温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

シカモア・ミネラルスプリングス・リゾート Sycamore Mineral Springs resort 前編(客室のお風呂)

2017年10月14日 | アメリカ
今回から連続して、アメリカ・カリフォルニア州の温泉を連続して取り上げます。
「アメリカに温泉なんてあるの?」なんていうお話をよく耳にしますが、アメリカの西海岸は日本列島と同じ環太平洋火山帯ですから、温泉資源にも恵まれており、温泉を活かしたリゾートホテルから野趣溢れる野湯まで、様々なスタイルの温泉を楽しむことができます。
2017年初夏にロサンゼルスへ降り立った私は、空港でレンタカーを借り、ロサンゼルスとサンフランシスコの中間地点に位置するカリフォルニア州の都市サンルイス・オビスポ方面へ向かいました。まず私が目指したのは、客室で温泉に入れるリゾートホテル「シカモア・ミネラルスプリングス・リゾート」です。


 
ロサンゼルスから太平洋に沿って伸びるハイウェイ101号を北上。途中でアムトラックの列車を追い抜かしつつ、ひたすらドライブを続けること4時間弱。サンルイス・オビスポ手前のアヴィラビーチでハイウェイを下ります。



ハイウェイのランプからすぐに、目的地である「シカモア・ミネラルスプリングス・リゾート」へ到着しました。


 
森に抱かれたリゾートの敷地は大変広く、客室を擁する建物も複数あるのですが、まずはレセプションでチェックインを済ませ、宿泊に関する説明を受けます。


 
グレードに応じていろいろな種類の客室があり、その全てに温泉のお風呂が付帯しているというのですから、温泉が好きな人間にとっては堪りません。敷地内に建つ各客室棟は、アパートメントタイプからコテージタイプまで様々ですが、いずれも周囲の木立とうまく調和しており、建物がまるで木々の中に隠れているかのように佇んでいます。
今回私に宛がわれた部屋は、お風呂付きのお部屋が集まる棟のひとつ"Adventure Building"の2階にある"Gentle"という名前の一室です。こちらでは、部屋番号の代わりに名前が付けられているのですが、きっと私の性格が仏のように優しく穏やかであることを見越して、この部屋が宛がわれたのでしょう(なんてね)。


 
室内は若干古いのですが、広くて綺麗に維持されており、備品類もひと通り揃っていて、快適に過ごすことができました。ちなみにこの部屋の料金は、朝食付きで税金含めて約250ドルでした。


 
シャワールームも綺麗なのですが、アメニティは普通のホテルと大して変らず、ちょっと拍子抜け。その一方で、メイク落としなどが用意されている点は、女性客重視なのかもしれません。なお室内にバスタブは無いのですが・・・



テラスに出ると2人サイズのFRP製のバスタブが据え付けられており、ここで温泉入浴をすることができるのです。


 
バスタブの上には注意書きが2枚掲出されていました。ひとつには、温泉の利用可能時間と温泉を吐出および排出方法が説明されており、テラスのお風呂に入れるのは朝7時から夜の23時までと決められています。これは23時以降の深夜時間帯が"Quiet hours"として音を立てず静かに過ごすことが推奨されているためです。また石鹸やシャンプーの類の使用も禁止されていますから、バスタブに入る前には予めお部屋のシャワーで体の汗を流しておいた方が良いでしょう。
もうひとつには、温泉入浴に関する注意が記されており、「老人や妊婦などは医師の助言を得て」などといった各人の健康上の都合を理由とした入浴の適不適が箇条書きにされていました。


 
お湯を出すときはバルブを開ければ良いだけ。でもこのバルブを開けた瞬間、私は腰を抜かすほどビックリしてしまいました。開栓してお湯を吐出させた瞬間、温泉由来の強いアブラ臭やイオウ臭が広いテラスへ一気に広がったのです。アメリカへやってきた1湯目から、いきなり強烈な匂いを発する温泉と出会えたことに感激しきり。わざわざ太平洋を越えてきた甲斐がありました。このベランダのバスタブは使う度にお湯を張り替えますので、実質的には掛け流しと同等。お湯の吐出温度は46.6℃というやや高温でした。


 
加水しない湯船の温度は44.4℃。人によっては熱く感じるかもしれませんが、緑の木立から吹き抜けてくる風が気持ちよく、この風で爽快にクールダウンできたため、私はこのままの湯加減で入浴させてもらいました。なおpH値は7.74ですので、ほぼ中性ですね。なおバスタブの容量が大きいためか、お湯が溜まるまでちょっと時間がかかりました。


 
お湯はほぼ無色透明であり湯の花などは見当たらなかったのですが、バスタブに溜まったお湯は若干黄色みを帯びているように見えました。先述のように強い匂いを放つこのお湯を口に含んでみますと、はじめの数秒は「あれ?苦いかな?」という程度なのですが、しばらく経つと口腔奥の粘膜が痺れるような渋さ(苦さ)が感じられ、やがて口全体にその苦味が広がってゆきます。また口に含むことによって匂いがより強く嗅覚を刺激し、イオウ臭というよりペンキの溶剤と表現すべき石油的な匂いが喉から鼻孔にかけてしっかりと残りました。このシカモア温泉はかつて油田開発を目的に掘削したところ湧出した温泉なんだそうですから、石油を思わせる知覚的特徴を有しているのは当然と言えるでしょう。日本にも北陸や東北の日本海側に油田試掘の際に湧いた温泉が見られ、アブラ臭を好む温泉マニアから篤く支持されていますが、それらは得てして塩気が多く、また黄土色や緑色に強く濁る傾向があります。一方、このシカモア温泉は透明度が高くて塩気が無いため、日本の油田由来の温泉とはちょっと毛色が異なり、(あくまで知覚的特徴だけですが)どちらかと言えば岩手県の国見温泉に近いお湯であるような気がします。
そんな能書きはともかく、注ぎたてのお湯はフレッシュそのものですから、掛け値なしで本当に気持ち良い。入浴中にはキシキシと引っかかる浴感が強く得られるとともに、湯上がりにはまるで蝋を塗ったようなシットリ感に包まれ、しばらくは温浴効果が続きます。テラスの前には緑豊かな木立が続き、そこここから小鳥の囀りが聞こえます。素晴らしい環境のもと、フレッシュ且つ個性的な温泉に浸かれる喜び・・・。もう最高です!



バスタブにお湯を張ったまま外出して夜まで放置しておいたら、なんとお湯が白濁していました。日が沈んで冷え込み、それによって懸濁が発生したのでしょう。よく見ると単なる白濁ではなく、若干緑色を帯びているようにも見えます。底が見えないほどはっきりと濁っていますが、でも湯の花は見られませんでした。こうした色の変化は本物の硫黄の温泉ならでは。ビジュアル的にも面白い温泉であることがおわかりいただけたかと思います。

さて次回記事(後編)では、リゾート内にあるプールやプライベートバス、リゾート近くのビーチで食べた夕食、翌朝の朝食(リゾート内)などを取り上げます。

次回(後編)に続く。

コメント
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