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龍馬は京で薩土盟約を結んだのち!長崎に戻っちょったがじゃ!今では海援隊本部もその組織を着実に充実させておったようじゃ、「龍馬!わしゃ!あの薩摩が土佐藩と供に大政奉還を目指すと約束したと言うがは未(いま)だに信じられんじゃき!」惣之丞は薩土盟約を高く評価した、『惣之丞!大事ながは!これからじゃ!今、後藤様が土佐で大殿様に大政奉還の建白書を書いてもらうよう願い出ちゅう!』・・・
土佐城では相変わらず容堂が氷嚢を左顎に押し当て虫歯の疼(うず)きを鎮めていた、象二郎が薩土盟約書を見せながら、幕府に申し出る建白書作成を容堂に嘆願したがじゃ、『これは薩摩藩が我が土佐藩と供に大政奉還を目指すと言う盟約書で御座います!大殿様が将軍・徳川慶喜公と御入魂(じっこん)の仲!政を御門へお返し奉るよう大殿がお勧めになったら慶喜公も考えざるを得んでしょう!』、「わしが慶喜様に印籠を渡すがか?」、『はぁ!慶喜公が自ら政権の座から降りられたら戦はせんと薩摩が約束したがです!』・・・
「たわけ!薩摩はのう!大政奉還がなされるなど!これっぽっちも考えちゃおりゃあせん!奴等はただ!戦がしとうて堪らんがじゃ!」、「ほんなら土佐も軍備を整え兵を挙げると!」、すると激怒した容堂は立ち上がり象二郎に蹴りを入れ!馬乗りになって言った!「この土佐が大恩ある徳川に戦を仕掛けるなど!未来永劫(えいごう)ありえん!」、象二郎も食い下がった『大殿様!土佐藩は!土佐藩は!これからの日本の要にならんといかんがです!』、そのあと、容堂の言葉が絶えた・・・
一方、長崎では龍馬が動いた、『わしは!ちっくと出かけてくるき!これは全部おまんに頼むけ!よう観ちょけよ!』と陽之助に言い残し、龍馬は海援隊本部を出て行った、『行ってくるき!』、行って来てつかわさい!・・・龍馬は土佐商会に来ちょった、弥太郎が象二郎からの手紙を見せながら言った「後藤様は必ず大殿様を説得すると書いちゅうけんど!無理ぜよ!」、『なかなかうんと言わんのう!容堂公は!弥太郎!ミニA銃を1000丁ほど用意できんかえ?』、「1000丁!?」・・・
『今のうちに土佐の力を強めちょかんといかん!大政奉還の建白にしくじったら!戦になってしまうかも知れんけのう!頼むき!』、「おい!龍馬!おまんは戦をする積もりかえ?」、『やりとうのうても!喧嘩になってしまうことはあるがぜよ!その時に土佐に武器がのうて!わしやおまんの親兄弟が殺されてしもうたら堪らんきのう!ミニA銃1000丁じゃ!ええのう!』と弥太郎に頼むと龍馬は土佐商会をあとにした、弥太郎も!龍馬も!勝負の時が近づいちょった!けんど!とんでもない事件が起こったがは!その二日後じゃった!・・・
その日、引田屋では、お慶がイギリス商人達を招き、商談成立の祝いの席が芸子を挙げて盛り上がっておった、『皆さん!これからもよろしゅうに!』お慶が手を叩きながら祝った、Congrats(congratulationの短縮形)!Congrats!「Congratulations!」とそこにはお元もイギリス人達を持て成していた、And you!Madam!Most beautiful Geiko-san I've ever seen(たいそうお美しい芸子さんですね)!お元はなかなかの売れっ子じゃった!「Please patronize me again(また、ごひいきに)!」、Most certainly(もちろん)!『お元ちゃんのお陰で商売ば上手く行ったばい!』、お慶の音頭で乾杯した『Everyone!Cheers!』、Yeah!Cheers!Cheers!・・・
