龍馬伝第2部の変わり目にも登場していたが、高知県にある“土陽新聞社”の記者である坂崎紫瀾(しらん)が郷土土佐の当時名もない維新の志士・坂本龍馬について生前、時代を共にした岩崎弥太郎を通じて取材をしておった、龍馬暗殺から15年後、1882年(明治十五年)郵便汽船三菱社長に出世していた岩崎弥太郎は千住(せんじゅ、現在の荒川区)にある“千葉灸治院”という針灸院でお灸を受けに来ているところへ坂崎記者が張り付いていた・・・
表には人力車が停まりキセルを吹かせる車夫が待っていた、土塀越しに上半身裸でうつ伏せになって治療を受けている弥太郎が見えた、相当の量のお灸が背中に盛られていた、「今や大実業家の社長が・・・、胃は前から痛みようですか?」と坂崎が尋ねた、『大したことはないがじゃ!こんなところで病院通いしゆう噂が知れたら三菱に投資しゆうもんが不安になるろ!』、「まっこと大変なもんですね、商売言うもんは!」、『生きの目を抜く世界ぜよ!油断ならんいう意味では幕末と変わらんのう!』・・・
「先日は海軍操練所が閉鎖されたところまで話をお伺いしました、坂本龍馬は西郷隆盛とともに薩摩に向こたがですね?」、その時突如「坂本!?」、と治療に当たっていた女性針灸師がつぶやいた!「それからどうなったがですか?」と坂崎が続けた、「坂本龍馬!?あの方のことをお聞きになっているの!?」、そこには、ななな~~~んと!龍馬が涙に咽(むせ)ぶ辛い別れをした、あの千葉道場北辰一刀流指南役・千葉佐那がおったではないか!!佐那は学習院女子部舎監(しゃかん、寄宿舎の監督職)を務めたあと、千住の地で家伝の針灸院を開業していた!・・・
『この男は坂崎君という高知の新聞記者じゃ!龍馬を主人公にした連載の物語を書くそうでよ!』、「こちらは?」と坂崎は訊いた、『千葉佐那さんだ!』、「えっ!」坂崎は驚いた!「あの方のことなら、わたしにも聞いてください!あの方は本当に立派な方でした!」、「ちっこと待ってつかわさい!あなたは千葉道場におられた方!?」、「道場は兄の代で終わりました!明治になって剣術をやる方がスッカリいなくなってしまいましたから!」、「ほんなら重太郎さんは?」、「京都で役人をしております!」・・・
「ご結婚は?」と坂崎が尋ねると、「いいえ!」と返ってきた、「では、今でも龍馬のことを?」、『あっはっははは!あいつはひどい男でよ!佐那さんが自分に惚れちょっことを知っちょりながら好き勝手なことを!』と弥太郎が口を挟んだ、「わたしが勝手にお慕い続けていただけですから、坂本さんの瞳は本当に子供のようにキラキラ輝いていました☆」、『それは佐那さんが知っちゅ龍馬ぜよ!海軍操練所が潰されて、日本の海軍を創る夢を絶たれ、盟友・武市半平太を失のうてから龍馬は変わってしもたがや!うっ!熱うなってきたがや!!』・・・
「どう変わったですろう?」、『土佐におった頃のボンボン育ちも!脱藩してからの脳天気な明るさも影を潜めてのう!あっつ~~!』、「岩崎さん!我慢しなさい!」、「どうなったがですろう?龍馬は?」、『侍も!公家も!外国人も!皆んなあ、龍馬に振り回されて行ったでよ!腹が立つことは、侍のくせに、わしよりも先に商売を始めよって!クッソ~~!龍馬!あっつう~~!あっつう~~!』、「あっ!あぶない!あぶない!今ずらしますから!」・・・
