温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

東莱温泉 大盛館温泉ホテル

2020年01月17日 | 韓国

前回記事に引き続き韓国・釜山近郊の温泉を巡ります。前回記事で取り上げた海雲台温泉の最寄である海雲台駅から地下鉄に乗り、途中で1号線に乗り換えて釜山屈指の有名温泉地である東莱温泉(トンネオンチョン。동래온천)へとやってまいりました。都心部では地下を走行する1号線も、郊外では地上を走るんですね。




温泉最寄りの地下鉄駅はその名も「温泉場駅」。なんてわかりやすいストレートな名称なんでしょう。釜山の地下鉄に限らず韓国の鉄道は駅名標に漢字表記があるので、私のようにハングルが読めない日本人でも心配なく利用できます。



東莱温泉は朝鮮半島屈指の歴史を有する温泉地。どうやら新羅の時代まで遡れるらしいのですが、温泉地として発展しはじめたのは李氏朝鮮末期から日本統治時代にかけての頃らしく、温泉場駅構内には古い写真や資料によって東莱温泉の歴史が説明されていました。



当地には「農心ホテル」という非常に大規模なホテルをはじめ、大小様々な宿泊施設が営業しているのですが、今回一泊お世話になったのは中規模の「大盛館温泉ホテル(대성관 온천호텔)」です。公式サイトで記されている紹介文のハングル表記をGoogle翻訳で日本語にしたところ、「大盛ホテルは最初に温泉水を使用した(旧)一番湯の新築です」というあやふやな文章が表示されたのですが、どうやらかつてここには「一番湯(제일탕)」という公衆浴場があったんだそうです。この「一番湯」は当地ではじめて温泉のお湯をつかった公衆浴場として1923年に創業したらしく、その跡地で数年前に新規開業したのが「大盛館温泉ホテル」。ホテルの外壁に書かれた"SINCE 1923"とは「一番湯」のことなのでしょう。公衆浴場跡地に建てられたこの新しいホテルではどんなお湯に出会えるのでしょうか。



外壁に大きく宿の名前が書かれている二つの通りの角には飲食店があるのですが、お宿の入口が見当たりません。どこから中に入れば良いのかしら、と辺りをウロウロしながら裏側に回ると、ようやく入口を見つけました。でも入口は左右にひとつずつあり、どれが正解なのか・・・。一か八かで右側に入ってみたら、正解でした。ハングルが読めたらこんな苦労はしなかったんでしょうけど・・・。なお(画像には写っていませんが)左側の入口は公衆浴場用の入口です。



フロントの方は物腰柔らかく、丁寧に対応してくださいました。エレベーターで今回お世話になる部屋がある階層へ上がると、明るいながらも落ち着いた廊下からは、アジアらしい雰囲気を醸し出す竹の中庭が見下ろせ、ちょっとした高級ホテルのような雰囲気が感じられました。



さすがに新しいホテルだけあり、お部屋は綺麗で快適。いろんな備品も揃っています。



大きいベッドはいくらでも寝返りし放題。



水回りのお部屋も綺麗で広く使い勝手良好です。しかも大きなバスタブが用意されているので、日本のビジネスホテルみたいに窮屈な思いをせずに利用することができました。なお公式サイトによれば「全客室温泉水100%使用」とのこと。ということは、客室から出なくても温泉を享受できちゃうわけですが、せっかくですから大浴場でのびのびと温泉入浴したいものですね。そこで早速お風呂へいくことにしました。

大浴場へ行くには、一旦フロントまで下り、そこで宿泊客用の入浴チケットをもらいます。そしてドアを隔てた隣の部屋にある入浴専用受付でチケットを渡すと、引き換えにロッカーキー(下足箱の鍵と兼用)と入浴券が手渡されます。女湯は2階、男湯は3階。それぞれエレベーターであがります。
ここで注意を要するのが利用時間。こちらに限らず、一般的に韓国の温泉ホテルでは大浴場の利用終了時間が早く、20:00や21:00前後で閉まってしまうことが多いようです。ちなみにこちらの施設は20:30でした。韓国で夜に温泉大浴場を利用する際には、予め時間を確認しておかないと、お風呂に入りそびれてしまうかもしれません。


