慶応二年(1866年)一月、京に向こうちょった龍馬と三吉慎蔵が訪ねたがは、大坂・大和屋で近藤長次郎の帰りを待つ妻・お徳と百太郎のもとに、生前、長次郎が上野写真館で撮ってもらった遺影を届けるためじゃった、『長次郎は最後までお徳さんと百太郎のことを心配しちょったがや!』、亡き父の遺影を見て何も知らない百太郎が「これは?これは?」とお徳に尋ねようとしちょった・・・
お徳はフォトフレームに納められた長次郎の遺影を見詰めながら「旦那様は何か悪いことをしたんですか?」と龍馬に尋ねた、『否!長次郎はもっともっと学びたいと思うちょっとがや!けんど、そのことで社中のみんな~に迷惑をかけるがを恐れちょったがや!長次郎が腹を斬ったがは誰よりも自分に厳しいかったがぜよ!』、
「うちの旦那様は立派なお侍さんになれたんですね!?旦那さんの文(ふみ)には、いつも、日本の国を守りたい書いて有りました!」、「坂本さん!旦那様の分まで、どうか志しを成し遂げてください!」、『必ず!約束しますき!』と龍馬は己の志しを新たにしたがじゃ!・・・
『我等15万の兵がこれら5箇所から長州に攻め入ります!芸州口が広島藩と福山藩が、・・・松山藩と徳島藩が、そして最後に萩口が薩摩藩と久留米藩が・・・』、大阪城では慶喜が家茂に目前に迫った長州征伐の計画を報告しておった、「薩摩藩は大丈夫なのか?いまだに兵を出すとは言うておらんではないか!?」家茂が慶喜に迫った、『ご心配には及びません!薩摩には我等幕府に力を貸すしか道はございません!』・・・
けんど、この頃、憎みあう薩摩と長州を結び付ける言う驚くべき計画が坂本龍馬の手で進んじょったことはまだ幕府には伝わっておらんかった!龍馬は桂と西郷が京の薩摩藩邸にて薩長同盟の交渉を始めるところまで漕ぎつけておった!桂は木戸貫治と名を変えて、情勢緊迫する京に入った!桂等は「鞘絵会(さやえかい)にお招きに預かりました越前藩士・木戸貫治の一行であります!」と偽って薩摩藩邸内への潜入に成功した!・・・
けんど、けんど、この動きは直んぐに会津藩主でもある京都守護職・松平容保(かたもり)に探知されたがじゃ!申し上げます!木戸貫治っつう男が薩摩藩邸に入ったみていです!、「何?木戸貫治!?何者だ!」、ただ今、調べさせておりますが、長州藩士っつう噂も!、「薩摩藩邸の見張りを怠るな!」、ははあ~!・・・
薩摩藩邸に入った桂は西郷と薩摩藩家老・小松帯刀が待つ奥座敷に通された、「どうぞ、もっと近こうに!」、『長州藩政治登用係・木戸貫治であります!西郷さん!ようやく、お目にかかりましたね!』と桂は木戸貫治のままで西郷に接した、「下関では木戸さ~に大変無礼なこつしてしまいました!」と西郷は謝罪した、『いいえ!あれはあれで良かった!そもそも長州と薩摩が容易く手を結べるはずがない!それがよう分かりました!』・・・
「それでは始めもんそう!」西郷が進行役を買って出た、小松が切り出した「薩摩と長州が手を結ぶに当たっては、幾つかの取り決めをしとかななりもはん!」、『お待ちつかわされ!立会人はおられぬのか?』桂は牽制する、「おいどん達が信用できんとな?」西郷が桂の出方を伺う、『僕は!長州の命運を背負ってここに居るんです!話は坂本君が来てからにしましょう!』少し声を荒げて言った、「坂本!?」小松にはピン~とこなかったが、「坂本龍馬ごわすか!」西郷は心得ていたがじゃ・・・
