温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

早稲沢温泉 民宿森川荘

2012年10月21日 | 福島県
 
裏磐梯・早稲沢温泉の中でも温泉ファンから評価が高い「民宿森川荘」で立ち寄り入浴してきました。一見すると民家かアパートを思わせる佇まいですが、玄関の戸には民宿と記されているので、ここで間違いないことを確認して中へと入ります。玄関からまっすぐ伸びる廊下のすぐ右手には浴室の暖簾がかかっており、温泉が当宿の売りだと言わんばかりのレイアウトになっていました。温泉への期待に胸を膨らませながら呼び鈴を鳴らすと奥からご主人がやってきて「今から(館内には)誰もいなくなりますから、内湯も広間も露天も、どうぞご自由にお使いください」との有り難い言葉をいただきました。


 
民宿にしては広い脱衣室。真ん中には草臥れたマッサージチェアーが1台置かれていました。一般的に早稲沢温泉の各施設では「宝来湯」源泉を共有源泉として引湯していますが、室内に括り付けられている棚の上には2つの温泉分析表が掲示されており、どうやらこちらでは宝来湯の他、裏磐梯早稲沢温泉という源泉も利用し、両源泉を混合しているようです(後で調べたところによると、元々は裏磐梯早稲沢温泉のみでしたが、この源泉の温度が徐々に低下して今では31℃にまで下がってしまったため、温度調整するために熱い宝来湯を混ぜているんだそうです)。


 
脱衣室の広さに反して浴室はこじんまりとしていますが、全面タイル貼りの室内はよく手入れされており、とても清潔で気持ちよく利用できました。洗い場にはシャワー付き混合水栓とシャワー無しの蛇口が1組ずつ設けられています。


 
浴槽は3人サイズで、脱衣室側の底はちょっとだけ浅くなっています。湯口の左右両側にはカイゼル髭のような白い析出がコンモリとこびりついており、お客さんの有無に関係なくひたすら源泉を吐き出し続けていました。お湯は無色で混じりけ無く澄み切っており、槽内のタイル目地は窓から降り注ぐ日の光を虹色に反射し、湯面では青白い光をキラキラと輝かせていました。湯口に置かれたコップで飲泉してみると、まずは弱いながらもはっきりと確認できるタマゴ味が、そしてその後から石膏味がそれぞれ舌に伝わり、その時間差に合わせてタマゴ臭と石膏臭が順に口から鼻へと抜けてゆきました。トロトロとした感じのお湯に体を沈めると、入りしなは肌にピリピリとした刺激が感じられ、その後いかにも硫酸塩泉らしい引っかかりのある浴感が全身を覆います。



じっくり浸かっていると、やがて肌にうっすらと気泡の付着が見られました。湯加減は熱くもぬるくもない絶妙な塩梅で、お湯の鮮度の良さや上品な感触にすっかり私の体は虜になってしまい、長湯でのぼせかけたので浴槽から出ようとするものの、私の体はそれを拒否していつまでも浸かり続けようとするほど、後を引くすばらしいお湯でした。


 
今回は入浴しませんでしたが、誰もいなかったので女湯の方も見学させていただきました。角張った男湯と異なり、こちらは丸みを帯びた浴槽であり、湯口も石を組んだようなスタイルになっているんですね。



男女浴室の奥には共用の洗面台があり、こちらにはドライヤーが用意されていました。


 
内湯の湯上がりに、大広間でちょっと休ませていただくことに。
この広間は食堂を兼ねているらしく、ホワイトボードには朝食の時間が書かれていました。


 
鴨居には寄せ書きがたくさん飾られており、その多くはこちらの宿をスポーツ関係の合宿で利用した部活動の生徒・学生によるものでした。利用者層としては小学生から大学生まで幅広いのですが、特に東海大学のものがが目立っており、同大の箱根駅伝の襷を模したタオルがかかっていました。裏磐梯高原はスポーツ合宿にはうってつけの土地ですね。



次に露天風呂へと向かいます。県道から民宿の駐車場へと入ってゆくアプローチの途中にこの露天風呂があり、鉄パイプで骨組みを立てた上にブルーのテントで屋根を張り、周囲を簾で囲うという、とっても手作り感があふれる外観を目にした途端、私は興奮のあまりに思わず声を上げてしまいました。ネット上の情報によれば、こちらの露天はお湯を溜めていないことがしばしばあって、入浴できないこともあるんだそうですが、今回は幸いにして入浴することができました。


 
テントの下の露天風呂です。地面には荷物運搬用のパレットが敷かれており、足元の泥濘化を防いでいます。外観を見たとき、湯船もきっと素朴で簡易的なものなのだろうと高をくくっていたのですが、目の前に現れた湯船は予想を遙かに超える、本格的で重厚感すら漂う総木造のものでした。こんな立派な露天風呂に入れるだなんて想像しておらず、歓喜のあまりにしばらくはアドレナリンの分泌が止まりませんでした。


 
浴槽は重厚感のある造りであるだけでなく、槽下部の側面より出ている塩ビ管によってパスカル原理で排湯されており、これによりオーバーフローで周りがビショビショにならないよう配慮されているのでした。一見野趣溢れるワイルドな露天風呂と思いきや、質感といい構造といい、随所に上品さが見受けられるすばらしい露天風呂なのであります。



屁理屈なんてどうでもいい・・・。というわけで入浴です。やっぱり総木造の浴槽は肌触りが優しいですね。しかも湯加減も最高でした。上述したようにただでさえ後を引くお湯なのに、緑溢れる清らかな環境の下で高原の風に吹かれながら、木の浴槽に浸かって心地よい温泉に入っていると、さっきまで放出しつづけていたアドレナリンは途端に分泌をやめ、かわりにノルアドレナリンが全身に行き届き、すっかり時間の経過を忘れて心身ともにリラックスすることができました。
こちらのお宿では立ち寄り入浴もいいですが、宿泊してのんびりとお風呂に浸かるべきですね。次回利用時は是非泊まってみたいと思います。


裏磐梯早稲沢温泉
単純温泉 31.0℃ pH8.1 336L/min(動力揚湯) 溶存物質698.1mg/kg 成分総計698.1mg/kg
Na+:145.0mg(67.13mval%), Ca++:60.5mg(32.13mval%),
SO4--:394.4mg(86.51mval%), HCO3-:41.5mg(7.17mval%),
H2SiO3:34.8mg,

宝来湯
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉 69.9℃ pH8.4 404L/min(動力揚湯) 溶存物質1.201g/kg 成分総計1.201g/kg
Na+:197.8mg(51.81mval%), Ca++:157.9mg(47.47mval%),
Cl-:48.0mg(8.26mval%), SO4--:691.8mg(88.07mval%),
H2SiO3:71.2mg,
(平成21年4月22日分析)


福島県耶麻郡北塩原村檜原字早稲沢552  地図  
0241-34-2258     
ホームページ

立ち寄り入浴可能時間不明
300円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

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