温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

あつみ温泉 湯之里公衆浴場

2017年10月10日 | 山形県
 
温海川沿いの桜並木が美しい山形県庄内地方のあつみ温泉。


 
歩いて楽しい温泉街を築くべく、平成14年から17年にかけて街の再整備事業が行われ、その一環として温泉街の中に複数の足湯や飲泉場が設けられました。



更には、街中のみならず、なんと橋の上にも飲泉場が設けられたのでした。全国津々浦々に温泉の飲泉場がありますが、橋の上に立地しているところは珍しいかと思います。


 
さて、そんな飲泉場がある橋を渡り、温泉街からちょっと離れて住宅地の方へ進んでゆくと、やがてたどり着くのが「湯之里公衆浴場」です。あつみ温泉の3つある共同浴場の一つですが、朝および12時から利用できる他の浴場と異なり、ここだけは14時から利用可能となりますので、時間に関してはちょっと注意を要します。浴舎は男女別に出入口が分かれており、左が女湯、右が男湯となっています。このあたりは観光客が足を踏み入れるエリアではないため、温泉街再整備の対象にはなっておらず、この共同浴場は地元民向けの飾り気がない佇まいを保っています。


 
共同浴場らしいシンプルな脱衣室。湯銭は室内の棚に固定されている料金入れへ。シンプルとはいえ、地域住民が集う場所ですから、室内にはたくさんの張り紙が掲出されており、地域生活の匂いを醸し出していました。そんな張り紙のひとつが湯仲間募集のお知らせ。年間8000円を納めれば共同浴場利用のフリーパスを入手できるのですね。興味ある方は是非。


 
ローカル色の強い浴場だからか、いくらか年季の入った浴室は実用的で質素な造り。室内の半分以上を浴槽が占め、壁に沿って水道の蛇口が4つ並ぶばかりです。シャワーなんて便利なものはありません。また、この浴場を定期的に利用する湯仲間のみなさんは桶を持参するためか、備え付けの浴槽が少ないので(2〜3個しかありませんでした)、もし車でこの浴場を利用する場合は、自分で桶を持参した方が良いかもしれません。でも、温泉地としての矜持なのか浴槽だけは特徴的であり、U字型の浴槽の縁にはワインレッドの御影石が採用されています。大きさとしては4人サイズでしょうか。

温泉は壁に突き出ている蛇口より投入されており、水栓金具には白い析出がこびりついていました。お湯はここのみならず、U字型の曲線部分の底部からも熱いお湯が出ているのですが・・・



そのお湯は、右側手前に設けられている湯溜まりから、床の下を通って浴槽へ流れ込んでいたのでした。浴室の出入口付近にあるため、私はてっきり掛け湯かと思ったのですが、これがとんでもない大間違い。この細長い槽に張られているお湯は篦棒に熱いのです。そういえば、あつみ温泉にある他の共同浴場(正面湯と下の湯)でも浴室内に小さな湯壷があって、熱い温泉は一旦この湯壺を経由してから浴槽へ供給されていましたっけ。つまり大きさに差異があるとはいえ、この湯之里でも湯壺経由でお湯が注がれているのですね。当地の伝統スタイルなのでしょう。

飛び上がるほど熱いお湯がそのまま注がれているため、私が入室した時の湯船は体感で45〜46℃という高温。でもこのような地元密着型の共同浴場で迂闊に水で薄めると、常連さんから怒られる可能性が高いので、その熱さに耐えながら湯船に入ったものの、せいぜい1分が限界。これは烏の行水で済ませるしかないかと諦めかけていたところ、後から地元の爺様が登場。仏頂面で掛け湯をしはじめたこの爺様も、さすがに熱すぎると感じたらしく、お湯を止めて水道の蛇口を全開にしたので、そのおかげで適温にまで落ち着きました。
この浴場に引かれているお湯は5・6・7号源泉の混合泉。無色透明で薄い塩味が感じられましたが、熱すぎてじっくりテイスティングできず、また加水後はかなり薄まってしまったため知覚的特徴が弱まり、残念ながら温泉が持つ特徴を掴み取ることができませんでした。でも加水しないと湯船に浸かれなかったので致し方ありません。むしろ、お湯の特徴云々なんて考えている私こそこのお風呂では邪道であり、訪問時は先客2人、後客3人が入れ替わり立ち替わりで訪れ、湯に浸かりながら歓談に華を咲かせていました。地元のお年寄りにとっては欠かせない憩いの場なのですね。


