っていられるほどの深さに抑えられていました。また底には泥が溜まっているのですが、その泥を顔に塗っている人もいました。果たしてその効果は不明。


 
プールは湯尻に向かってどんどん深くなるので、私は立ち泳ぎをしないとここまで行けません。プールの温泉は全量がこの湯尻から隣接する池へと流れ込んでいました。つまり完全掛け流しです。


 
私が比較的浅い温泉投入口付近で湯あみをしていると、湯尻の方からカモのツガイが悠然と湯面を泳いでくるではありませんか。その近くのプールサイドには、棒状のカラフルなチューブがたくさん用意されていたので・・・


 
私はチューブを4~5本ほど抱えながら、カモをイメージしてプカプカ浮かんでみました。うひゃ、気持ち良い。最高ですね。時間を忘れ、いつまでもお湯に浮いていたくなります。



湯尻付近のバラが咲く池畔に何かを発見。


 
それはコンクリで造られた丸いバスタブでした。ここにも温泉が供給されており、お湯が淀みやすい大きなプールと違って、入れ替わりが早いこのバスタブのお湯は透明度が高く、また湯加減も若干高め(36℃くらい)。池に向かって視界が開けているので、池や対岸の丘を眺めながらのんびり入浴することができました。お湯は綺麗で温かいし、眺めは良いし、とっても静か・・・素晴らしい湯浴みを堪能させていただきました。

前回取り上げたシカモア温泉と同様に、この温泉も石油を掘ろうとして発見されたんだとか。それゆえ、お湯が放つタマゴ臭にはほんのりとしたアブラ臭が含まれていたのでしょう。何らの装飾性がない鄙びた田舎の質素な温泉プールですが、個人的には非常に気に入り、予定を大幅に超える時間をここで過ごしてしまいました。おすすめ。



GPS 35.587817, -120.642147,

3015 Creston Road Paso Robles, CA
805-712-5372
ホームページ

月曜から木曜→8:00~22:00、金・土・日→8:00~24:00
7ドル
備品類なし

私の好み:★★★

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シカモア・ミネラルスプリングス・リゾート Sycamore Mineral Springs resort 後編

2017年10月16日 | アメリカ
この記事は前編の続編です。

●プールやプライベートバス
 
前回記事では客室のテラスにあるバスタブでフレッシュな温泉入浴を堪能しましたが、続いて取り上げるのは、料金を支払えば誰でも利用できるプールやプライベートバスです。いずれも、駐車場の奥に位置する「トリートメントセンター」(ギフトショップ併設)が受付窓口になっています。



こちらがプール。せっかくゆったり時間が流れるリゾートに泊まったのですから、できれば優雅に泳ぎたかったのですが、ここには1泊しか滞在せず、しかも時間に余裕がなかったため、残念ながらプールを利用することはありませんでした。


 
このプールから続く斜面の木立の中にプライベートバスが点在しています。その数はなんと22! 大小さまざまなサイズが用意されていますから、利用人数に応じて使い分けられるものと思われます。なお宿泊客は通常料金の半額で利用可能とのこと。いずれのプールも木立と一体化していて、周囲の環境に溶け込んでいますね。


 
プライベートバスのひとつを見学させてもらいました。目隠しの衝立に囲まれる形でジャグジー付きのバスタブがあり、お客さんがいないときでもお湯が張られてジャグジーが稼働しているのですが、前編で紹介した客室テラスのバスタブみたいな強いアブラ臭は漂っておらず、その代わり我々にとっては非常に忌まわしきカルキ臭がプンプン放たれてしていました。常時お湯が張られているということは循環も行われているのでしょう。外来客はこのバスタブを利用するわけですが、このお湯ではクオリティに厳しい日本の温泉ファンを喜ばすことは難しいかも。かく言う私もカルキ臭に辟易してしまったため、残念ですがここも見学だけにして、利用しませんでした。


●リゾートを出てアヴィラビーチで夕食
 
さて、私は朝食のみのプランで利用したので、夕食はリゾート内のレストランで別料金の食事を摂るか、あるいは外へ出かけて自分でレストランを見つけることになります。当地はビーチの近くですから、私は海の方へ出かけて、散策がてらお店を探すことにしました。車ですと数分でアヴィラビーチに到着。風のない晴天だったこの日、砂浜の向こうに広がる海原は波が穏やかでとても静か。沖ではたくさんのヨットが浮かんでいました。


 
アヴィラビーチの海沿いには飲食店が立ち並ぶ一角があります。


 
ビーチを臨むお店の中でも一番賑わっていたレストランに入り、穏やかな潮風を受けながらディナーをいただくことに。この時注文したのは、マヒマヒのグリルとクラムチャウダー。ハワイの料理がお好きな方なら言わずもがなですが、マヒマヒとはシイラのこと。いずれも美味しかったですよ。