その頃、龍馬と三吉は薩摩藩邸を探し当て『おっ!これや!行こう!』と門に近づこうとしたとき、薩摩藩邸周辺を見回っていた大勢の新撰組が荷車に荷を積んだ一人の男を詰問した!待て~~!荷の被いを開けろ!おぬしはここで何をしとる!怪しまれたは鳥篭屋に化けた弥太郎だった、弥太郎は捕まり壬生の新撰組屯所に連れて行かれた、縄で縛られたあげく滑車で吊るし上げられ、竹刀(しない)にコツかれ拷問まがいの取調べを受けるハメとなったがじゃ!「あっ!痛い!止めてくれ~~!止めてくれ~~!」・・・
弥太郎への取調べは直も続いておった、『ああ~!言う!言う!わしゃ!岩崎弥太郎!岩崎弥太郎で御座います~~!』早くも正体を暴露し始めたがや!「京には何をしに来た~~!」、『それだけは!それだけは!口が!口が裂けても~~!』すると竹刀が容赦なく飛んでくる~!『ああ~!言う!後藤象二郎様に命じられて来たがです~~!』・・・
『土佐!土佐が世の中の動きから遅れたらいかんき!薩摩藩の動きを探って来いと言われたがです~!ああ~!言うてしもうた!』あとの祭りじゃった!この馬鹿たれ弥太郎には隠密の素質の欠片もなかったがじゃ!「こいつはペラペラ喋りすぎる!」近藤勇も呆れちょった!この後、おまけのボコボコの袋叩きが弥太郎に振舞われたがじゃ!・・・
そんなこととも知らず、土佐の岩崎邸では家族が長男の久弥を囲んで弥太郎の噂をしちょった、「久弥!おとんは今、京の都におるがぞね!お役目ちゃんと果たしゆうろうかねえ?」と喜勢が案じる、美和が疑う「まっこと!弥太郎に出来るやろかねえ?薩摩の動きを探る言う隠密のようなことが!?」、弥次郎はわが子を信じてやりたかった『人の顔色を伺うがは得意じゃぞ!あいつは!』・・・
弥之助が正論を述べ始めた「それだけでは隠密は務まりませんき!父上!」、『分かっちゅ!』、「身分も名も隠しておかんといかんがです!」、『分かっちゅ!』、「兄上のお役目は後藤象二郎様からの密命ながですき!」、『分かっちゅう言うよろうが!このクソガキが!』弥次郎にはそんなこと分かりきったことじゃったがや・・・
伏見・寺田屋に龍馬と三吉がやって来た、『ここや!』龍馬は中に入るとお登勢とお龍を探した、『おらんのう!?』、お龍は裏で大根を干す作業をしておった、龍馬は『お龍どの!はは~!元気にしちょったかえ?』と声をかけると、お龍は龍馬の袖を掴み中へ連れ込んだ、『どういた!?』、そこへ血相を変えてお登勢がやって来た!『おお!お登勢さん!また世話になるがぜよ!「新撰組が土佐脱藩浪士を捜しています!坂本さんのことですかねえ?」・・・
『そうかも知れんのう!けんど、わしゃ!なんちゃ~悪いことあしちゃせんけんのう!?』大刀を外して奥へ入ろうとする龍馬に、お龍が「京から離れといてください!命を獲られたら何んにもならあしまへん!坂本さん!」、『けんど、逃げるわけにはいかんちゃ!』、お龍は龍馬と三吉を二階の部屋へ通した、『すまんのう!』、お龍は部屋の外に出たが暫らく中の話を聴いていた・・・
三吉は部屋のあちこちに目を配り、窓から外を眺めてから障子戸を閉めた、『薩摩藩邸に行くがは夜中になるまで待ったほうがええのう!』、「そうしましょう!夜中になったら出かけましょう!」三吉が答えた、「邪魔するもんは私が斬ります!」、『人斬りはいかんぜよ!三吉さん!騒ぎになってわし等の企てがばれてしまうけんのう!わしゃ必ず桂さんの処へ行くき!長州と薩摩を結び付けるがは、どういても、やらなイカンことじゃけ!』・・・
すると「分からん!」と三吉が言った、『えっ!?』、「坂本さんは土佐の下士やと聞きました!何んでそげの人が長州と薩摩を結び付けるどもと言えるんか?何んで近藤長次郎殿の女房に、必ず日本を守るどもと、あんたは約束出来るんじゃ!?」、『はははは~~~!』、「何が可笑しいんですか?」、『高杉さん等からは三吉さんは無口な人じゃと聞いちょったけんど、ほんまはお喋りやったがか?三吉さん!はははは~~!』・・・