温海5・6・7号源泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 56.5℃ pH7.3 蒸発残留物2360mg/kg 溶存物質2312mg/kg
Na+:636.2mg, Ca++:174.1mg,
Cl-:876.3mg, SO4--:407.9mg, HCO3-:96.3mg,
(平成21年2月13日)

JR羽越本線・あつみ温泉駅よりあつみ交通の路線バスで「あつみ観光協会前」バス停下車、徒歩3分
(時刻などの検索は庄内交通HPを参照)
山形県鶴岡市湯温海字湯之里  地図

14:00〜23:00
200円
備品類無し

私の好み:★★

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長沼温泉 ぽっぽの湯

2017年10月08日 | 山形県
 
庄内平野の広大な水田に白鳥が飛来してきた秋の某日。白鳥とは程遠いフォアグラのガチョウみたいな体格をした私も庄内平野へとやってまいりました。


 
私がこの地へやってきた目的は、白鳥のように餌を啄むためではなく、長閑な田園地帯にある長沼温泉「ぽっぽの湯」で塩気の強い温泉に入浴するためです。



天井が高い館内には温泉浴場の他、食堂や農産物直売所が併設されており、午前中から地元のお年寄りたちで大いに賑わっていました。券売機で料金を支払い、受付カウンターの右手から浴場へと向かいます。


 
廊下の途中には、温泉マニアとしては見逃せない案内が掲示されていました。それによれば、こちらの施設では2つの源泉を使っているほか、浴場の造りも洋風と和風の2種類に分かれており、奇数日は洋風が女湯で和風が男湯、偶数日はその逆となるんだそうです。この日は偶数日であったため、私が潜るべき紺色の暖簾は洋風風呂の入り口に掛かっていました。


 
広い内湯は天井が高くて窓も大きいため、明るくて開放的です。また湯気篭りも少ないため快適な入浴環境が保たれていました。この日は曇っていたため、遠方の眺望は得られませんでしたが、晴れていれば洋風浴場からは月山が、和風浴場からは鳥海山が望めるんだそうです。浴場内には2つの浴槽と、サウナおよび水風呂が一つずつ設けられており、特に2つの浴槽は大きな窓に面しているため、湯あみをしながら山を含めた長閑な田園風景を眺めることができます。
洗い場にはシャワー付きカランが計10基並んでいるのですが、どうやらこのシャワーから出るお湯には後述する3号泉が使われているんだとか。そのことを知ったのは帰宅した後のこと。実際にシャワーを浴びている時には全く気付きませんでした。


 
とても大きな主浴槽では、石材で造られた2羽のハトの湯口からお湯が注がれていました。「ぽっぽの湯」だからハトなのかな。この主浴槽は3号源泉の単独使用。淡いべっこう色を帯びたお湯で、あっさりとしたクセの少ない単純泉です。この槽内ではジェットバスやジャグジーがブクブクと稼働しており、オーバーフローも見られるのですが、浴槽内で循環ろ過が行われているようでした。
なおサウナの傍に設置されている水風呂でも、3号泉が使われており、源泉に水道水を加えた上で供用されているのですが、あまりに冷たすぎたため、私は入れませんでした。


 

その隣にある4人サイズの小さな副浴槽は、マニア的には白眉の存在。2号泉と3号泉がミックスされて注がれており、オゾン消毒以外は何も手が加えれていない源泉かけ流し。加温されていないので若干ぬるいのですが、それでも源泉100%のお湯は濃厚であり、非常に塩辛く、苦汁のような味も含まれ、アブラ臭とともにヨードのような匂いを発し、コンソメスープみたいな茶色を帯びて弱く濁っている上、チャコールグレーの綿のような湯の花が湯の中で舞っていたり沈殿していたりしていました。同じ山形県の山間部に湧く「りんご温泉」に似ているのですが、おそらく両者ともグリーンタフ由来の温泉であろうと思われます。実際にこの長沼温泉は、昭和24年に帝国石油が油田の試掘中に発見された温泉であり、石油を掘ろうとして温泉が出ちゃった例は、北陸や東北の日本海側に点在しています。
小さいお風呂なのですが、さすが源泉かけ流しは気持ち良いのか、隣に大きな浴槽があるにもかかわらず、みなさん挙ってこの小さな源泉浴槽へ集まっていました。