 
食後は桟橋や砂浜を散歩して、日が暮れるまで腹ごなし。目の前の海をながれるカリフォルニア海流は寒流ですから、海風は冷たく、思わず持参していた長袖を羽織ってしまいました。桟橋に取り付けられた説明プレートによれば、この海岸には海獣の類が出没するようですが、残念ながらこの時には姿を見せてくれませんでした。でも景色は良いので、ぼんやりと海を眺めるだけでも心が落ち着きます。


●リゾート内のレストランで朝食
 
翌朝の朝食は、レセプションがある建物の奥にあるレストランでいただきました。こちらは今回利用した宿泊プランの料金に含まれています。ひとつのお皿に載せられたオーソドックスな内容であり、普通に注文しちゃうと20ドル弱もするようですが、当然ながら調理方法は選べますし、なにしろ店内の雰囲気が良いので、トータル的に考えれば納得できるかと思います。

前編の記事で申し上げたように、こちらのリゾートは客室テラスのバスタブに引かれた温泉が素晴らしいので、もしここで温泉に入るのでしたら、宿泊すれば間違いのない湯浴みを楽しめるはずです。また、今回の記事では紹介しておりませんが、マッサージやエステなどのサービスも充実しているので、スパリゾートとしての利用価値も高いかと思われます。アメリカ西海岸の温泉めぐり旅は、1湯目から素晴らしいお湯に巡り会えました。



GPS 35.186086, -120.712527,

1215 Avila Beach Drive, San Luis Obispo, CA
(805) 595-7302
ホームページ

日帰り入浴に関しては公式サイトでご確認ください

私の好み:★★★
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シカモア・ミネラルスプリングス・リゾート Sycamore Mineral Springs resort 前編(客室のお風呂)

2017年10月14日 | アメリカ
今回から連続して、アメリカ・カリフォルニア州の温泉を連続して取り上げます。
「アメリカに温泉なんてあるの?」なんていうお話をよく耳にしますが、アメリカの西海岸は日本列島と同じ環太平洋火山帯ですから、温泉資源にも恵まれており、温泉を活かしたリゾートホテルから野趣溢れる野湯まで、様々なスタイルの温泉を楽しむことができます。
2017年初夏にロサンゼルスへ降り立った私は、空港でレンタカーを借り、ロサンゼルスとサンフランシスコの中間地点に位置するカリフォルニア州の都市サンルイス・オビスポ方面へ向かいました。まず私が目指したのは、客室で温泉に入れるリゾートホテル「シカモア・ミネラルスプリングス・リゾート」です。


 
ロサンゼルスから太平洋に沿って伸びるハイウェイ101号を北上。途中でアムトラックの列車を追い抜かしつつ、ひたすらドライブを続けること4時間弱。サンルイス・オビスポ手前のアヴィラビーチでハイウェイを下ります。



ハイウェイのランプからすぐに、目的地である「シカモア・ミネラルスプリングス・リゾート」へ到着しました。


 
森に抱かれたリゾートの敷地は大変広く、客室を擁する建物も複数あるのですが、まずはレセプションでチェックインを済ませ、宿泊に関する説明を受けます。


 
グレードに応じていろいろな種類の客室があり、その全てに温泉のお風呂が付帯しているというのですから、温泉が好きな人間にとっては堪りません。敷地内に建つ各客室棟は、アパートメントタイプからコテージタイプまで様々ですが、いずれも周囲の木立とうまく調和しており、建物がまるで木々の中に隠れているかのように佇んでいます。
今回私に宛がわれた部屋は、お風呂付きのお部屋が集まる棟のひとつ"Adventure Building"の2階にある"Gentle"という名前の一室です。こちらでは、部屋番号の代わりに名前が付けられているのですが、きっと私の性格が仏のように優しく穏やかであることを見越して、この部屋が宛がわれたのでしょう(なんてね)。


 
室内は若干古いのですが、広くて綺麗に維持されており、備品類もひと通り揃っていて、快適に過ごすことができました。ちなみにこの部屋の料金は、朝食付きで税金含めて約250ドルでした。


 
シャワールームも綺麗なのですが、アメニティは普通のホテルと大して変らず、ちょっと拍子抜け。その一方で、メイク落としなどが用意されている点は、女性客重視なのかもしれません。なお室内にバスタブは無いのですが・・・