その事件は引田屋のパーティが終わり、お座敷のお勤めから、お元とおタネが置屋へ戻る途中に起こった!「大浦屋さんはお元姉さんば、よくひいきにしとるなっとですね!」、『だって!うちが12の頃からお座敷に上がらしてもらってるけん!』、その時じゃった!わあ~~!わあ~~~!一人の侍が二人の水夫らしき外国人を追って来て!斬りかかった!この無礼者が!お元は目を見開いて驚いた!その侍は海援隊が着る制服の白袴にそっくりな井出達だった!「誰か!誰か!来て~~!」とおタネが叫んだ、殺されたがは長崎に入港しちょったエゲレスの船“イカロス号”の水夫やったがじゃ!・・・
土佐商会主任室では、何やら弥太郎が溝渕を前にして有頂天になっちょったがじゃ!『銃が手に入ったぞ!あっははは!グラバーは仕事が早いのう!さすがエゲレス流じゃ!』、どうやら龍馬に頼まれちょったミニA銃1000丁が入荷したようである、「エゲレス流!エゲレス流!言うて!すっかりエゲレス流に被(かぶ)れしっちゅうのう!おまん!」と溝渕がコメントした、『あっはははは~~~!』弥太郎はその銃を一丁、手にして満足そうじゃった・・・
そこへ、「失礼します!」とパックンまっくん!元へ!日本駐在イギリス公使の日本語通事、アーネスト・サトウ(日本名:佐藤愛之助、日本学者、書道家、画家)の一行がやって来た、「土佐商会主任の岩崎弥太郎さんは?」と訊いて来た、『えっ!わしじゃ!』と手を挙げて答えた、サトウは近づき言った「イギリス公使、ハリー・パークスの通事をしているアーネスト・サトウと申します!」と自己紹介し一礼した、『サトウさん!?』・・・
「岩崎さん!パークス公使は大変怒っておられます!わが国の水夫が殺された一件!我等の調べでは下手人は白い着物をきていたことが分かりました!海援隊と言う連中は、いつも白い袴をはいているそうですねえ?」、溝渕が反論した「海援隊が人斬りらするわけないろう!」、『そうじゃ!白い袴をはいちゅうもんは他にも!ようけい居るぜよ!』、「パークス公使は海援隊の誰かが下手人だと思っているそうです!我が国の人間が殺されたことを決して許しません!パークス公使は下手人を引き渡さなければ!イギリス艦隊に土佐を攻撃させると言っています!こちらが!その通達です!」サトウは通訳文付きの書簡を弥太郎に差し出した・・・
「お越しになりました!」、長崎奉行所にパークス一行が通されてきた、「This is Commisioner!(奉行代官です)」とサトウがパークスに朝比奈を紹介した、『ご苦労様!さあ!どうぞ!』着席を促した、『エゲレス人殺しの下手人は我々も海援隊だと睨んでおります!』、「Tosa-clan must be protecting Kaientai!(土佐藩は海援隊を守ろうとするに決まっています)」、We want you to investigate them!(奉行に海援隊を徹底的に取り調べて頂きたい)」、『うん、分かりました!さあ!どうぞ!』グラスを進め了解の乾杯を交わした、「We count on you!(期待していますよ)」、一行が去ったあと、朝比奈は『坂本龍馬じゃ!坂本を召し取って来い!』と命令した、エゲレス人殺しは長崎奉行にとって龍馬を掴まえる絶好の口実となったがじゃ!・・・
海援隊本部に弥太郎が怒鳴り込んできた!「何ちゅうことをしてくれたがや!おまん等!おまん等!おまん等!」、「海援隊らがエゲレス人を斬るわけがないろう!」溝渕が弥太郎を制ししょうとする、「龍馬!龍馬は何処じゃ!」、惣之丞が割って入る「わし等がそんな馬鹿な真似をするわけないろうが!」、弥太郎が龍馬に向かって毒を吐く「グラバーはのう!銃の取引はもう止めじゃと言うて来たがやぞ!オルトもわし等には係わりとうない!と言いゆう!」、「まあまあ!弥太郎は商売のことしか頭にないがか!」と惣之丞が弥太郎をけなす、「折角の!エゲレス流のビジネス!わしの商売が上手う行きかけた時に!どういてこんなことに!ちくしょう!」弥太郎は龍馬を責め続けた、龍馬は何も反論せずただ耐えた!・・・