 
どうやら洋風風呂と和風風呂の違いは、露天風呂の造りにあるらしく、前者はタイル貼りで後者は岩風呂なんだとか。私が利用したのは洋風風呂でしたので、露天風呂はタイル貼りでした。タイルだからと言って洋風であるとは言えず、むしろ平成一桁の日本でよく見られたデザインそのものであり、特に洋風というイメージを惹起するようなストラクチャも見当たらなかったのですが、細かな詮索は野暮ですから、これ以上突っ込むのはやめておきます。
洋風風呂の露天風呂は円弧を描くタイル貼りで、その半分ほどに屋根が掛かっています。私が訪れたときには、屋根からグリーンのネットが張られていたのですが、どうやらこれは冬季になると設置されるらしいので、おそらく雪対策かと思われます。
なお浴槽の傍には小屋があり、その内部には洗い場が設けられているのですが、わざわざ屋外にまで出て体を洗おうとするお客さんはいないのか、誰も使っていませんでした。もっとも、上述のように、洗い場にはシャワーが10基しかありませんので、混雑時には活躍するのかもしれませんね。


 
露天風呂ではドーム状の湯口よりお湯が投入されています。副浴槽(源泉槽)と同じく2号泉と3号泉の混合なのですが、こちらでは循環ろ過が行われているため、湯の花は見られず、ジャスミン茶のような色を帯びているものの比較的高い透明度が保たれていました。その一方、外気によって冷却されるためやや強めに加温されており、内湯よりも熱い湯加減に調整されているのですが(私の体感で43℃前後)、その影響なのかアブラ臭やヨード臭は源泉かけ流しの内湯源泉槽より強く放たれているように感じられました。なお塩辛さや苦味は内湯同様です。塩辛いお湯はすぐに体が火照ってしまうため、私はこの露天風呂で入ったり出たりを繰り返しましたが、暑い夏にはお湯が持つ凶暴性が発揮され、汗が止まらなくなるかと思われます。もっとも、私のようなフォアグラ体質は、むしろその凶暴なお湯に入って、たっぷり発汗した方が良いのかもしれません。

2つの源泉に入れる「ぽっぽの湯」ですが、やはり面白いのは、東北日本海側らしいグリーンタフ由来の塩辛いお湯である2号泉ですね。塩辛さはもちろん、匂いもかなり強く、湯上がり後の私の手からは一日中、アブラ臭が残り続けました。


長沼2号源泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 62.4℃ pH7.6 蒸発残留物24140mg/kg 溶存物質24270mg/kg
Na+:6265mg, Ca++:2745mg, Sr++:37.0mg,
Cl-:15020mg, Br-:54.5mg, I-:6.4mg,
H2SiO3:58.3mg, HBO2:44.4mg,
(平成21年11月25日)

長沼3号源泉
単純温泉 32.2℃ pH8.0 蒸発残留物209.3mg/kg 溶存物質232.0mg/kg
Na+:74.1mg,
Cl-:48.8mg, Br-:0.7mg, HCO3-:100.8mg,
H2SiO3:79.6mg,
(平成21年11月25日)

洋風風呂・和風風呂共通
一般浴槽(主浴槽):3号源泉使用。加水なし、加温・循環ろ過・オゾン消毒あり、
源泉浴槽(副浴槽):2号泉・3号泉混合。加水加温循環なし・3号泉のみオゾン消毒あり(2号泉は消毒なし)、
露天風呂:2号泉・3号泉混合。加水なし・加温循環消毒あり、
水風呂:水道水を5~10%加水、加温なし、循環消毒あり

山形県鶴岡市長沼宮前266-1  地図
0235-64-4126
ホームページ

6:00~22:00
430円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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湯田川温泉 隼人旅館

2017年10月06日 | 山形県
 
2016年晩秋の某日。湯田川温泉の「隼人旅館」で一晩お世話になりました。温泉街のメインストリートに面しており、共同浴場「正面湯」の斜め前に位置しています。


 
 
こちらのお宿は、幕末から明治へ歴史が転換する激動期に、新徴組が一時的な本部を置いたところなんだとか。字は似ていますが、近藤勇や土方歳三の新撰組ではなく、特徴の「徴」の字で新徴組と書きます。両者とも幕末の浪人組であり、新撰組は京都、新徴組は江戸で任に当たったのですが、戊辰戦争の敗北に伴い、庄内藩預かりだった新徴組は江戸から庄内へ引き上げることになり、その当初の住まいの場としてこの湯田川温泉が選ばれたんだそうです。その本部として使われたこちらのお宿の館内には、新徴組に関する各種資料が展示されていました。