「訳の分からんものを守る言われて、あれこれ考えんやつは居らんですよ!」、『そうちゃ!その通りじゃのう!三吉さんの言う通り、わしは土佐の下士じゃった!けんど、その土佐も捨ててしもうたがやき!わしゃ、もう今は何ちゃ~ない!ただの日本人ぜよ!』、「ただの日本人!?」、『力の無いもんでも本気で声を挙げ本気で動いたら!必ず!必ずこの国を変えることが出来るじゃき!』龍馬は熱く語ったが、「さあ?」三吉にはピンと響かなかったようだった・・・
薩摩藩邸では薩長盟約の立会人となる龍馬を待ちながら西郷と桂が話をしとった、「ないごと!坂本龍馬じゃとごあすか?薩摩と長州と手を結ぶちゅうことは徳川幕府に向こうて戦を仕掛けるちゅうこつじゃ!そげな大事な話し合いを一介の浪人がおらんと決められん!始められんなんじゃと!」西郷が桂に訊いた・・・
『誰か居るんですか!?これから我々が交わす約束は外へ宣言するもんじゃありません!薩摩と長州だけが知る密約です!じゃからこそ!立会人は坂本龍馬じゃなくちゃならん!僕は彼を信用しちょるからです!西郷殿!彼を信じたからこそ我々はここに居られるんじゃないですか?』、襖の外で誰かがピストルを手にして聞き耳を立てて居ったがじゃ!油断も隙もあったもんじゃない!実に恐ろしい世の中じゃった!・・・
龍馬が部屋の窓を開けると外は雪になっちょった、そこへ「寒うなってきましたなあ!」お登勢が火鉢にくべるスミを持ってきてくれた、『おお!お登勢さん!すまんのう!けんど、わし等のことはもう気にせんとってつかわさい!夜になったら出て行くき!』、「龍馬はん!わてと初めておうた時のこと覚えてはりますか?」、『勿論じゃ!覚えちゅう!』、「龍馬はんはわてが、お母上にそっくりやと言うて!わてはお母上になったつもりで“龍馬!”と言うてあげたのに!似ちょらんのう!と言いよして!」・・・
『あれは誠っこと申し訳なかった!忘れてつかわさい!はは~!参ったのう!』、「忘れません!わてはあの時から坂本さんの母代わりのつもりでおりますのや!息子が命がけの仕事に向かおうとしている時に気にならん訳はないやろう!世の中のどんな大変なことより息子のことの方が心配やないですか!」お登勢は泣いていた、龍馬はお登勢に向かって正座し言った『ありがとう!けんど!けんど!わしゃ決して!死にはせんき!心配せんでつかわさい!』、「ありがとう!龍馬!」・・・
『そう言うたら、どいて今日は店を閉めちゅうかぜ?』、「お龍ちゃんに頼まれたんや!坂本さんを新撰組からかくまわないかんてうてなあ!」、龍馬は雪が舞う井戸端で黙々と水仕事をしているお龍に背後から近づき別れを告げにきた『お龍殿!わしがしゆうとしていることを教えるけん!わしゃのう!薩摩と長州を結び付けて、徳川幕府が支配しちゅう世の中をかえようとしゆう!幕府は異国の力を借りてなりふり構わず日本を押さえつけようとしゆうがじゃ!このままでは、この国は異国に乗っ取られてしまうがぜよ!』・・・
『わしゃ、これから幕府に追われる人間になろう!もうここに戻って来ることはないき!わしを心配してくれるがは、これで最後にしてくれや!』お龍は暫らく何も言えず、ただ龍馬の目を見詰めるだけじゃった!お龍を残し龍馬ははけていった、お登勢の視線を無視して龍馬は慌しく階段を登り部屋に消えた、お登勢は呆然とたたずむお龍に「お龍ちゃん!」と声をかけた、お龍はやるせない気持ちに耐え切れず足早に消えていった、龍馬は一人部屋にたたずみ、外で「お龍ちゃん!」と叫ぶお登勢の声を聴いておったがじゃ・・・