龍馬伝オープニング画面転換もスッカリ様変わりしていた・・・薩摩藩参謀・西郷隆盛と家老・小松帯刀(たてわき)と、そして龍馬ら一行を乗せ、1865年(慶応元年)4月大坂天保山を鹿児島に向こうて出航した薩摩藩船“胡蝶丸”は途中長崎に立ち寄ったがじゃ、外国との交易が最も盛んな港町じゃった!早速、龍馬ら一行は街に出ていったがじゃ、長崎はまるで日本であって日本でないような街じゃった!南蛮(ヨーロッパと東南アジアの文物)渡来・長崎くんちの獅子舞や龍踊りなど目を見張る異国文化が繰り広げられていた・・・
ほんに坂と階段が多いのう!、あ~~!しんど!、「ジャラァア~~~ん!バチバチバチ~~~!」ドラや爆竹がなった!オ~~!ナンじゃ!この街は!?ここは日本かえ!?たまげたがや!?な~~んと!異人だらけじゃ!異人のおなごじゃ!オッ!髪が黄金色じゃ!まなこが青いぞぉ!海軍操練所でさんざん英語を学んできちょったが、ほんまもんの異人を見るがは初めてじゃのう!『ちくっとすまん!』と龍馬が人波を掻き分けて進むと、寺院のアチコチで品定めしながら南蛮人たちの輪ができていたのに目が留まった、『長次郎!あれは何をしようがか?』、「商談ですろうか!?」、『商談!?』・・・
長崎で龍馬らの宿になったがは、長崎屈指の貿易商・小曾根乾堂(こそね てんどう、1828~1885年)の屋敷じゃった!乾堂の部屋で西郷と二人で話しておった、「玄界灘で嵐に逢われたとか?ご無事で何よりで御座いました!」、饅頭を砲張りながら西郷が答えた、『あん嵐はまいった!坂本たちがおらんかったら間違いなく沈んじょったなあ!』、「あのお侍さん達はそげん優秀でしたか?」、『船を操る腕は薩摩もん達に劣らん!英語を自在に操るもんもおる!』、「それはよか買いもんをされましたな!これから私どもの取引の際には是非あん人達をばお遣い下されたいものです!」、『あげな手足(てだ)れもん(熟練者)は軍艦だけ乗せるはもったいなかでなあ!』・・・
そこに弟の小曾根英四郎が現れ、龍馬らお侍たちを離れに案内したことを伝え、その龍馬を連れてきた、『ここはまっこと珍しいもんばっかりじゃ!あの廊下の振り子時計かい?オランダ製じゃそうな!わしははじめて見たがじゃ!長崎一の商人の小曾根さんがこないまあ儲けちゅことは薩摩の力言うがは相当なもんじゃのう!さすが早ように西洋との交易に目を付けただけはあるがぜよ!』と龍馬は部屋の中をうろつく、「坂本さ~!座りもんせ!オイに何か御用な!?」・・・
『そうじゃ!実は西郷さんに頼みがあるがじゃ!わし等をこのまま、ここに置いてくれんかい!長崎はまっこと面白いところじゃ~!日本が世界と係わっちゅことが肌で分かるがぜよ!』、「坂本さ~!おまんさ達は薩摩が雇ったごあんぞ!薩摩で働いてもらわななりもはん!」、『わかっちゅ!けんど!蒸気船を操られるもん等を荷物運びだけに使う言うがはちっくともったいないとおもいましてのう!』、「自分たちを高く売りたくごあんでなあ!?」、『いやいや!食い扶持(くいぶち)は自分らで稼ぐがじゃ!』、「なぬ!?」・・・
『けんど!安心してつかわさい!薩摩の仕事は第一に考えますき!』、「自分達で稼ぐ!?」、『わし等は何処の藩にも頼りたかないがじゃ!柵(しがらみ)があっては言いたいことが言えませんけにのう!』、「言いたいこと!?」、『はぁ!侍は藩の元で生きる!藩は幕府の元で生きる!今まででは、それが当たり前じゃったけんど、もうそろそろ変えてもええがじゃないですろうか!?西郷さん!そろそろ幕府の元から飛び出してみんかえ!』・・・
