Okanagan's Twilight Days

人生の黄昏を迎え、日々の出来事を徒然のままに綴っています(*^_^*)

新・花燃ゆ、第33話“花となるために!~後編” 2015年8月17日

2015-08-17 15:49:17 | 日記・エッセイ・コラム

ある夕刻、椋梨の屋敷では、政権失脚後、何処へ遁走(とんそう)したか?夫・椋梨藤太の行方を案じながら、妻の美鶴が一人、将棋を指していた、何故か美鶴の心を反映する様に、“歩”一つが将棋台の真ん中にポツンと寂しげに在った?そこに美鶴を懇意とする美和の姉・寿(ひさ)が訪ねて、話しかけた「美鶴様、椋梨様の行方をお伝えに参りました!」、美鶴はその歩を摘み上げて言った「何!津和野で捕えられたのですね?・・・どんな気持ちです?それを、わたくしに伝えて?」・・・

寿「ただ夫を信じて支えること!それを教えて下さったのは、美鶴様でした!憧れて居りました!」、美鶴「あの人は、城から逃げたのではない!ただ、己が巻き込んだ者達を、逃がしてやりたかったのです!そう云う人です!」、寿「これから何方(どちら)へ?」、美鶴「何処へも行きはしません!何処へ落ち延びようと、例え石持って追われようと、わたくしは椋梨の妻・美鶴です!生きて、この世を見届けます!、寿は指を着いて言った「どうぞ、お達者で!」、美鶴は微笑んだ、寿が観た、それが美鶴の最期の笑みとなった!・・・

萩城大奥で城移りの仕度がスッカリ出来上がって居った、潮『明日、萩を発ち、我等は山口に向かう!新たな奥の始まりである!皆、心して励め!』、はい!、美和!銀姫が呼び留めて言った『半日の宿下がりを許す、家へ戻り、父上を見舞え!潮より仔細は聞いた、辛かったであろうのう?山口へ行けば、二度と萩へ戻ることはない!今の内、会うて参れ!明日の出立までには、戻れ!』、美和「恐れながら、それは出来ません!」、『何じゃとう!?美和、これは温情ではない!命令じゃ!お前の家族の話しを、もっと聞かせて欲しいのじゃ!』、家族?・・・

『幼き頃、わたしは生まれた城を離れ、江戸で養女となった、物心ついて、周りの者らが家の話を始めると、羨ましく、寂しかった!興丸にはその様な思いさせとうない!殿とわたしで大切に愛(いつく)しみ、様々な家族の話を聞かせてあげたいのじゃ!わたしからのも、お前からのも!』、美和「わたしの話を?」、潮『お急ぎなさい!そのなたの家には知らせを出しております!』、暫く考えたが美和は手を着いて言った「申し訳ありません!」、美和!?、「違うんです、遠慮なんかして居りません、怖いんです!」、怖い!?、「帰ったら、もう二度とお城には戻れんくなってしまそう、奥に入れて頂き、ここまで無我夢中でした!今までの自分や、家族も捨てる覚悟で奥に入って、やから、どんなに心細うとも、決して弱音を吐いては成らん!そう言い聞かせて、やっとの思いで、ここまで!」、

美和!、「やのに今、家の灯りや、懐かしい温かいものに触れてしもうたら、わたし、とてもその手を振り払う事なんて!」、銀姫『お前!・・それでも良いではないか!振り払えず二度とここへ戻れなくなったとしても!』、潮『ひめさま!』、『その様に、懐かしく温かいものを、何より大事にする、そなただからこそ、わたしは、お前を信じた!』、姫様!、『ここまで、よう、誠によう、尽してくれました!急ぎなさい!父上を大切に!』、美和は熱く優しい銀姫と潮の思いやりに触れ、涙ながらに、その温情を有難く受け入れて、奥を離れ、懐かしい杉家のある故郷・椎原(しいばら)村へ向こうて行った・・・