壬生の屯所では、執拗な拷問を受けたか、弥太郎が気を失い水を浴びされておった!そこへ、大勢の役人が押し込んできた!「誰だ!」、『我等は京都見回り組みである!』、『おぬしが近藤勇か?怪しいものを見付けたら!まず見回り組みに知らせよと言うておいたばずだぞ!』と上から目線で来た!「我等も皆様方と同じく!京の都を守るお役目を頂いております!」近藤は屈辱を抑えて言った、『わし等は将軍家の直参(じきさん)だぞ!控え!控え!控え~~!』・・・
見回り組み与頭(ともがしら)である会津藩士・佐々木只三郎(たださぶろう)が近藤に近づき小声で命令した!『控え!』、怒りを抑えて近藤は膝ま付いた!他の新撰組隊員達も従った!『うっふふふふ~~!我等は薩摩と長州に不穏な動き有り!そこには土佐の脱藩浪人が間に入って居る!と聞き及んでおる!だか、近藤!お前には係わりの無いことである!のう!お前等はただの人斬り組みじゃろがあ!』佐々木は近藤の頭を泥まみれの地面に押さえつけた!『はっはははは~~!刃向かうか?刃向かわんのう!』、あ~~憎たらしい!・・・
その時!タイミングよく、“いらんこと言い”の弥太郎が目覚め朦朧(もうろう)と夢うつつに喋り始めた!『龍馬じゃ!坂本龍馬じゃ!薩摩と長州の間に立つがは坂本龍馬しかおらんがじや!』、何んと申した!何んと申した!今もう一度申してみよ!何んと申したあ~~!、恋敵『龍馬だと!?』と近藤は憎しみを込めて言い捨てた!・・・
伏見に夜の帳が下り龍馬が京の薩摩藩邸へ出かける身支度をしておった『武市さん!以蔵!長次郎!皆~~な!行って来るぜよ!』、お登勢が帳場で出かけていく龍馬と三吉を見送ろうとしていた、龍馬はお登勢に向かって別れを告げる『ほんなら!お達者で!』と一礼した、「そんな!これが今生の別れみたいな言い方!止めておくれやす!」、『そうじゃのう!お龍は?』、「さっき、出て行ったきり!」、『そうかえ!ほんなら、よろしゅう伝えてつかわさい!』龍馬と三吉は裏口へ向かうとした・・・
その時、誰かが表戸を激しく叩いた!「うちどす!開けておくれやす!」、お龍が一人の侍を連れて入ってきた!三吉が槍を構えた!「この方が坂本龍馬さんです!」お龍がその侍を龍馬に引き合わせた、「薩摩藩の吉井幸輔ちゅ申します!」(龍馬が最も親しくなった薩摩藩士は西郷でもなく小松でもなく吉井じゃった!)「西郷さ~と木戸さ~は藩邸を出て!小松帯刀さ~の屋敷に移られ申した!こんおごじょが坂本さ~がここにおられっちと知らせててくれたとでごあす!小松さ~の屋敷へあたいがご案内いたし申す!」・・・
三吉はうなずき吉井のあとを付いて出た、龍馬はお龍に言った『おまん!なんちゅう危ないことを!』、「土佐のお侍さんが新撰組に捕まったと聞きました!どうか、お気をつけておくれやす!」、お龍は握り飯を竹皮に包んで龍馬に渡して言った「うちは!うちは!ずっと坂本さんのお役に立ちたい!これでおしまいやなんて嫌どす!お役目が終わったら!ここへ戻って来ておくれやす!」、お龍と龍馬はじっと互いの目を見詰め合った・・・
『分かった!行って来るき!」、お龍と龍馬との本当の愛が通じ合った瞬間じゃった☆龍馬はおにぎりの包みを懐に仕舞い、お登勢の差し出した傘を受取ると、一礼して寺田屋をあとにした、「お気をつけておくれやす!」とお龍は龍馬を見送った・・・