そこへ緊急時伝達係の英四郎がやって来て伝達した「坂本さん!急いで隠れてくれんですか!」、『どういた!?』、「奉行所が坂本さんを捜して乗り込んできました!」、『はあ!?』、「わし等が押さえとる間に!早よう!早よう!急いで下さい!」、龍馬は急いで外へ出て行った、そこへ捕り手達が押し寄せてきた「こら~~!神妙にいたせ!坂本龍馬は何処に居るとか!?」、ここには居らん!何のようだ!乾堂が現われ言った「坂本様がエゲレス人ば殺した疑いの在ると言うことばい!」、言いがかりもええ加減にせえよ!坂本は何処に隠れたか!?「だから!ここには居らん言いよろうが!」太郎が吼えた!・・・
「止めや!止めや!」惣之丞が怒鳴って、そのごった返した場を静めた、「わしを奉行所に連れて行きや!わしが奉行様と話をする!」、沢村さん!「大丈夫じゃ!わしがまある~~う!治めて来るきのう!皆んな!留守を頼むき!」脇差を太郎に渡して「さあ!行くぜよ!」と惣之丞は連行されて行った、太郎と寅之助が外に隠れていた龍馬を呼びいれた、「龍馬さん!長崎奉行は間違いなく龍馬さんを狙っちょりますき!」寅之助が言った・・・
「どうする積りぜよ!龍馬!」弥太郎が問い詰めた、『こうなったら!エゲレス人を斬った奴をわし等で捜すしかないのう!』、「捜す!?」、「そうや!わい等で探すしかないわ!」陽之助が士気を鼓舞した、おお!そうじゃ!そうじゃ!急ぎや!皆んな出て行った、突然!高慢な態度で弥太郎が龍馬の胸を強く突いて命令した「おまんはここに隠れちょれ!」、『弥太郎!?』、「おまんが今!うろうろしよったら!余計!難儀なことになる!」、龍馬はただただ堪えるしかなかった・・・
長崎奉行所で朝比奈による惣之丞の取調べが始まった、「坂本龍馬は今!何処に居る?」、『知りません!』、正直に申うさんか!、『知らんがじゃ!』、嘘をつけ!、「それほどまでに坂本を守りたいのか!?うん!さぞ美しい絆じゃのう!」、『海援隊は!日本を異国から守るため!命がけで働きゆう!』、黙れ!、『エゲレス人相手に刀を抜くような愚か者は海援隊には一人も居りません!』、黙らんか!、「世の中が乱れて来ると!必ずお前達のような奴が現われてくる!そうゆう奴は大概こう言う!自分たちは正しい!となあ!わしはそう言うふざけた奴等が大嫌いだ!坂本はお前達の英雄かもしれないが!わしに言わせれば始末に終えない謀反人に過ぎん!坂本龍馬は何処だ!」、『知らんがですき!』、「連れて行け!」、立て!・・・
そのあと、お元が取調べのために朝比奈の元に呼ばれた、「お元が参りました!」、お元は朝比奈の前に正座して両手をついた、「エゲレス人が殺されたその場にお前も居たそうだなあ!?」、『はい!』、「逃げた男は白い着物だったか?」、『はい!』、「顔は見なかったのか?」、『見えませんでした!』、「坂本ではなかったのか?」、『違います!』、「顔を見てないと言うに!何故そう言い切る?お前!何時からあいつの味方になった!?わしの目を観ろ!この長崎を治めて居るのは!このわしだ!このわしだ!で坂本龍馬は何処に居る?」、『存じません!』、「下がれ!下がれ!」、お元は奉行所から開放され出て行った・・・
寅之助と太郎が街に出て聴き込みに出ておった、『今、そこで聞いたけんど!エゲレス人を殺されたがを!おまん!観たそうじゃのう!?』、稲造が答えた「はっ!あの時は腰をぬかしてしもうて!」、やっと目撃者を見付かった!『どういて!どういて!下手人は海援隊じゃと思うたがぜよ!?』、「わしは白か着物を見たと申しただけで!」、『他に奉行所には何と言うたがぜよ?』、「他に?・・・あっ!しかんしか!言う声ば聞いただけで!」、『それは福岡の言葉ではないかえ!?』、寅之助等は有力な証言を得たがじゃ・・・
弥太郎がお元の置屋を訪ねて来た、『お元に話しがあるがじゃ!会わせてくれ!』、「お元は居らんとです!」と女主人が答えた、『居るがじゃろう!』弥太郎は強引に上がりこんだ、「やめて下さい!やめて下さい!お侍様!」、『お元!』、きゃ~~!最初の部屋には1人の芸子がお座敷に出る準備をして居た、『わしは!どういても下手人を捜さんといかんじゃけ!お元やったら何んか知っちゅうはずぜよ!頼む!この通りじゃ!頼む!』弥太郎は土下座した、「頭を上げてください!」、『頼む!頼むき!』・・・