テラスに出ると2人サイズのFRP製のバスタブが据え付けられており、ここで温泉入浴をすることができるのです。


 
バスタブの上には注意書きが2枚掲出されていました。ひとつには、温泉の利用可能時間と温泉を吐出および排出方法が説明されており、テラスのお風呂に入れるのは朝7時から夜の23時までと決められています。これは23時以降の深夜時間帯が"Quiet hours"として音を立てず静かに過ごすことが推奨されているためです。また石鹸やシャンプーの類の使用も禁止されていますから、バスタブに入る前には予めお部屋のシャワーで体の汗を流しておいた方が良いでしょう。
もうひとつには、温泉入浴に関する注意が記されており、「老人や妊婦などは医師の助言を得て」などといった各人の健康上の都合を理由とした入浴の適不適が箇条書きにされていました。


 
お湯を出すときはバルブを開ければ良いだけ。でもこのバルブを開けた瞬間、私は腰を抜かすほどビックリしてしまいました。開栓してお湯を吐出させた瞬間、温泉由来の強いアブラ臭やイオウ臭が広いテラスへ一気に広がったのです。アメリカへやってきた1湯目から、いきなり強烈な匂いを発する温泉と出会えたことに感激しきり。わざわざ太平洋を越えてきた甲斐がありました。このベランダのバスタブは使う度にお湯を張り替えますので、実質的には掛け流しと同等。お湯の吐出温度は46.6℃というやや高温でした。


 
加水しない湯船の温度は44.4℃。人によっては熱く感じるかもしれませんが、緑の木立から吹き抜けてくる風が気持ちよく、この風で爽快にクールダウンできたため、私はこのままの湯加減で入浴させてもらいました。なおpH値は7.74ですので、ほぼ中性ですね。なおバスタブの容量が大きいためか、お湯が溜まるまでちょっと時間がかかりました。


 
お湯はほぼ無色透明であり湯の花などは見当たらなかったのですが、バスタブに溜まったお湯は若干黄色みを帯びているように見えました。先述のように強い匂いを放つこのお湯を口に含んでみますと、はじめの数秒は「あれ?苦いかな?」という程度なのですが、しばらく経つと口腔奥の粘膜が痺れるような渋さ(苦さ)が感じられ、やがて口全体にその苦味が広がってゆきます。また口に含むことによって匂いがより強く嗅覚を刺激し、イオウ臭というよりペンキの溶剤と表現すべき石油的な匂いが喉から鼻孔にかけてしっかりと残りました。このシカモア温泉はかつて油田開発を目的に掘削したところ湧出した温泉なんだそうですから、石油を思わせる知覚的特徴を有しているのは当然と言えるでしょう。日本にも北陸や東北の日本海側に油田試掘の際に湧いた温泉が見られ、アブラ臭を好む温泉マニアから篤く支持されていますが、それらは得てして塩気が多く、また黄土色や緑色に強く濁る傾向があります。一方、このシカモア温泉は透明度が高くて塩気が無いため、日本の油田由来の温泉とはちょっと毛色が異なり、(あくまで知覚的特徴だけですが)どちらかと言えば岩手県の国見温泉に近いお湯であるような気がします。
そんな能書きはともかく、注ぎたてのお湯はフレッシュそのものですから、掛け値なしで本当に気持ち良い。入浴中にはキシキシと引っかかる浴感が強く得られるとともに、湯上がりにはまるで蝋を塗ったようなシットリ感に包まれ、しばらくは温浴効果が続きます。テラスの前には緑豊かな木立が続き、そこここから小鳥の囀りが聞こえます。素晴らしい環境のもと、フレッシュ且つ個性的な温泉に浸かれる喜び・・・。もう最高です!



バスタブにお湯を張ったまま外出して夜まで放置しておいたら、なんとお湯が白濁していました。日が沈んで冷え込み、それによって懸濁が発生したのでしょう。よく見ると単なる白濁ではなく、若干緑色を帯びているようにも見えます。底が見えないほどはっきりと濁っていますが、でも湯の花は見られませんでした。こうした色の変化は本物の硫黄の温泉ならでは。ビジュアル的にも面白い温泉であることがおわかりいただけたかと思います。

さて次回記事(後編)では、リゾート内にあるプールやプライベートバス、リゾート近くのビーチで食べた夕食、翌朝の朝食(リゾート内)などを取り上げます。

次回(後編)に続く。

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あつみ温泉 かしわ屋旅館

2017年10月12日 | 山形県
 
前回記事に引き続き山形県あつみ温泉でお風呂を巡ります。今回は、朝市広場の斜め前に位置している「かしわ屋旅館」で日帰り入浴した際の記録を書き綴ります。こちらのお宿は創業380年という老舗。破風の屋根が印象的な伝統工法の木造3階建は、歴史を感じさせる堂々たる構えです。玄関で声をかけて日帰り入浴をお願いしますと、快く対応してくださいました。