京都守護職上屋敷に新撰組の近藤が情報を持ってやって来た、『申し上げます!薩長の間に立って悪事を企む土佐の脱藩浪人は坂本龍馬に御座います!』、「坂本龍馬!?何んでそう言いきれるんだ!?」、『坂本龍馬には底知れぬずぶとさがあるからに御座います!』と近藤は報告した、「見回り組みに言うて、その坂本なにがしを捜させろ!」、はあ~!『恐れながら!坂本は伏見の寺田屋を定宿としております!お命じ頂ければ!・・・』と近藤が買って出ようとしたが、「それは後回しにせよ!近藤!」となってしもうたがや・・・
雪の中、龍馬と三吉は吉井等とともに小松邸に向かっておった、突然思いついたように、龍馬が言い出した!『ちっくと、待ってつかわさい!わしは新撰組の屯所に行ってくるけん!』、「何言うちょるんじゃ!」三吉は驚いた!『わしに間違えられ捕まってしもうたもんを、ほっちょく訳にはいかんき!』龍馬が行こうとした、「木戸さんと西郷が待っちょんぞ!日本を守るんじゃろ!坂本さんは!さあ!」と三吉は龍馬を止めようとした・・・
しかし、龍馬は聞かず『直んぐ~~に!戻るき!』龍馬は屯所へ急いだがじゃ!「あっ!すまん!ここで待っててくれ!」三吉は吉井等に告げ龍馬を追った!屯所の手前で龍馬に追いついた三吉は「坂本さんの代わりに、わしが行きます!」、『そんなわけにはいかん!』、「坂本さんは小松さんの屋敷に行かなならんのじゃ!大事なお人なんです!坂本さんは!」、『三吉さん!』、と擦(す)った揉(も)んだしていると、出がらしになった弥太郎が新撰組隊員達に抱えられて屯所の門から出てきて通りに捨てられた!そこには鳥篭も一緒に捨てられだがや・・・
『鳥篭!?』、龍馬と三吉が弥太郎に近づく、『おぬし!おぬし!』龍馬が揺さぶる!「なんや!おまん!?」、『やっぱり!弥太郎じゃないかえ!弥太郎!わしじゃ!龍馬じゃ!』、「あ~~!龍馬~~!」、『とういて?ここにおるがや?』、龍馬と三吉は弥太郎を引き摺っていき屯所から遠ざけた、「新撰組に捕まってしもたがじゃ!新撰組に~~!」弥太郎は泣き出した、「坂本さん!この方はわしが手当てするがで、坂本さんは行ってつかわさい!」、『けんど!』、「早よう!」、『はい!頼むき!』、「龍馬!わしを置いて行くきか~~!」弥太郎の惨めな姿があったがじゃ・・・
『お待たせして申し訳ない!行くぜよ!』、龍馬は無事、吉井等と合流できた、その夜、京のあちこちで見回り組みのガサ入れがあった!「怪しきもの!刃向かうもの!全て捕えよ!」、小松邸に桂と西郷が龍馬等の到着を今か今かと待っておった・・・龍馬と吉井等は見回り組みの目を交わしながら小松邸に急いだ、そして龍馬等はやっとの思いで小松邸に辿り着いた!「来あったか!?」、「木戸さ~!坂本さん等が来やした!」、「西郷さん!坂本さ~がおいでやすった!桂が外に飛び出し、龍馬を迎えた、「待っちょったぞ!坂本君!」・・・
『遅れてしもうて、申し訳ありませんけ!』と龍馬は西郷に詫びた、「無事で良しごあした!」西郷も出てきて龍馬を迎えた・・・「もっと近こう!」、慶応二年(1866年)一月二十二日小松邸にて、薩摩と長州の秘密会談が始まったがじゃ!西郷と小松が桂と対面して龍馬が間に座った、龍馬がMC役を務め切り出した、『ほんなら!始めろか!まず、幕府と長州が戦になったときであります!』、西郷が意向を述べた「薩摩軍は2000の兵を京と大坂に登らせもんそ!薩摩は長州藩の汚名を濯(すす)ぐよう尽力する!」・・・