美和は開けっぴろげの我が家を眺めながら裏へ廻った、すると、水を汲んで来た梅太郎の長男・小太郎が美和に気づき、「母上!」と亀に知らした、亀は叫んだ、文さ~~ん!、美和「只今戻りました!」、文さんが!、母の滝が出てきた、梅太郎の長女・豊子も出迎えた、まあまあ~~、垢ぬけてしもうて!、ええ臭いがいたします!、滝「風呂に入れるが、おしいぐらい!」、もうですか?、「帰ったらすぐ入るんです、それがうちの決まりです、はい!」、そこへ、杖を突いた父・百合乃助が出てきた『もうしばらくすりぁ、ええ湯加減になる!』、父上!、梅太郎も出てきて「今日の風呂は自分が沸かすと、ま~あ、朝から我がままを!」、『おい、火が消えかかっとるぞ、梅太郎!薪を足せ!滝、水をちいと足してくれんか!』、美和は明るくふるまう元気そうな父を観て、ひと安心じゃった・・・ 

亀が、夕食(ゆうげ)の汁の仕度に使う故、カブを抜いてくれんかと、梅太郎に頼んだ、百合乃助『よし、わしが抜こう!文、手伝うてくれるか?』、その時、バランスを崩して膝をついた!父の脚もとは、かなり来ていたが、風呂は梅太郎に任せて、百合乃助は美和と家のすぐ横の畑に出た、『土が温いぞ!』とはしゃいていた、美和も裸足で土に乗った「ほんとに!」、父が突然切り出した『お前には謝らにゃならんことがある!ずっと昔のことじゃが、まだ幼いお前に、寅次郎の力に成れ、と言うたことがある、それがお前のためでもあると思うて、のう、もう少し早よう、ここから解き放ってやれば、お前は、もっと穏やかで、幸せな暮らしを送れたかもしれん!』・・・

「父上、わたしはこの家に生まれたことを、今まで一度も不幸と思うたことはありません!この家に生まれて、父上の娘で幸せです!これからも、ずっと!」、『文・・』、「もっと、呼んでください!子供の頃みたいに!」、父は力を絞って呼んだ『!』、はい!、桜の花が散り始めていた、文「まこと、わたし、戻ろうと思うて来たんです!この家に!父上の娘に!」、父の本心は裏腹だったろうが、それはイカン!それは成らん!と心の中で自分に言い聞かせ、『花びらを視よ!』と父は言った、「散って居りますねえ!」、『否~~、散っちゃあ居らん!解き放たれておるんじゃ!人も花と同じじゃ!放たれて、旅立つ!お前は、惜しみなく、降り注ぐことが出来る場所に行け!』、美和は父の本心を知って奥に戻ることを決心した!その夜、美和は兄・寅次郎の遺影の前に座り、そのことを固く誓った、そして、桜舞う中、父・百合乃助と母・滝の笑顔に見送られながら、杉家に別れを告げた!・・・ 

奥御殿では都美姫等が『美和!美和は何処へ行った?銀姫、美和を知らぬか?出立だと云うに、興丸のお世話を如何致すのじゃ!?』と騒いで居った、銀姫『美和なら居りませぬ!』、居らぬ?、『興丸は、わたくしが連れて参ります!』、銀姫!、「興丸様でしたら、こちらに!」そこには、興丸様を抱いた美和が来ていた! 「興丸様、今朝は大変、機嫌ようされて居ります!」、都美姫『今まで何処に居ったのじゃあ?この大事な時に、興丸に何か在ったら如何致す積りじゃ!』、美和「わたくしが、お側についていますゆえ、これからも、ずっと!」・・・

都美姫『興丸は、お世継ぎと云うだけではない、新しく、まつりごとを始める長州の、皆の心を一つに纏(まと)める希望である!この命、守れるか!?』、美和「この身に代えましても!」、都美姫『本日この時より、美和を、興丸の、守役と致す!』、『御前様!』感激した銀姫が都美姫を見直して尊敬した、いよいよ、山口へ出立の時が来た、『皆の者!参るぞ!』、銀姫と美和は熱い微笑みを交わしていた、幕府との戦さに備え、長州藩は再び山口に城を構えることとなった!高杉は新たな野望を抱いて長崎に向かい!伊之助は藩の命運を担(にな)って、大宰府を目指す!そして、「旦那様、これからが、始まりで御座います!」と興丸の守役・美和は、決意を新たにした!・・・

 

 

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