そこへ、奉行所からの捜査隊が令状もなしに踏み込んできた!「長崎奉行所である!お元の部屋を検(あらた)める!」、バッタン!ガッチャン!あら捜しが始まった!『どういて!お元の品物を調べるぜよ!?』弥太郎が役人に訊く、「あの女は坂本龍馬とつるんでおる!」、やめて下さい!、あっ!その時、お元の小物入れから十字架の刻印の入った簪(かんざし)が出てきたではないか!あっ!ああ~~!わぁ~~!キリシタン!?捕り手達が恐れ慄(おのの)いていた、『お元がキリシタン!?』、お元よ!心痛めるでない!十字架の簪なんどくれてやれ!そんなものは偶像に過ぎない!大切がはイエス様を救い主として受け入れ信じることぜよ・・・
その時、お元は大浦天主堂にある隠れ礼拝堂で祈りを捧げていた『マリア様!どうかお守りくださいませ!天にいまします我等の父よ!御名が崇められますように!御国が来ます様に!御心が天でなされます様に、地でも行われます様に!我々に日々の糧を今日もお与え下さい!我々の負い目をお赦(ゆる)し下さい!我々も、我々に負い目のある人達を赦させたまえ!我等を試みに逢わせないで、悪からお救いたまえ!、そこに奉行所の捕り手等が雪崩れ込んできた「奉行所じゃ!」、逃げろ!こっちじゃ!お元は逃げた!外じゃ!追え!逃がすな~~!あ~~!信者達は懸命に役人どもの行く手を阻(はば)んだ!・・・
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その頃、龍馬は居た堪れない気持ちを押し殺して、小曾根乾堂所有の倉庫に一人寂しく隠れておった、そこに弥太郎がやって来た、『オッ!弥太郎!?どうしたかえ?』、「お元が!キリシタンやったがじゃ!わしの目の前で奉行所の役人が見付けたがじゃ!お元の部屋からキリシタンの印を!ほんで!お元は何処かへ逃げゆうらしい!」、『何じゃと!』、「何をする気じゃ!龍馬!」、『お元を捜すがじゃ!』、「何~!?」、『お元はずっと!ずっと!神に助けを求めちょったがじゃ!それが偶々(たまたま)異国の神様やったと言うことぜよ!』、龍馬は駆け出して行った・・・
「龍馬!お元がキリシタンと知っちょったがか!?知っちょったないがか?龍馬!」弥太郎は走っていく龍馬の背中に浴びせた、そこへ、陽之助、太郎と寅之助が駆け込んできた!遅かった!一足遅かった!龍馬が去ったあとじゃった!「下手人が分かったんや!」陽之助が弥太郎に教えた、「何~!?」、「エゲレス人を殺したんは!福岡藩士や!」、「それ!ほんまかえ!?」・・・
朝比奈は、隠密として働いてくれていた、お元の簪を見詰めながら漏らした「あの女がわしに知らせてくれたことは!何から何まで出鱈目(でたらめ)じゃったのか!?」、失礼します!土佐商会の岩崎弥太郎なるものが!朝比奈様にお目通りを願ごうて居ります!、「ぬかせ!それどころでは無いわ!」、弥太郎が役人の制止を振り払って上がり込んで来た『離しや!離しや!』朝比奈の前にふれ伏して言った、『土佐商会主任!岩崎弥太郎で御座います!わしどもの調べで!エゲレス人水夫を殺したがは福岡藩士であると分かりました!』、何~!・・・
『あの日の夜!福岡藩邸に戻って来た金子才吉(かねこ さいきち)なるもんが!エゲレス人を斬ったがは自分であると申し述べ!その場で切腹いたしたとそうで御座います!事の次第はこちらで御座います!』弥太郎はその申し付けを朝比奈に差し出した、『決して間違いは御座いません!どうか!福岡藩にお確かめ下さいませ!』、ところが!あっ!朝比奈はそれをその場でやぶりきざみ!叩き付けて言った!「坂本龍馬をそうまでして!かばいたいか!?」・・・
すると、弥太郎は威厳を保ちながら立ち上がって言った『お奉行様がそこまで坂本をお疑いでしたら!土佐藩で取り調べます!』、「この長崎ではなあ!土佐藩と言えども!わしが認めねば商売など出来ん!さっさと!坂本を引き渡せ!」、『お待ちください!濡れ衣で御座います!』、「下がれ!」、『濡れ衣で御座います!お代官様~~!』商売の話になり、自分の身が危うくなると、弥太郎の態度が急変した!・・・