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「また大変なこと、言いもんだなあ!坂本はんは!?」、『ここらで世の中の仕組みを変えんと日本は異国の餌食になってしまうがぜよ!』、「なるほど、おまんさは天下国家のこつまで考えておられるっとなあ!?」、『そうじゃ!その通りじゃ!』、「じゃどん!西郷吉之助に向こうて薩摩の有様まで語っととは、ちっとばっかし!おこがましかと!どげん蒸気船を操れても、坂本さんは一介の脱藩浪人であんど!」と龍馬を肩透かしして藩邸へ戻っていった・・・
仲間のいる部屋へ帰って西郷との話の成り行きを報告した、「やっぱり、相手にされんかったですか?」、「まあ!仕方ないわなあ!西郷さんは偉大な侍大将であって、日本のために働こうと言うお人じゃない!」、いきなり世の中の仕組みを変える言うて、膝を打ってもらうわけないがぜよ!」と仲間達は反応した、「けんど、食い口はわしらで何とかする言うてしもたは早過ぎですろうが!坂本さん!」、「金を稼ぐ手立てすら、わし等にはまだ無いがですき!」・・・
『考えたら何とかなるろう!長次郎はソロバンが出来る!陽之助は英語が得意じゃ!ここにいる皆は海軍操練所で学んできた腕があるがやき!』、「そう言うたち!」、「船が一隻あったら、何でもできるのになあ!」と陽之助が呟く、「誰か船を貸してくれんろうかのう!」と惣之丞がため息をつく、「そんなもんがおるがか!おらん!おらん!」、『う~~ん、船かえ!?』と龍馬は考え込んだ・・・
舞台はフランス公使館にへ転換した・・・“世の中の仕組みを変える!”、龍馬らが、そう考えたがは無理もなかった、徳川幕府はフランスの後ろ盾で戦力を回復しつつあったがじゃ!・・・フランス公使・ロッシュは老中・水野忠精(ただきよ)に迫った!「フランスが幕府を経済的支援する代わりにフランスとの貿易を最優先して頂きたい!」と、幕府勘定奉行・小栗忠順(ただまさ)は「他国との付き合いもあるゆえ・・・」と言葉を濁した・・・
するとロッシュは提案した!『私がアメリカ、イギリス、オランダに声を掛けて“覚書”を作りましょう!これからは各藩と直(じか)に貿易せず、全て“幕府を通す”よう約束する覚書です!』、すると小栗は「誠で御座るか!☆」と飛びついた、これは幕府にとって大きな力となったがじゃ☆つまり、幕府の承諾なしには各藩は外国と一切(いっさい)貿易が出来んようになった!それは長崎奉行所においても同じじゃった!いくら商いが成立したち、長崎奉行・朝比奈昌広がそれに“商い取引許可承諾の御届書”を出さない限りその商取引は許されず、いくら長崎奉行所役人・岩堀文治郎なりとも諦めるしかなかったぜよ!・・・
その影響はイギリス商人のトーマス・グラバーにも及んだ、時には取引量が半分に減らされることもあった、グラバーは薩摩藩家老・小松帯刀に助言した「幕府は薩摩に厳しすぎますね!何故貴方は幕府に抗議しないのですか!?」、小松は噛み付いた!『文句はイギリスに言いたか!今まで我々と直接取引きしておったが、なんごと!おまんさのイギリス政府はいちいち幕府を通すことにしたとごわすか!?』、「私に言われても困るよ!まあ、気を落とすな!」と小松はクラバーに軽くあしらわれた・・・
トーマス・ブレイク・グラバーは安政六年(1859年)にエゲレスからやって来た、人を殺す武器を売る故“死の商人”と恐れられた貿易商人じゃった!長崎で“クラバー商会”を立ち上げたこのは男は僅か3年で巨万の富を築いたがじゃ!・・・住宅と事務所を兼ねた長崎の港が一望できるクラバーの豪邸を龍馬らが訪ねてきた、応接間の壁には鹿頭の飾り物があった!「これは作りもんかえ?」、「ほんまもんの鹿じゃ!」、「どういてこんなもん飾るか?」、「おもしろいのう!」、『おっ!来たぜよ!』・・・