●お部屋
 
客室全8室という小規模なお宿ですが、むしろそのこぢんまりとした規模感を活かし、お宿の方は家庭的に接してくださいました。今回私が通されたのは、玄関を上がってすぐ右にある8畳の和室です。一人で泊まるにはもったいないほど広くて快適なこの室内には、エアコンの他、コタツやファンヒーターなどが用意され、夜間の冷え込みに万全な対策がとられていました。また大きなテレビが設置されているほか、室内に洗面台も設けられているため、お風呂とトイレ以外は室外へ出る必要もなく、のんびりと寛ぐことができました。



この時は某大手宿泊予約サイト経由で夕食なし・朝食ありのプランを予約しました。従いまして夕食の際には別の場所に出かけたのですが(具体的には鶴岡市街へ出ました)、朝食はお宿でいただき、指定の時間になると別室へ案内されました。鮭・ひじき煮・おひたし・温泉卵など、日本旅館の朝ごはんらしい胃にやさしい献立でした。


●お風呂
 
さてお風呂へまいりましょう。浴室は玄関の左側。出入口のドア脇には庄内地方の入浴施設でよく見かけるポスターが貼られていました。滝に打たれているお爺さんの右に「身を清めるにもルールあり」というコピーが、左下には「滝行は温度を問わず、入浴は41度」という一文が記されています。これは山形県庄内保健所が作成したもので、熱いお風呂に入って倒れちゃうお年寄りが多いことから、その啓蒙活動として庄内エリアの各入浴施設に掲示されています。滝行を全面に出してくるデザインは、いかにも羽黒三山の地元らしいところ。


 
脱衣室はコンパクトながらも綺麗に維持されており、洗面台にはアメニティ類も用意されていました。とはいえ、そのラインナップは高齢者向きかも。なお衣類や荷物を収める棚は男女で互い違いになっており、これによって限られたスペースの有効活用が図られていました。


 
お風呂は男女別の内湯のみで、旅館と称している割には比較的コンパクトですが、天井が高いため湯気の籠りが少ない上、お手入れが行き届いて綺麗に維持されているので、快適に利用することができました。


 
洗い場にはシャワー付きカランが2基設置されているほか、鏡だけあってカランの無い区画もひとつありました。いずれもスペースに余裕がなく浴槽と接近しているため、私が洗い場を使用した時には、シャワーの飛沫やシャンプーの泡が湯船に入らないよう心がけました。なおカランから出てくるお湯は真湯です。



浴槽は約1.5メートル四方で3~4人サイズ。やや深い造りなので入り応えがあります。縁は一般的な御影石ですが、底面は水色とグレーの豆タイルを用いて花のようなパターンがあしらわれています。タイルの色合いがお湯の透明度をより一層際立たせています。完全掛け流しで湯加減は41℃前後。ポスターのお爺さんもこの湯加減なら文句は言わないでしょう。


 
温泉は白い析出がビッシリとこびりついた湯口より大量に吐出されており、浴槽の縁から惜しげもなく溢れ出ています。私が湯船に入ると一気にオーバーフローし、浴室内は軽い洪水状態となってしまいました。浴槽の容量に対して投入量が多いため、お湯は常にフレッシュであり、浮遊物なども見られず大変クリアです。言わずもがな、湯使いは完全放流式です。
こちらの使用源泉は他のお宿と同じく1号泉なのですが、投入量が多いために温泉が持つ個性がよく現れていました。具体的には匂い・味ともに石膏感がしっかり主張しており、硫酸塩泉らしい引っかかる浴感が得られるのですが、同時に軽やかで優しく、湯船に体を沈めるとまるで羽毛が全身をふんわり包んでくれるような感覚に抱かれるのです。しかも41℃前後という微睡を誘う湯加減ですので、湯船に入ると思わず長湯してしまうこと必至。また、お湯が持つ力も強いため、決して熱くないのに、湯上がりは体の芯までいつまでもホコホコし続けます。それどころか、長湯仕様の湯加減なのに、湯中で体がしっかり温まるので、長湯したくでも体が逆上せて音を上げてしまうでしょう。一見大人しそうに見えながら、実は秘めたるパワーを持っているという、まさに本物の温泉ならではの体験を味わうことができるでしょう。

フレッシュな掛け流しのお湯に浸かって湯田川温泉の実力を体感できる、家庭的でリーズナブルなお宿でした。


湯田川1号泉
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉 42.2℃ pH8.7 溶存物質1169mg/kg
Na+:207.8mg, Ca++:148.0mg,
Cl-:544.4nmg, SO4--:694.8mg, HCO3-:13.1mg,
H2SiO3:40.5mg,
(平成26年7月31日)
消毒あり(衛生管理のため深夜帯の4時間消毒)