慌てて庭に降り地べたに土下座して懇願した『どうか!どうか!商売だけは!ご勘弁下さいませ!商売だけは!お奉行様~~!』、「黙らんか!下がれ!おい!摘み出せ!」、『私どもはやっておりません!無実で御座います!』弥太郎の惨めな一面が久々に露呈されたがじゃ!『離しや!離しや!お奉行様~~~!』弥太郎は抱えられながら連れ出されていった・・・その日、夕暮れが迫るとともに、雲行きが怪しくなってきた、『お元!』龍馬はお元を捜し求めながら、街中をさ迷い歩いていた・・・
引田屋の女将がお慶と長崎商人の居る座敷に駆け込んできて、お慶に助けを求めた「お元ちゃんがキリシタンやったとです!」、えっ!お元が!?、「今!捕り手に追われて行方不明になっとうです!」、猫を抱いたお慶の顔色が曇った・・・その頃、夜の帳(とばり)がすっかり降りた闇の中を、お元は追手から逃げ惑っておった、何時しか、本降りの雨が降り始めていた、『お元!何処に居る?』雨の中を龍馬がお元の行方を捜す『何処に居るがじゃ?』、捜せ~~!二人に追手が迫る!『何処に居る!逃げや!お元!』、♪ 長崎は長崎は、ワワワワ、今日も雨だった ♪ ・・・
どしゃ降りの雨の中、龍馬が階段を上ろうとした時、上段から行く手を阻むように弥太郎が立ちはだかった、『おお~~!弥太郎!お元が居らん!何処に居るがじゃ!?』、弥太郎の目が冷たく龍馬を観降ろした「おまんは奉行に捕まったら!ええがじゃ!」、『はあ!?』、「おまんの所為(せい)で!わしの土佐商会も!お元の人生も!わやくちゃになったがじゃ!お元は!当たり前の幸せを望んじょっただけぜよ!それを壊したがは!おまんぜよ!龍馬!長崎奉行はのう!誰がエゲレス人を殺したかは!どうでもええと言いゆう!幕府に刃向かう!おまんを捕まえたいだけぜよ!お元は!そして!わしもじゃ!おまんのトバッチリを受けてしもうたがじゃ!」弥太郎は被害妄想に捕われていた・・・
哀れ!龍馬は何も言わず弥太郎の、のたまうことを、ただ聴いているだけじゃた、更に弥太郎は悪態を吐き続けた「龍馬!おまんはのう!おまんは!疫病神(やくびょうがみ)ぜよ!折角わしの商売が上手もう行きかけたち!いろは丸を沈めただの!エゲレス人を殺しただの!いつも!いつも!おまんに邪魔されて!龍馬!わしの前から消えてくれや!もう消えてしまえや!」と言い捨てて弥太郎は去って行った、ずぶ濡れのまま龍馬はただ、河島英五が“酒と泪と男と女”の中で歌ったように、どうしようもない悲しさに包まれていた・・・
次の朝、お元は大浦の浜をさ迷っていた、どしゃ降りの雨に打たれ八月とは言え、さぞお元の身体は衰弱して居っただろう、震えながら砂浜に跪(ひざまず)き首から掛かった小さな十字架を握り締めていた、そして岩場の洞穴に吸い寄せられるように入って行きひれ伏した、そこへ龍馬が『お元!』浜辺の捜索にやって来た、『お元!何処じゃ!何処に居る!お元~~!』龍馬は叫んだ、お元がその声に反応した!が頭真っ白!パニクリ状態のお元は更に奥へ這って行った、『お元!お元~~!何処じゃ!お元!何処じゃ!お元~~~!』まるで我が妹を捜すように龍馬は全身全霊を込めてお元を捜した・・・
龍馬はその洞窟に気を止め近づいて行った、そして遂にお元を発見した☆『お元!わしじゃ!』、お元は我を忘れて半狂乱になった!「キャ~~!キャ~~~!」、『わしじゃ!龍馬じゃ!坂本じゃ!』、お元が龍馬に気付き正気に戻った、『分かるかえ!坂本龍馬じゃ!』、「坂本さ~~ん!」お元は龍馬にすがり付いて泣きじゃくった、『もう大丈夫じゃ!わしが!わしが!守っちゃるき!うむ!大丈夫かえ?どいた?どういた?』、「皆んなの笑ろうて暮らせる国は!何処に在るの~~!?」、龍馬には返す言葉が見付からなかった、お元をシッカリ抱き締めて繰り返した『大丈夫じゃ!大丈夫じゃ!大丈夫じゃ!』、「あ~~ん!あ~~ん!坂本さん!」・・・
