ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

連帯惑星ピザンの危機 高千穂遥

2014-07-24 11:56:00 | 

十代の頃からSF小説にはまっていた私だが、困ってしまう作家がいる。

それが表題の作品の著者である高千穂遥氏である。スタジオぬえの主催者として知られる一方、日本オリジナルのスペース・オペラの書き手であり、様々な作家に影響を与えていることでも知られている。

一例を挙げれば、故・栗本薫の代表作である「グイン・サーガ」は高千穂氏の「美獣」が発案の原点だし、初期のガンダムの製作にも関わっている(ただし、けんか別れしている)。

現在、どこの書店でも棚積みされているライト・ノベルは、朝日ソノラマ文庫から始まるとされているが、その初期から活躍しており、ラノベの祖的な扱いを受けているほどだ。


しかし、私自身はそれほど評価が高くない。理由は簡単で、それほど面白くないと思っていたからだ。表題の作品もクラッシャー・ジョーのシリーズものの第一作であり、続編も数冊読んでいる。また割と人気の出た「ダーティ・ペア」シリーズだって読んでいる。

それなりに読んでいるのだが、白状すると一度も熱中したことはない。もともと私がアメリカのスペースオペラを先行して読んでいたせいでもあるが、どう読んでもアメリカのものの方が面白いのだ。

高千穂氏の作品を読みながら、どうしても無意識に比較してしまうので、あまり高い評価が出来ないのだ。その一方で、私は高千穂氏が日本のSFに対する情熱も知っている。

1970年代、80年代を通じて日本のSFは不当に低く貶められていた。世間からある程度評価をされていたのは、星、筒井、小松の御三家ぐらいで、それ以外のSF作家は、不愉快なほど低い評価をされていた。

高千穂氏は、そのような現状を嘆くばかりでなく、声を上げ、運動を起こし、日本のSF界のために奮闘する言論人の代表的人物であった。私は心情的に応援しながらも、その作品に対しては高い評価が出来ないことに複雑な心境を抱いていた。

いささか厳しすぎる評かもしれないが、SF作家としての高千穂遥には、スペースオペラを日本流にアレンジした人以上の評価は出来ない。少し気の毒に思うのは、私が先にアメリカのSFを読んでいなかったら、もう少し高い評価が出来たからだ。

実際のところ、高千穂氏の活躍は小説に限定されるものではない。アニメ、映画、雑誌編集と実に多彩な活躍であり、裏方として日本のSF進展に大きく貢献した人物である。その功績は、古くからのSFファンである私にとっては、十分に敬意を表するに値するものである。だからこそ、困ってしまう作家なのである。

余談だが、最近の高千穂氏は自転車愛好家として名高い。当人は怒るかも知れないが、私としては彼の自転車に関する文章は楽しく読んでいる、多分SF小説よりも・・・

コメント (6)
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