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後に日本の歴史の大きな転機とされた薩長の密約!その内容は薩摩が徹頭徹尾、長州の味方となり!幕府に対抗すると言うもんじゃった!「最後に幕府軍が一橋、会津、桑名と組んで朝廷を取り込もうとしても、薩摩はあくまで戦う!」と西郷が五つの条文にまとめられた密約を締(し)めた、「以上でよろしごあすか?」と小松が桂に同意を求めた、しかし桂は黙り込んだがじゃ!「こいでは足りもはんか?桂さん!」と西郷が訊(たず)ねたがじゃ・・・
桂は口を開いた「このままじゃ!僕は長州に帰れん!この約束はどれも長州が薩摩の助けを受ける!ちゅうもんになっちゅ!これは対等じゃない!」、「じゃどん!長州にとっては良し話ではごあんか?」、「分かっちゅう!分かっちょるが・・・」、「何か申したいことがあれば言うてみもんそ!」、「・・・・・」、それまで双方の話を聴いていた龍馬が提案した、『ほんなら、こうしませんろうか?』・・・
『今、決められた五つの条文は全て戦に関する約束事ですき!そこにもう一つ加えるがです!』、「もう一つ?」、『ここに至るまで数え切れないほどの命が失われたがです!薩摩の人等も、長州の人等も、勿論!わしの友にも死んで行ったもんが大勢おるがです!立場は違えぞ!皆んな~~!天下国家のために志を貫き通して消えて行った命ですき!ほじゃき!そのもん等の志もこの薩長の盟約に入れてもらえんですろうか?』・・・
『その一文とは“薩長両藩は誠の心を持って合体し、日本のために、傾きかけちゅうこの国を立て直すために双方とも粉骨砕身尽力する!”』、桂と西郷は見詰め合った!小松の目も輝いておった☆『これで薩摩と長州は対等ですろう!?』、西郷が言った「なるほど!おいに異論は有りもはん!」、桂も同意した「僕もじゃ!」、『ほんなら!これをもって!薩摩と長州の盟約は成った!と言うことでええですね!?』、桂と西郷は目を見詰め合い「うん!」と互いにうなずいたがじゃ!
『やった~~!』と龍馬は心の中で叫んだがじゃ!白み始めた朝もやの中、屋敷の門を出ると、そこに三吉が龍馬を待っておったがじゃ!『三吉さん!長州と薩摩はしっかり手を握りましたき!☆』、「真実ですか!?御免入りました!」三吉は泣いて喜んだがじゃ!「御免入りました!坂本さん!御免入りました~~!あ~~~!」三吉は膝まで崩れて、むせび泣いた・・・
『三吉さん!頭を上げてつかわさい!決めたは木戸さんと西郷さんじゃき!』、「否!坂本さん!あんたにお礼を言いたい!坂本さんがおらんかったら、我が長州はどうなっちょったか~~!」、『ここまでこれたがは!三吉さんのお陰ぜよ!三吉さんやち!長州を救うたがや!』、「わしが!?」、『そうじゃ!』、「御免入りました~~!」、『三吉さん!』、なんと清々(すがすが)しい朝じゃった!・・・
けんど、その情報は京都守護職・松平容保のもとに漏れ伝わっていたがや!「昨晩、薩摩藩家老・小松帯刀の屋敷にて薩摩と長州の会談が行なわれたあんべいに御座います!」、『その中味は!』、「双方が手を結んだんじゃねえべかと!隠密の知らせでは、そこには土佐の脱藩浪人が同席していたと!ふとその時、「坂本龍馬には底知れぬ図太さがあるからに御座います!」容保は近藤の言葉を思い出した、『寺田屋を定宿にしている坂本龍馬じゃ!』・・・
「寺田屋に取り手を差し向け坂本龍馬なるものを捕えるよう手配せえ~~!」、ははあ~~!それ~~!・・・龍馬と三吉は寺田屋へ向かっておった、『おお~!忘れちょった!』龍馬はぺっちゃんこになったおにぎりを包んだ竹皮を懐から取り出し、それを三吉と分け分けして食らって居ったがじゃ!「旨い!」、『ほうじゃのう!おっほほほほ~~~!』、その時、龍馬と三吉に危機が迫っちょったがじゃ!・・・