長崎のイギリス領事館で駐日公使パークスがイカロス事件に憤慨して、通事のサトウに土佐藩への抗議文を書かせておった、We are ready for a war!(戦いの支度は出来ている)、Tosa killed our nationals and talked away out!(我が国民を殺害して言い逃れに終始すらなら)、So!We must prepare ourselvwes toward war!That's it!(土佐藩は戦争を覚悟せねばならない、それでいい)、I'll translate and send it!(では訳して土佐へ送ります)サトウが受けた、Immediately!(直ちに)、Yes, sir!(承知しました)・・・
執事が来てパークスに伝えた、A man from Tosa-clan wants to see you!(公使に会いたいという―)、His name is Sakamoto!(サカモトと名乗る土佐藩士が来ています)、Shall I send him away?(追い返しますか)・・・No!Bring him in!(構わん、通せ)、From Tosa-clan!?(土佐藩士ですよ)、Exactly!(分かっている)、サトウがホールに行くと、そこには二人のボディガードに抱えられピストルを突きつけられた龍馬が居た、サトウは龍馬を執務室に招き入れた、ピストルを突きつけられたままじゃった・・・
『わしは海援隊隊長!坂本龍馬ですき!イカロス号の水夫を殺したがは!わし等海援隊ではのうて!福岡藩士じゃ!』、サトウが通訳する、「He says Killer is not Kaientai but Fukuoka-clan!」、サトウが龍馬に言う「長崎奉行は海援隊の仕業だと言っています!」、『それはのう!わしを下手人に仕立てたいだけじゃ!わし等は徳川幕府を倒そうとしゆう謀反人じゃけんのう!』、「He says he's blamed for frame-up, because he is a traitor to the Shogunate!」・・・
『けんど!わし等とエゲレスは味方同士ではないかえ?エゲレスやち幕府を倒すために!長州と薩摩の後ろ盾をしゆう!』、「He says we shall become enemy!If England breaks the back of Choshu and Satsuma against Shogunate!」、『つまり!わし等、海援隊とエゲレスは同じ目的を持っちゅうことぜよ!』、「We raft the same things!」、龍馬は力説した『パークさん!パークスさん!わし等はのう!この国を!この日本を世界に誇れる!エゲレスのような立派な国にするために!必死に働きゆう!その!わし等がエゲレスの人と刀を抜いて喧嘩をしゆう場合ではないぜよ!』・・・
サトウが龍馬に迫る「あなたの言っていることには証拠はない!命を懸けて!無実だと言えますか?」、『確かに!証拠は無いがじゃ!けんどのう!わしの!この命は今!エゲレスにやるわけにはいかんぜよ!わしには!まだまだ!やるべきことが山ほどあるがじゃき!』すると龍馬は正座して訴えた『どうか!どうか!今は!この坂本龍馬の命を新しい日本のために使わせて貰えませんろうか!?お願いしますき!』、サトウはパークスに耳打ちした「He could be useful!toward ―!(この男は役に立つかと―)」・・・
パークスが龍馬に直面して言った「I've heard about you from Glover!(評判通りの男のようだ)、I've heard Sakamoto owns ambitious mind and wants to change Japan!」、サトウが色を着けて訳す「坂本龍馬と言う男は薩摩と長州を結び付け!日本を変えようと言う高い志しを持つ男と言っています!」、「Japan must change!Can you do it?」、「この国は変わらなければいけません!坂本龍馬さん!日本を変えられますか?」、『必ずや!必ずや!この日本を新しい国にして見せますき!』と龍馬は約束したがじゃ(サトウ暗殺首謀説もあるがどの様な根拠があるのだろうか??)・・・
