温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

東莱温泉 マンス湯

2020年01月25日 | 韓国

今回も韓国・釜山近郊の東莱温泉を取り上げます。前回記事で取り上げたのは当地のランドマークである巨大温浴施設「虚心庁」でしたが、それとは対照的に路地に沿ってひっそりと佇む地元民向けの小さな温泉公衆浴場「マンス湯(만수탕)」が今回の主役です。



路地に面して番台があり、その番台を挟んで男女の入り口が左右に分かれています。ハングルだらけなので韓国であると判断できますが、この正面の佇まいだけを見たら、日本の地方にある温泉銭湯と見紛っても不自然ではありません。土地の香りを強く漂わせる地元密着型の銭湯なのでしょう。



こちらは番台に掲示された料金表です。これによれば7000ウォンで、営業時間は5:00~20:00とのこと。小さいながら日本語や英語・中国語の表記もあります。



浴舎の外壁には、天然温泉であることを示すプレートが掲示されていました。スマホの翻訳機能によれば、「温泉」と書かれているんだそうです。かつて日本の統治を受けていた影響か、韓国では日本と同じく温泉マークが使われていますが、このマークが使われているからと言って必ずしも温泉を意味しているとは限らず、温泉ではない温浴施設や宿泊施設、そして俗語としての所謂「逆さクラゲ」(つまり連れ込み旅館)を指すこともあったため、温泉関係機関が温泉だけにつかえるサインとして新しく制定したのが、上画像に写っている青くて丸い意匠のサインなんだそうです。温泉マークが「逆さクラゲ」という隠語として用いられるなど、温泉以外を意味してしまうのは、昭和の日本でも同じでしたね。



さて湯銭を払って脱衣室へ。6畳ほどの室内は、コンパクトながらも必要な物がギュッと詰め込まれている感じ。ロッカーは数こそ少ないものの、ちゃんと施錠できますし、扇風機やドライヤーなども備え付けられています。



洗面台まわりにはアメニティと称すべき物が所狭しと並べられています。洗面台の中に詰め込まれているのは、おそらくお客さん用の垢擦りタオルなのでしょう。おそらくこれらは客が使って良いものなのでしょうけど、個人所有物のような感が強くて私は手が出せませんでした。



外観から容易に想像できるように浴室はコンパクトな造りで、鹿児島辺りの小さな温泉共同浴場を思い起こさせるような渋い
すが、それでも浴槽や洗い場のほか、後述するような設備が一式揃っており、小さいながらも充実しています。



洗い場にはシャワー付き水栓の他、カランの代わりにお湯が汲める小さくて細長い槽も設けられています。断定はできませんが、おそらくシャワーから出てくるお湯は温泉ではないかと推測されます。



洗い場の後ろには垢すり台のほか、黄色い円盤が側面に取り付けられた摩訶不思議な青い箱形の装置が置かれていました。黄色い円盤には垢すりで使うような目の粗い布が巻かれていましたので、けだし自動垢すり機ではないかと思われます。小さなお風呂なのに垢すり設備が用意されているところに、韓国らしさを強く感じます。なお垢すり台の左側にある出入口はサウナなのですが使用停止中でした。



浴槽は2つあり、ちょっと大きい右側がメインの浴槽です。メインと言ってもそのキャパは3~4人ほど。一方、左側は水風呂で1~2人サイズ。小さい浴場ながら、サウナ(休止中)と水風呂を備え持っているのですね。これぞ韓国の銭湯スタイルと言うべきなのでしょう。



右側のメイン槽には温泉が張られています。溜め湯式と称すべき湯使いで、私が入室した時にはお湯が止まっていたのですが・・・



コックを開けると熱い温泉が勢いよく吐出され、浴槽の縁からしっかりとオーバーフローしていきました。浴槽内で循環装置などは見当たらなかったため、お湯を出すことにより掛け流し状態となるわけです。しかしながらコックから出てくるお湯はかなり熱く、開けっ放しだと湯船に入れなくなってしまうので、基本的には常時お湯を溜めてコックを締めておき、必要に応じて適宜開けるスタイルをとっているのでしょう。とはいえ加水も可能ですから、もしお湯を入れ過ぎて湯船が熱くなっちゃったら、加水すれば問題ありません。

お湯は無色透明無味無臭の癖が無いアッサリしたお湯ですが、何となく重曹泉のような感触を得られたように記憶しています。なにしろ鮮度の良いお湯が注がれる為、同じ東莱温泉でも前回記事の「虚心庁」や前々回記事の「大盛館ホテル」などのお風呂よりもはるかに浴感がよく、個性が掴みにくいタイプのお湯でありながら、お湯の良さや特徴が優しく心身に伝わってきました。



館内には東莱温泉の特徴が掲示されていました。これによれば源泉温度は55~68℃で、泉質は弱アルカリ性の食塩泉とのこと。食塩泉といっても、含まれる食塩の量はかなり少ないのではないでしょうか。それはともかく、当地でこんな鄙びて味わい深く、しかもお湯が良い銭湯に出逢えるとは想像だにしていませんでした。

私がお風呂から上がると、外で何やら仕事をしていた番台のおばちゃんが声をかけてくれました。曰く、こちらは1966年創業で、おばちゃんのお母さんか親族の方が日本に住んでいたそうです。写真撮影大歓迎とのことで、外観から内部までしっかり撮らせていただき、その上、お土産までくださいました。おばちゃん、ありがとう!



釜山広域市東莱区

5:00~20:00
7000ウォン
ロッカー・石鹸・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント
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