鶴岡駅より庄内交通バスの湯田川温泉・坂の下・越沢行で「湯田川温泉」バス停下車すぐ
山形県鶴岡市湯田川乙56  地図
0235-35-3355
ホームページ

日帰り入浴10:00~16:00
500円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★


コメント (2)
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湯田川温泉 田の湯共同浴場

2017年10月04日 | 山形県

引き続き山形県庄内の湯田川温泉を巡ります。当地には2つの共同浴場があり、その一つである「正面湯」は拙ブログで2度ほど取り上げていますが(初回記事はこちら、2回目はこちら)、もうひとつの「田の湯」に関しては今まで取り上げる機会が無かったので、昨年(2016年)秋に訪れた際の様子をレポートさせていただきます。
湯田川の共同浴場はいつも施錠されているので、いきなり現地へ行っても利用することはできません。外来者は温泉街にある指定の商店で湯銭を支払い、お店の方に浴場のカギを開けてもらいます。私は当地ではいつも「船見商店」でお願いしています。


 
田の湯に到着すると、お店の方がドア横のセンサーにカードキーかざして開錠してくれました。なお、旅館の宿泊客は各旅館で共同浴場を利用したいと申し出れば、お宿の方がカギを開けてくれるかと思います。



脱衣室はとても狭く、2~3人同時に利用するだけで窮屈さを覚えます。実際私が入室した時にそのような状況でしたので、「すいません」と声を掛けながら使わせていただきました。


 
小さな浴舎ですから浴室も大変コンパクト。床や側壁下部、そして浴槽はタイル貼りなのですが、壁の上部などはモルタル塗。一応洗い場と思しきスペースがあり、一枚のミラーの前にお湯と水道の蛇口ペアが一組用意されているのですが、お湯の蛇口を開けてもチョロチョロとしか流れてこないので、私を含むほとんどのお客さんは、湯船から桶で直接お湯を汲んでいました。体を洗う際も、お湯を掻ける方向に注意しないと、石鹸の泡が湯船に飛んでしまうかもしれません。地元の常連さんはそのあたりに気を付けていらっしゃいますが、そのあたりまで気が廻らない我々外来客は、ちょっと注意を払った方が良いかと思います。


 
湯船に温泉を供給する湯口は獅子の頭。元々白い素材なのですが、まるで髭のように硫酸塩の白い析出がこびりついており、よく見ると白い髭をたくわえているようです。そんな獅子の口から温泉がドバドバ勢いよく吐出されており、一応浴槽の隅っこに排水口があるのですが、それだけでは追い付かず、洗い場の方にも溢れ出ていました。そして私が湯船に入ると、一気に大量溢湯し、浴室内はちょっとした洪水状態になってしまいました。

浴槽は1m×2.5mの3人サイズ。小さな浴槽ですが、内部タイルの水色と縁に用いられている御影石の無彩色との対比によって、お湯の清らかさが一層際立っています。見た目だけでなく、実際のお湯も非常にフレッシュであり、小さな湯船に大量投入されているおかげで常時新鮮な状態が保たれていました。お湯からは石膏感(味と匂い)がしっかりと得られるほか、肌にはしっとりしなやかな浴感が得られ、それでいながら軽やかでエアリーなフィーリングを楽しむことができました。また、決して熱いお風呂はないのですが、お風呂上がりはしっかり温まり、本物の温泉が持つ温浴パワーをしっかりと実感できます。

使用源泉は「1号源泉」であり、このお湯は他の施設や宿にも引かれているのですが、お宿で入ったときよりもお湯の持つ個性がはるかに強く感じられるような気がしました。今回私は混雑時間帯の後に利用したため、本来ならばお湯が疲れて鈍っていても良さそうなものですが、ちっとも疲れておらず、新鮮なお湯を堪能することができました。小さなお風呂だからお湯の入れ替わりが早いのでしょう。繊細なタイプのお湯ですから、ちょっとでもコンディションが違うと、お湯から我々に伝わってくるフィーリングも変わってしまいます。小さなお風呂に大量投入しているこの浴場だからこそ、良い状態が保たれているのでしょうね。狭いので使い勝手はいまひとつですが、お湯の良さや地元の方々の生活感を体験するには相応しい共同浴場だと思います。


ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉 42.2℃ pH8.7 溶存物質1169mg/kg
Na+:207.8mg, Ca++:148.0mg,
Cl-:544.4nmg, SO4--:694.8mg, HCO3-:13.1mg,
H2SiO3:40.5mg,
(平成26年7月31日)
加水加温循環なし
消毒あり(衛生管理のため、深夜帯の4時間に次亜塩素酸を注入)

鶴岡駅より庄内交通バスの湯田川温泉・坂の下・越沢行で「湯田川温泉」バス停下車、徒歩1分
山形県鶴岡市湯田川乙  地図
湯田川温泉観光協会公式サイト

10:00~19:00 無休
200円(料金の支払い方法などは本文参照)
備品類なし

私の好み:★★

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湯田川温泉 仙荘湯田川

2017年10月02日 | 山形県

今回記事から山形県庄内地方の湯田川温泉を3回連続で取り上げます。まずは「仙荘湯田川」で日帰り入浴したときのレポートから。以前こちらのお宿は「ホテル仙荘」でしたが、2015年頃に現行の名前でリニューアルオープンしたんだそうです。でも外壁には旧名がそのまま残っていました。


 
日帰り入浴をお願いしますと、スタッフの方は明るく私を迎え、快く応じてくださいました。途中に設えられた和の趣の飾りを目にしながら奥の方へ進んでゆくと、やがて二つの浴室に行き当たります。ふたつの浴室は「真湯」と「笑湯」に分かれており、前者は男湯、後者は女湯というように使い分けられていました。当然ながら私は前者を利用します。脱衣室は綺麗で整っているのですが、こぢんまりしているので、多客時には他のお客さんと干渉してしまうかもしれません。


 
お風呂は内湯のみ。暖色系の内装でまとめられた浴室はかなりコンパクトで、旅館というより民宿のような規模です。また洗い場に設けられているシャワー付きカランも3基しか用意されていませんから、大勢で利用するようなお風呂ではなさそうです。


 
三徳包丁のような浴槽は、縁こそ床と同じ赤い御影石ですが、浴槽内には十和田石が用いられており、その優しい感触は湯あみ客に寛ぎをもたらしてくれることでしょう。大きさとしては奥行1.5m、最大幅2.5m前後で、3~4人サイズといったところ。残念ながら浴室から外の景色を眺めることはできないのですが、そのかわり浴槽の上に小窓が設けられており、窓外には箱庭のような小さな石庭が設えられ、和の趣きを醸し出すことにより殺風景さを緩和していました(とはいえ、窓が曇るとちょっと見にくいのが難点・・・)。


 
浴槽の奥に設けられた扇型の湯口より温泉が注がれ、浴槽縁の右側で一直線に伸びる排水溝より排湯されています。こちらのお風呂を満たしているお湯は他のお宿でも引かれている1号源泉で、見た目は無色透明ですが、投入量が少ないためか、いくらか鈍っているような印象を受けました。また若干の石膏らしさが含まれていたように感じたのですが、総じて言うと無味無臭で特徴を掴みづらい状態でした。お湯の鈍りが原因なのでしょうか。小さいお風呂で放流式の湯使いを実践していますから、どうしてもお湯の鮮度感を期待したくなりますが、ちょっと肩透かしを食らった感じは否めません。でもさすがは湯田川のお湯だけあって、ぬるめの湯加減なのに不思議としっかり温まり、湯上がり後は全身がいつまでもホコホコし続けました。やっぱり湯田川温泉のお湯は力強く頼もしいですね。
お風呂の規模やお湯のコンディションなどを考えると、ここより安い共同浴場の方が良いとおっしゃる方もいるかもしれませんが、宿のお風呂ですから綺麗ですし使い勝手も良く、スタッフの方の対応も明るいので、当地で湯めぐりする場合は、あえてここを選んでみるのもよいかもしれません。


湯田川1号源泉
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉 42.2℃ pH8.7 蒸発残留物1070mg/kg 溶存物質1169mg/kg
Na+:207.8mg, Ca++:148.0mg, Cl-:54.4mg, SO4--:694.8mg, HCO3-:13.1mg, CO3--:3.2mg,
H2SiO3:40.5mg,
(平成26年7月31日)
加水・循環なし
冬季のみ加温あり(入浴に適した温度に保つため)
深夜(1:00am~4:00am)源泉にて塩素消毒

鶴岡駅より庄内交通バスの湯田川温泉・坂の下・越沢行で「湯田川温泉」バス停下車すぐ
山形県鶴岡市湯田川乙13  地図
0235-35-3773
ホームページ

日帰り入浴10:00~17:00
500円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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