パークスは龍馬に手を差し伸べShake-hand を求めた、龍馬は立ち上がりパークスの手をシッカリ握り締めた、『ありがとう御座います!ありがとう御座います!』、パークスは龍馬の肩を叩き、龍馬の熱意に答えた・・・パークスが決断した「We go to the Cmmisioner's office!(奉行所へ行こう)」、「We must protect them!(彼等、海援隊を守らなければ)」、サトウが頼もしく答えた「Yes!Sir!」、龍馬には大切な願いがあった、パークスを引きとめて言った『パークスさん!ちっくと待ってつかわさい!もう一つ!もう一つ!お願いが有りますき!』、(さあ!何だろう?このあと直ぐ分かるからね)・・・
長崎奉行所の中庭を眺めながら朝比奈がVIPのステータスである葉巻をプカプカ吹かして居た、その横にはペットのカメレオンが止まり木に居た、その奥には岩堀等事務方が執務に就いていた、そこへ不機嫌そうな弥太郎が通されてきて正座して申した『この度は沢村惣之丞を解き放って頂き!まっこと!ありがとう御座いました!土佐商会の商いも今まで通りということで!よろしゅうお願い致します!』深く頭を下げた、『では!これで!』弥太郎が下がろうとした、「これで!済んだと思うなと!坂本に伝えておけ!」、『それはご自分で!』、何じゃと!、『わしはもうあの男には係わりとうないですき!』弥太郎はさっさと奉行所を後にして行った・・・
晴れ渡った大浦の沖にはイカロス号だろうかイギリス船が停泊しておった、浜には本船とを連絡する沖仲の小舟が砂浜に曵き上げられ船頭が待機していた、その廻りには一人の水夫と商人らしき紳士が立っていた、そこへ龍馬が走ってきて何かをその商人に渡していた、龍馬の後からお元とお慶が会話を交わしながらやって来た、お慶のお供も二人居た、「お元ちゃん!くれぐれも身体には気をつけんしゃい!」、どうやら龍馬がパークスに寄せた!もう一つの願いは!このことじゃった、「お慶さん!この御恩は一生忘れません!」、お慶がお元を身請けしてくれていたがじゃ☆きっと旅費も出してくれたがじゃ☆・・・
龍馬が別れを惜しんでお元に言った『パークスさんが!おまんを温こう迎え入れてくれるよう!頼んでくれちょるけ!なんちゃ心配するな!これから!おまんは堂々とマリア様でもイエス様でも拝める国に行けるじゃき!』、「こげん芸子ぱ!こげんキリシタンぱ!お助け下さり‥‥」お元は言葉に詰まりながら龍馬に感謝した・・・
『泣きなや!泣きなや!お元!‥‥もう行け!』、「坂本さん!坂本さんば志しを成し遂げて!日本の生まれ変わった国になったら!戻って来ても!よかですか!?」、『当たり前じゃ!当たり前じゃ!その時はのう!その時は!おまんが堂々と!イエス様を拝める国にしちゃるき!そうなっちゅう!わしはのう!わしが皆んなが笑おうて暮らせる国にしちゃるき!』・・・
こんなに人の温かさに触れお元は感謝に満ち溢れていた「ありがとう御座います!ありがとう御座います!」、『その時まで!達者でのう!』、「ありがとう御座います!」、『約束するき!うん!もう行け!皆んな!乗りや!』、お慶もお供も加わって全員で小舟を水上まで押して行った、『達者でのう!お元!』、「お元ちゃん!元気でねえ!」、「お元気で~~~!」、『達者でのう!お元~~~!』、こうして、お元は念願叶い!日本を離れ!憧れの異国の地へ旅立って行ったがじゃ・・・
海援隊本部に捕われていた惣之丞が久しぶりに戻って来た、おお~~!惣之丞!どないしとった!大丈夫やったがか!惣之丞は元気に気勢を上げた『浮かれちょる暇は無いがじゃ!我等!海援隊は大政奉還!目指して行くぜよ!』、お~~~!‥‥奉行所で朝比奈が刀を抜き、刃を見詰めておった、まさか!朝比奈が龍馬暗殺を企んでいたのではあるまいか!この時!龍馬の死はあと三月(みつき)に迫っちょったがじゃ!・・・