温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

宇久井・岩鼻・井関 源泉垂れ流しの湯

2014年06月14日 | 和歌山県
和歌山県那智勝浦町では海岸に沿う形で勝浦温泉や湯川温泉など多くの温泉が分布していますが、浴用に適した温度に達している源泉はそれほど多くなく、前回および前々回の記事で取り上げた「ゆかし潟」周辺の諸源泉のように、洗濯用に使われたり、あるいはそのまま捨てられちゃっている所も少なくありません。こうした例は「ゆかし潟」のみならず、他地域でも見られますので、今回は勝浦エリアより北側で垂れ流されている源泉を3ヶ所巡ります。
※3回連続で入浴できない温泉を扱ってしまい、申し訳ございません。


●宇久井の湯

小さな半島が熊野灘に突き出ている長閑な漁業集落の宇久井にやってまいりました。この宇久井の半島では「休暇村南紀勝浦」が営業しており、そこで温泉入浴することも可能ですが、今回はそこまで行かずに手前の住宅地を彷徨しました。宇久井漁港を抜けて海岸沿いの道を東へ進んでゆくと、やがて漁協が管理する月極駐車場の前を通過します。


 
上述の駐車場を過ぎると左手には民家が建ち並び、右には空き地が広がります。そして空き地の向こうは宇久井漁港です。なお、この道を真っ直ぐ進んで前方のこんもりとした森の中へ入ってゆくと「休暇村南紀勝浦」へつながります。逆光で見難い画像ですが、画像左(上)で輝いている太陽のハレーションの他、右下の側溝でも小さい輝きが確認できるかと思います。その小さな輝きに近寄って撮ったものが画像右(下)です。配管から側溝に水が落とされているところなんて、全国に腐るほどありますが…


 
配管下の側溝は、単なる地下水や湧水ではありえないほど白く染まっており、その水は茹でタマゴのような匂いを辺りに放っています。またボロボロに腐食したパイプの上にはデッキブラシのブラシ部分のみが放置されていました。この水を使って何らかをゴシゴシと洗っていたのかな?


 
パイプからの吐出量はかなり多く、温度計を突っ込んでみたら27.4℃と表示されました。温泉法の第2条第1項で規定されている条件をしっかりクリアしていますので、立派な温泉であります。お湯は無色透明で、配管下の湯溜まりのみならず、お湯が流下する側溝など、あちこちにイオウによる白いユラユラが付着しています。手で掬ってテイスティングしてみますと、茹でタマゴのような味や匂いがかなり強く、薄い塩味やイガイガとした苦味も伴っていました。那智勝浦町内で見られる同じタイプの他源泉(湯川温泉など)より匂いや味の主張がかなり強く、また腕にお湯を当てて撫でてみますと、明瞭なツルスベ感も得られました。さすがに30℃にも満たないお湯ですから、このままで入浴するのは難しいのですが、ご近所の「休暇村南紀勝浦」で使用されている源泉もこれとほぼ同類かと思われますので、休暇村のように加温すると面白いお風呂になりそうです。とはいえ、目の前は民家ですし、公道に面していますので、ここでは見学とテイスティングのみにとどめ、お湯を浴びる等の行為には及んでおりません。


●岩鼻温泉
 
那智の大滝や那智山へ向かう観光ルートの県道43号線沿いには、かつて那智天然温泉というマニア受けする渋い温泉入浴施設がありましたが、平成23年の大水害によって泥流に呑み込まれてしまい、残念ながら廃墟と化してしまいました。その那智天然温泉へアプローチする橋の傍、県道の路肩には、温泉ファンには夙に有名な垂れ流し温泉「岩鼻温泉」があり、こちらは水害の被害を受けずに現存しているらしいので、実際に現地へ行ってみることにしました。温泉の存在を示す看板などは無いのですが、道が左へ急カーブする外側の、ガードレールが切れたところにあるので、初見の私でも容易く見つけることができました。


