温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

長沼温泉 ぽっぽの湯

2017年10月08日 | 山形県
 
庄内平野の広大な水田に白鳥が飛来してきた秋の某日。白鳥とは程遠いフォアグラのガチョウみたいな体格をした私も庄内平野へとやってまいりました。


 
私がこの地へやってきた目的は、白鳥のように餌を啄むためではなく、長閑な田園地帯にある長沼温泉「ぽっぽの湯」で塩気の強い温泉に入浴するためです。



天井が高い館内には温泉浴場の他、食堂や農産物直売所が併設されており、午前中から地元のお年寄りたちで大いに賑わっていました。券売機で料金を支払い、受付カウンターの右手から浴場へと向かいます。


 
廊下の途中には、温泉マニアとしては見逃せない案内が掲示されていました。それによれば、こちらの施設では2つの源泉を使っているほか、浴場の造りも洋風と和風の2種類に分かれており、奇数日は洋風が女湯で和風が男湯、偶数日はその逆となるんだそうです。この日は偶数日であったため、私が潜るべき紺色の暖簾は洋風風呂の入り口に掛かっていました。


 
広い内湯は天井が高くて窓も大きいため、明るくて開放的です。また湯気篭りも少ないため快適な入浴環境が保たれていました。この日は曇っていたため、遠方の眺望は得られませんでしたが、晴れていれば洋風浴場からは月山が、和風浴場からは鳥海山が望めるんだそうです。浴場内には2つの浴槽と、サウナおよび水風呂が一つずつ設けられており、特に2つの浴槽は大きな窓に面しているため、湯あみをしながら山を含めた長閑な田園風景を眺めることができます。
洗い場にはシャワー付きカランが計10基並んでいるのですが、どうやらこのシャワーから出るお湯には後述する3号泉が使われているんだとか。そのことを知ったのは帰宅した後のこと。実際にシャワーを浴びている時には全く気付きませんでした。


 
とても大きな主浴槽では、石材で造られた2羽のハトの湯口からお湯が注がれていました。「ぽっぽの湯」だからハトなのかな。この主浴槽は3号源泉の単独使用。淡いべっこう色を帯びたお湯で、あっさりとしたクセの少ない単純泉です。この槽内ではジェットバスやジャグジーがブクブクと稼働しており、オーバーフローも見られるのですが、浴槽内で循環ろ過が行われているようでした。
なおサウナの傍に設置されている水風呂でも、3号泉が使われており、源泉に水道水を加えた上で供用されているのですが、あまりに冷たすぎたため、私は入れませんでした。


 

その隣にある4人サイズの小さな副浴槽は、マニア的には白眉の存在。2号泉と3号泉がミックスされて注がれており、オゾン消毒以外は何も手が加えれていない源泉かけ流し。加温されていないので若干ぬるいのですが、それでも源泉100%のお湯は濃厚であり、非常に塩辛く、苦汁のような味も含まれ、アブラ臭とともにヨードのような匂いを発し、コンソメスープみたいな茶色を帯びて弱く濁っている上、チャコールグレーの綿のような湯の花が湯の中で舞っていたり沈殿していたりしていました。同じ山形県の山間部に湧く「りんご温泉」に似ているのですが、おそらく両者ともグリーンタフ由来の温泉であろうと思われます。実際にこの長沼温泉は、昭和24年に帝国石油が油田の試掘中に発見された温泉であり、石油を掘ろうとして温泉が出ちゃった例は、北陸や東北の日本海側に点在しています。
小さいお風呂なのですが、さすが源泉かけ流しは気持ち良いのか、隣に大きな浴槽があるにもかかわらず、みなさん挙ってこの小さな源泉浴槽へ集まっていました。


 
どうやら洋風風呂と和風風呂の違いは、露天風呂の造りにあるらしく、前者はタイル貼りで後者は岩風呂なんだとか。私が利用したのは洋風風呂でしたので、露天風呂はタイル貼りでした。タイルだからと言って洋風であるとは言えず、むしろ平成一桁の日本でよく見られたデザインそのものであり、特に洋風というイメージを惹起するようなストラクチャも見当たらなかったのですが、細かな詮索は野暮ですから、これ以上突っ込むのはやめておきます。
洋風風呂の露天風呂は円弧を描くタイル貼りで、その半分ほどに屋根が掛かっています。私が訪れたときには、屋根からグリーンのネットが張られていたのですが、どうやらこれは冬季になると設置されるらしいので、おそらく雪対策かと思われます。
なお浴槽の傍には小屋があり、その内部には洗い場が設けられているのですが、わざわざ屋外にまで出て体を洗おうとするお客さんはいないのか、誰も使っていませんでした。もっとも、上述のように、洗い場にはシャワーが10基しかありませんので、混雑時には活躍するのかもしれませんね。


 
露天風呂ではドーム状の湯口よりお湯が投入されています。副浴槽(源泉槽)と同じく2号泉と3号泉の混合なのですが、こちらでは循環ろ過が行われているため、湯の花は見られず、ジャスミン茶のような色を帯びているものの比較的高い透明度が保たれていました。その一方、外気によって冷却されるためやや強めに加温されており、内湯よりも熱い湯加減に調整されているのですが(私の体感で43℃前後)、その影響なのかアブラ臭やヨード臭は源泉かけ流しの内湯源泉槽より強く放たれているように感じられました。なお塩辛さや苦味は内湯同様です。塩辛いお湯はすぐに体が火照ってしまうため、私はこの露天風呂で入ったり出たりを繰り返しましたが、暑い夏にはお湯が持つ凶暴性が発揮され、汗が止まらなくなるかと思われます。もっとも、私のようなフォアグラ体質は、むしろその凶暴なお湯に入って、たっぷり発汗した方が良いのかもしれません。

2つの源泉に入れる「ぽっぽの湯」ですが、やはり面白いのは、東北日本海側らしいグリーンタフ由来の塩辛いお湯である2号泉ですね。塩辛さはもちろん、匂いもかなり強く、湯上がり後の私の手からは一日中、アブラ臭が残り続けました。


長沼2号源泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 62.4℃ pH7.6 蒸発残留物24140mg/kg 溶存物質24270mg/kg
Na+:6265mg, Ca++:2745mg, Sr++:37.0mg,
Cl-:15020mg, Br-:54.5mg, I-:6.4mg,
H2SiO3:58.3mg, HBO2:44.4mg,
(平成21年11月25日)

長沼3号源泉
単純温泉 32.2℃ pH8.0 蒸発残留物209.3mg/kg 溶存物質232.0mg/kg
Na+:74.1mg,
Cl-:48.8mg, Br-:0.7mg, HCO3-:100.8mg,
H2SiO3:79.6mg,
(平成21年11月25日)

洋風風呂・和風風呂共通
一般浴槽(主浴槽):3号源泉使用。加水なし、加温・循環ろ過・オゾン消毒あり、
源泉浴槽(副浴槽):2号泉・3号泉混合。加水加温循環なし・3号泉のみオゾン消毒あり(2号泉は消毒なし)、
露天風呂:2号泉・3号泉混合。加水なし・加温循環消毒あり、
水風呂:水道水を5~10%加水、加温なし、循環消毒あり

山形県鶴岡市長沼宮前266-1  地図
0235-64-4126
ホームページ

6:00~22:00
430円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント
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