年代物の木造建築ですが、館内はその古さを味わいとして活かしつつ、時代に合わせた模様替えも行われており、今のニーズにマッチしたサービスを心がけようとする意気込みが伝わってきます。私が訪問したときには、若旦那がわざわざ浴室前まで案内してくださいました。廊下を進んで右へ折れた先に浴場の暖簾が掛かっています。


 
洗面台には昭和レトロを感じさせるタイル張りの洗面台が現役で使われているのですが、壁などの内装はリフォームされており、また洗面台も綺麗に維持されているので、古い旅館ではなく和風アンティークテイストと表現すべき心地の良い空間となっていました。また、単に見た目が改善されているのみならず、タイルの洗面台にはアメニティ類と並んで、お風呂で触れたタオル等を入れるためのビニル袋まで用意されいます。神は細部に宿ると言いますが、このような痒いところに手が届く細かな配慮には頭が下がります。


 
お風呂は男女別の内湯が1室ずつ。タイル張りの室内には、後述する浴槽がひとつ、そして(男湯の場合は)右側に洗い場が配置されており、シャワー付きカランが3基並んでいました。脱衣室同様にお風呂も手入れが行き届いており、気持ち良く入浴することができました。


 
浴槽は逆L字型で、最大寸法で幅約1.8mおよび奥行約2.4m。槽内はスカイブルーのタイル張りで縁はグレーの御影石ですが、ステップはご当地のあつみ杉でつくったもの。木材ならではの質感が、見た目と足の裏に優しい温もりを伝えてくれます。
隅に設置されている湯口の上からは温泉がポコポコと音を立てながら噴き上がっており、お湯は段々に刻まれた湯口の表面を流れながら浴槽へと落ちてゆきます。湯口のお湯はかなり熱く、私が湯船へ入る時も脛にピリッとくる熱さを感じたのですが、浴槽の傍には大きな湯もみ棒が立てかけられており、それでしっかり掻き混ぜることにより、加水することなく快適に入浴できる湯加減まで落ち着きました。もちろん加水することもできますが、いきなり加水せずまずは掻き混ぜてみることをおすすめします。

こちらで使われているお湯は、前回記事で取り上げた「湯之里公衆浴場」と同じ5・6・7号源泉のミックス。湯加減調整のために加水することがあるそうですが、加温循環消毒の無い放流式の湯使いであり、しかも共同浴場のように利用客の出入りが多い訳ではないのでお湯のコンディションが良好です。浴槽のタイルが綺麗であり、また湯鈍りが無いため、無色透明のお湯は大変クリアで湯の花などは見当たりません。湯口にあるコップで飲泉してみますと、出汁のような香りと焦げたような匂いがふんわり放たれ、甘塩味+出汁味+少々焦げたような香ばしさが口の中に広がりました。上述のように湯船への入りしなは脛にピリピリ感が走ったのですが、これは熱さはもちろんのこと、硫酸塩に由来する部分もあったかと思われます。また湯中では食塩泉的なツルスベ浴感が主役であるとともに、腕を擦ると途中で2~3回グリップが効いたのですが、これもまた硫酸塩のしわざではないかと推測されます。食塩泉の滑らかさと硫酸塩泉の頼もしさを併せ持つお湯ですから、入浴中は安らぎが得られる一方で湯上がりは体の芯までしっかり温まり、しかも湯中では全身がまろやかなフィーリングに包まれるので、多少熱くてもついつい長湯したくなってしまいました。

退館時には若旦那ご夫婦が玄関まで見送ってくださり、おかげさまで私の旅の記憶のみならず、あつみ温泉に対する印象もグッと良くなりました。昔ながらのスタイルを今に伝える伝統建築の旅館で、古いものの良さと現代的なニーズを融合させて努力している姿勢を、心から応援したくなります。今回は日帰り入浴のみでしたが、次回は是非宿泊利用してみたいものです。


温海5・6・7号源泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 56.5℃ pH7.3 蒸発残留物2360mg/kg 溶存物質2312mg/kg
Na+:636.2mg, Ca++:174.1mg,
Cl-:876.3mg, SO4--:407.9mg, HCO3-:96.3mg,
HwSiO3:68.4mg,
(平成21年2月13日)
加水あり(源泉温度が高いので水道水を加えて温度調整)
加温循環ろ過消毒なし

JR羽越本線・あつみ温泉駅よりあつみ交通の路線バスで「足湯あんべ湯前」バス停下車すぐ
(時刻などの検索は庄内交通HPを参照)
山形県鶴岡市湯温海甲191  地図
0235-43-2011
ホームページ

日帰り入浴15:00まで(開始時間は調査し忘れ)
500円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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