以下の画像は、一部を除き公式サイトから拝借しました。


エレベーターで3階にあがり脱衣室に入って、専用の箱に入浴券を入れます。ウッディな脱衣室は広くて快適。
なお脱衣室の浴場出入口付近にはタオルがたくさん積んでありますから、そこから自由に取って使って構いません。もちろん客室からタオルを持っていったり持参する必要もありません。



脱衣室の腰掛けでは、上画像のように茹で卵が売られていました。不勉強にも私はいままで知らなかったのですが、韓国の温浴施設やチムジルバンでは、このように茹で卵や燻製卵が当たり前のように売られているんですね。ご当地ならではの入浴文化のひとつと言えるでしょう。



床に石板タイル、天井に木材が用いられ、落ち着きと和らぎをもたらしてくれる浴場内はとても広くて開放的。ストレスなく伸び伸び利用できます。男湯の場合は、入って左側に洗い場が配置されており、シャワー付きカランがたくさん設けられています。しかも各ブースが仕切られている上、一つ一つが広いので使いやすいのも嬉しい点。なお画像には写っていませんが、浴室の右側にはトイレ、垢擦り場、水風呂、そしてサウナなどが配置されています。



浴場の中央には、約5メートル四方の正方形をやや歪ませたような形状の主浴槽がひとつと、その3分の1にサイズダウンした浴槽ひとつが隣り合っています。両者の違いはサイズだけでなく湯加減も異なり、前者は42℃という入りやすい温度である一方、後者はちょっと熱めの45℃でした。浴槽に張られている温泉は無色透明無味無臭という癖のないアッサリとしたタイプのお湯です。日本で例えるならば四国の道後温泉に似たタイプと表現できるかもしれません。前者の浴槽からはお湯がオーバーフローしていましたが、おそらく相当加水しており、それに伴う溢れ出しなのではないかと推測されます。湯使いについては説明が無かったので不明です。

なお日本語版Wikipediaによる「東莱温泉」の説明によれば「日本の有馬温泉と共通点がある」とのことですが、たしかに都市の近郊に歴史ある大きな温泉街が存在している点こそ共通しているものの、お湯の質に関しては真逆の性質であり、有馬は非常に高温で塩気や金気が強い濁り湯である一方、こちらの東莱温泉は無色透明無味無臭で、今までいろんな温泉に入っている経験豊かな私ですら真湯との区別がつくにくいほど個性の掴みどころに困るお湯でした。かといって、浴槽に張られているお湯が偽物だと申し上げているわけではございません。次回もしくは次々回で取り上げる私好みの浴場で出会った素晴らしいお湯もこちらと同様の知覚的特徴を有していましたので、東莱温泉のお湯は元々そのような主張の少ないタイプなのでしょう。あくまで私見ですが、長い歴史を有し且つ都市の奥座敷である、そして無色透明ほぼ無味無臭の温泉という共通点を持つ日韓の温泉地を挙げるならば、東莱温泉と日本の道後温泉(松山市)が相応しいのではないかと思います。



ちなみに浴室の奥には半露天風呂があり、浴槽は4~5人サイズで、視界が開ける側に竹の柵を立てて目隠ししていました。こちらにも温泉が張られています。全裸入浴できる外国のお風呂で、外気を感じながら入浴できる施設は少ないですから、この半露天風呂はかなり貴重な存在と言えましょう。

新しいお宿だけあって客室からパブリックスペースまでどこも綺麗且つスタイリッシュですし、使い勝手もよく、それでいてリーズナブル。しかも客室に温泉が引かれている上、泊まれば温泉大浴場に無料で利用できるのですから、利用価値が高い温泉ホテルと評価できるのではないでしょうか。おそらく素泊まりしかできないかと思いますが、周囲には飲食店が多く、朝から営業しているカフェもありますので、食事に困ることもありませんでした。

次回記事からは東莱温泉の他のお風呂にも入ってみます。



釜山広域市東莱区金剛路124番ギル19
(부산광역시 동래구 금강로124번길 19 대성빌딩 )
051-555-3343

入浴利用5:00~20:30(宿泊客も同じ時間帯)
7000ウォン
ロッカー・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント
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