『わしは坂本龍馬といいます!』、「Nice meet you !」とグラバーは手を握ってきた、『これは~!シェイクハンドじゃのう!陸奥!ナイスミーチュとは何ぞえ!』などと挨拶を交わした、どうやら龍馬達はグラバーに船を貸してもらいに来たらしい、グラバーは流暢な日本語を話し始めた!『お~~!さすが遠いエゲレスから来て、日本で成功したお人じゃのう!たいしたもんですのう!』、「私に何の御用ですか?」、『おっ、実はのう!わしらに船を貸して欲しいがじゃ!蒸気船じゃ!日本の商人は小船しかもっちゅせんき!異国の商人しかおらんがじゃ!』・・・
「船で何を?」とクラバーに突っ込まれた、『ビジネス!商売ぜよ!わし等に船を持たせたら何んちゃ出来るがぜよ!』、「アッハハハ~~!お侍様が商売とは!・・・お貸ししましょう、月1200ポンド!月3000両!で如何でしょうか?蒸気船だからそれなりに金がかかる!」、『3000両!!』、「一月3000両ら、とても払えんけ!」、『クラバーさん!もうちくっと!』、「申し訳ない!1200ポンド以下では話にならない!丸山でボロ船でも探すべきだな!」とグラバーは退席した!法外な賃貸料にビックラこいた龍馬らは相手にもして貰えんかった!!・・・
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『長次郎、丸山とはどこぜよ?』、「はあっ!?」、国際的社交の場でもあった“丸山”は料亭が集まっちゅ長崎の花街じゃった!中でも引田(ひけた)屋は諸藩の藩士達が訪れる大店(おおだな)じゃったがや!椿の間には薩摩藩士達が飲んでおった、「西郷さん、幕府が長州に戦を仕掛ける言うは、本当のごつにごわすか?」、『我が藩にも兵を出せと言うてきちょ!』、出すべき!長州征伐じゃ!長州は敵じゃ!長州を叩き潰そう!なんのと管巻いていた、それを西郷が『今、長州を滅ぼしたかと言うて薩摩には何の得にもならん!幕府が今よりもっと強くなるだけじゃ!』と制した・・・
冷やかしか?詮索か?料理も酒も芸子も要らんのに厚かましくも、竹の間に通された龍馬一行は真っ赤でまん丸のテーブルを見て盛んに感心していた!「長崎の卓袱(しっぽく)料理(中国風日本料理)は円卓で召し上がってもらうとです、上座も下座もなく楽(たの)しゅうに!」、『そりゃええわ!わし等にピッタリじゃ!』、「階段の手前から薩摩弁が聞こえたき!」、「椿の間に入っちょったら、どえらい事になっちょったのう!」、「何処に飛び込んでみるね?」、『そうじゃのう~~~』、龍馬らは何をしに来たがや?クラバーの言葉を真に受けて丸山にボロ船を見つけに来たがや!?バカさ加減が分からん!・・・
クラバー邸の庭園では、スコッチ・ウイスキーを嗜(たしな)みながらクラバーが商人仲間のウイリアム・オールトとイギリス政府の恐ろしい企みを話していた、『君は商売敵(がたき)だが、同じイギリス人として教えてやろう!もうこの国は終わりだ!稼ぐだけ稼いだら日本から逃げろ!』、「どう言う意味だ!?」、『今の幕府はフランスの操り人形だ!イギリスがそれを許すと思うかい!?』、「戦争になるのか!?」、『イギリスは既に日本との戦争を想定しているて上陸作戦を計画しているんだ!』、「上陸作戦だと!?」・・・