 
近づいてみると、「岩鼻温泉」とググればパソコンの画面に必ず表示される光景が目の前に展開されました。キラキラ輝くステンレスのバスタブへ、地中から立ち上がっている配管から無色透明のクリアなお湯がドッバドバ大量に落とされています。付近には廃屋があるので、もしかしたらこの家に人が住んでいた頃には、生活用のお湯としてこの岩鼻温泉が活用されていたのかもしれませんね。いや、屋外で放置されているにもかかわらずバスタブは不自然なまでに綺麗なので、今でも誰かしらによってしっかり清掃されて(磨かれて)いるのかもしれません。


 
それにしても、すごい量のお湯が自噴しています。お湯からはこの地域の温泉に典型的な、茹でタマゴ的な匂いと味が感じられ、またマイルドながらビターな味わいも伴っていました。このまま使われずに垂れ流されているだなんて勿体無いのですが、温度が35.4℃しかないので、ぬる湯が好きな御仁じゃないと入浴は厳しそうですね。第一、目の前は那智の大滝などへ向かう車がひっきりなしに通り過ぎますから、ここでの入浴はほとんど羞恥行為に近いものがあります。もちろん私は肝っ玉が小さい臆病者ですから、ここでの入浴は諦めて見学だけにとどめましたが、ネットを調べるとここへ入っている温泉マニアも結構いるみたいですね。温泉マニアってハートが強いんだなぁ…。オイラにゃ敵わないや…。

私が撮影した後には、リタイヤ後にキャンピングカーで全国を巡っているご夫婦が路肩に停車し、ここでお湯を汲んで洗濯していました。温泉ファンに限らず広範囲なアウトドア派の方々にも知れ渡っている温泉のようです。


●井関温泉 たらいの湯
 
続いて、岩鼻温泉から県道43号を更に奥へ進み、井関集落へとやってまいりました。ここも温泉ファンには夙に有名な垂れ流しの温泉があるんだそうです。県道沿いには民家が立ち並んでいますが、民家の裏手(北側)には谷に沿って田んぼが広がっており、その田んぼの向こう側の崖下に温泉があるらしいのです。


 
田んぼを横切るわけにはいきませんから、畦道をグルっと迂回して、山裾を流れる用水路へと向かいます。用水路の河床では青白い繊維上のものが水の流れに身を任せてユラユラしていたのですが、これってもしかして…。


 
温泉マニアにはお馴染みの井関温泉「たらいの湯」に到着です。実はバス停裏からここを目視できちゃいますので、迷うこと無くたどり着けました。
用水路の下流側と上流側の両方から撮ってみましたが、いかにも洗濯場といった趣きで、コンクリでカバーされた一つの源泉から2本のパイプが伸び、それぞれ金盥と木の盥へお湯を注いでいました。まわりには腰掛けがいくつか置かれていましたから、いまでもこのお湯は洗濯等に活用されているのでしょう。


 
盥には自噴する温泉が間断なく注がれています。そのお湯の温度は35.0℃の無色透明で、口に含むとふんわりとしたタマゴ味とタマゴ臭が感じられたのですが、その感覚は近所の岩鼻温泉よりも幾分マイルドであり、岩鼻のような苦味が無い代わりに甘露な味わいが口の中に広がりました。
画像で見る限り、湧出量は大したこと無さそうに思われますが、実際にはかなり多く、岩鼻と匹敵するか上回るほどの量がどんどん湧き出ています。なお、盥の真下の用水路は、ここより上流側では何も流れていませんでしたので、水路に流れる水の全てが温泉であり、先ほど用水路の河床でユラユラしていた白い物体は、言わずもがな湯の華なのであります。

岩鼻温泉同様、マニアな方はここでお湯を浴びていらっしゃるようでして、確かにここなら人目から離れていますから、浴びようと思えば浴びられるのですが、根性なしの私はここでも見学のみにとどめておきました。

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