『まず、イギリス軍は摂津の海を封鎖し!歩兵1万2千人と騎兵5百を兵庫に上陸させる!そこから大坂を制圧して京都へ進行する!そして御門(みかど)を拘束し、海軍を江戸湾に進めて、本隊1万5千が江戸城を攻撃する!日本はたった1日で降伏する!幕府も薩摩も長州も土佐も、全くお目出度い連中さ!今この国が存亡の危機にあると分かっている日本人は誰一人としていないのさ!ウハ!ウハ!ワッハッハ~~~!!イギリスも悪よのう~~!』・・・
梅の間には、気まぐれで出家したと言う、散切り頭の高杉晋作と津和野藩(島根県西部)藩士を装った長州藩士らが来ておった、その席には丸山屈指の芸子・お元が三味線とお囃子に合わせて華麗な舞いを披露していた☆フラガール以来のほんに美しい舞じゃった☆ブラボー!☆その日彼らはエゲレス商人に会うことになっていたが、スッポ抜かされたことをお元に明かした、「クラバーさん?異国の人はみんな用心深かですよ!うちだって津和野藩のお客様は初めてじゃけん覚悟してまいりました!」、実際クラバーは幕府の敵・長州に味方する恐れのある津和野には幕府からの取引許可が出ないと見ていた・・・
そこへ龍馬らが高杉らがいる梅の間に踏み込んできた!『宴(うたげ)の邪魔をしてすまんのう!三味線のええ音が表まで聞こえてきて、つい聞き耳を立ててしもうた!知っちょりましょうか?卓袱の卓が丸~~いがは?上下の垣根も横の垣根もとっぱろうて、みんなで仲よう料理を囲もう言う訳じゃそうじゃ!』、ナンじゃ?お前等、タダ食いに来たのか!?、『おんしら、津和野かえ?』、「グラバーから何を買おうとしよるですろう?」、『よう聞きや!わし等は奉行所のもんじゃないけに!おぬしらの味方じゃけん!』・・・
「長崎には面白いもんがおるのう?何でおぬし等がわし等の味方なんじゃ!?聴かしてくれ!?」、『わし等は脱藩浪士じゃ!何処の藩のものでもない!奉行所の目にも留まらん!』、「しかも、わいら、蒸気船を操れるき!津和野藩の船を一隻貸してくれたら、おぬし等の代わりに異国の商人と交易しちゃる!」、高杉は見抜いた!「お前等、土佐もんやな!?」、『そうじゃ!わしは坂本龍馬じゃ!ここにいるみんな、海軍操練所におったがや!』、一瞬緊張が走った!・・・
『待ちや!わし等は幕府を守るために海軍をやりよったじゃないき!』、「日本を異国から守るために学びよったがです!」、『ところで、おまん等は何者ぜよ!津和野藩のもんではないろ!幕府と聞いただけで刀に手をかけるほどの攘夷派は津和野藩にはおらんきのう!』、「津和野藩でない!?誰ぜ?」、高杉は答えた「わし等は長州です!」、「長州藩士は長崎の立ち入りを禁じられちょるぜよ!」、『名を変えて入ったがか?』、「違う!わし等は津和野藩士として入っとる!」・・・
「桂さんが言うちょりました!土佐の坂本龍馬は信用できると!僕は長州藩士・高杉晋作と言います!よろしく!」と高杉は自分の身を明かした、『高杉さん!桂さんと知り合いやったがかえ!こりゃええ!』、「坂本さん!ほんに僕等を手伝うてくれるんですか!?」、『兎に角、場所を変えて話をするがぜよ!この店には薩摩藩士がおるがじゃ!』、途端、長州に殺気が走った!『落ち着け!騒がれたら困るがは、おまん等じゃろが!』・・・
「坂本さん!話はここでしましょう!敵に脅えて逃げたと思われたら心外ですから!」、「けんど!」、『長次郎!高杉さん、分かった!』、すると龍馬は蒼井優扮する芸子・お元に向かって『すまんが、おまん!こん人等と薩摩藩が決して鉢合わせにならんように、お上に取り計ろうてもらえんかい!?』と頼んだ、「はい!」とお元は答えた、可愛ゆい~~!☆『頼むき!』、店を出て行くお元に、「お元ちゃん!お座敷はとげんしたと!」仲居の問いに、「面倒がことに巻き込まれることは真っ平!」と奉行所に向かった・・・
「僕等が欲しいのは武器だ!軍艦10隻とミニA銃1万丁!」、「なぬ!10隻!1万丁!」長次郎は度肝を抜かしそうになった!、「50万両もあれば足りるでしょう!」、『50万両!?そんな大金が長州に!?』、「僕等には馬関(関門)海峡と下関がある!」と長州藩士・伊藤俊輔が言うた、「そこには日本中から物が入ってきよるちゃ!金なら唸(うな)るほど持っちょるんです!」、『まっこと!?ほんなら、長州は武器を揃(そろ)えて何がしたいがじゃ!』、「攘夷のためですか?また異国の船を攻撃するがですか?」・・・
「そんなつまらんことはもうせん!力ずくの攘夷などはもう無理じゃ!異国と戦って骨身にしみて僕等は分かったんですよ!武力では異国に到底叶わんて!」、『そうじゃ!そうじゃ!その通りじゃ!たいしたもんじゃ!よう分かってくれた!長州は!』と龍馬は賛同した、「ほんなら、1万丁の銃を何に使うですろう!?」と長次郎が訊いた、「きまっちょう!幕府と戦うためじゃ!」と伊藤は言った、「一切(いっさい)幕府には従わんと決めたんじゃ!」と長州藩士・井上聞多(もんた)が詰めた・・・
「坂本さん!長州は独立するんです!」、『独立!?』、その時たまたま通りかかった一人の薩摩藩士が梅の間の廊下で聞き耳を立てていた!「長州は最後の一人になるまで戦い抜くんじゃ!」、・・・その薩摩藩士は慌てて椿の間に戻り、「梅の間に長州が!」と知らせた!「梅の間か!」、ここで逢ったら百年目!とばかり薩摩は梅の間に雪崩れ込んだ!一触即発状態となる!『誰ぜよ!薩摩!?』、「なんでお前達が長崎にきとっか!」・・・
西郷が前に出る「おいは!西郷吉之助でごわす!長州のみなんとは蛤御門以来でごあんどな!」、「西郷!お前には積年の恨みがある!」、龍馬が割り込んだ『止めや!おぬしら!』、「お~~!坂本さん!」、『西郷さん!こんな狭い部屋の中で刀を抜きおうて!まるで鶏小屋のなかで鶏同士が喧嘩しゆうと同じぜよ!』、沢村が言う「みんな絞め殺されて!異人に食われてしまうがぜよ!」、『一番恐ろしい敵は誰でえ!異国じゃろが!日本人同士で喧嘩しゆう場合かえ!え!西郷さん!』・・・
その時「どけ!どけ!長崎奉行所である!長州藩士は何処じゃ!」と役人達が引田屋に駆け込んで行く、高杉がピストルを出し天井に威嚇射撃する!西郷は高杉を見抜いていた「そん散切り頭は奇兵隊と言うもんを作って引っ張っちょる高杉晋作じゃな!」、「さすが西郷じや!よう知っちょる!邪魔が入らにゃ、存分に相手になっちやるやが!運が良かったのう!もう一発ぶっ放してその場から消えて行く!龍馬等も退散し、西郷一人が残る!そこへ一人の奉行の役人が入ってくる、「おう!こいは岩掘さ!長州藩士はもうおりもはん!」・・・
後日、長崎奉行所に朝比奈奉行と岩掘が話す場に普段着のお元がいた、龍馬が引田屋で初めて出逢ったお元は三味線・お琴・舞に長(た)けた芸子だったが、長崎の政界、財界までをも動かす力を持つ才色兼備な女性であったようである!お元は次第に龍馬の心を動かしていく存在となり、龍馬は新天地・長崎で更なる飛躍を遂げていくだろう・・・