歴史に残る大会であった。
まだドイツの優勝の余韻が残ってはいるが、やはり最大の衝撃は、あのブラジルが準決勝で7失点しての敗退であろう。私は前半途中からTVで観たのだが、当初画面に映る0-7の表示が信じられなかった。
いったい何が起こったのか。
名将スコラーリ監督に率いられたブラジル代表チームは、間違いなく守備的なチームであった。この2年で日本代表は、このチームに2度挑み、いずれも敗退している。その試合でも、また優勝したコンフェデレーション杯でも、ブラジルは実に守備のしっかりしたチームであった。それは今大会の予選リーグでも実証されていたはずだ。
たしかにコロンビア戦で負傷したネイマールの欠場はマイナス要因であったと思う。またキャプテンが累積警告での出場できなかった影響はあったと思う。しかし、あれほど大量失点するようなチームではない。断じてなかったはずだ。
それなのに、序盤での大量失点は悪夢そのものであった。一瞬の油断が、失点を呼び、その驚きに足が止まった瞬間を突いたドイツの勝負勘は素晴らしい。それは確かだが、ワールドカップの準決勝であのような大量失点の試合は、まずありえない。
そのありえないことが起こった。
これだからサッカーは怖い。なにが起こるか分からない。歓喜の奇跡も起こるが、驚愕の悲劇も起こる。それがサッカーなのだろう。
それにしてもドイツ。8年前のドイツ大会でブラジルに敗れた屈辱を見事の晴らしたどころか、何倍にもして仕返ししてのけたのだから、呆れてものが言えない。
ただ、ドイツの優勝は予想の範囲でもあった。ここ最近のブンデスリーグのチームの強さを思えば、その代表的チームであるバイエルンの選手を中心に構成された代表チームの活躍は必然でもあった。断言するが、その国の強さのベースは国内リーグ。ブンデスリーガは近年目覚ましい結果を出している。
UEFA杯でも、スペインやオランダのチームをドイツ勢が破っていたことを思えば、この結果は納得がいくものだ。ラーム、クローゼのようなベテランと、ゲッツェのような若手、エジル、シュタインシュタイガーのような中軸の選手を揃えた厚みのある布陣はバランスが良く、どんな相手にも対応できた。優勝に相応しい好チームだと思う。
一方、敗戦したアルゼンチンは少し気の毒だった。メッシは確かにスーパースターだったが、相性の良いディマリオが負傷欠場したため、持ち味を出し切れなかった。ただし、かつてイタリア大会で西ドイツがやったマラドーナ封じのための見苦しいサッカーはなく、正々堂々たる試合であったため、敗戦の言い訳は出来まい。だからこそ、なおさらメッシは辛いと思う。
ところで、改めて日本だが既に新監督との交渉に入っているようだ。それは良いが、香川や本田へのバッシングをして賢しげに振る舞うマスコミの論調に腹が立つので、少し付け加える。
今大会では、若手の活躍が目立った。特に日本が実力差を見せつけられたコロンビアのロドリゲスやネイマールなど20代前半の選手が良かった。しかし、我が日本チームの若手には失望を禁じ得ない。
ザッケローニが敢えて実績ある細貝や中村憲剛、前田、李忠成らを選ばず、その伸びしろに賭けた若手選手はいったい何をやっていたのか。大迫しかり、柿谷しかりである。本田や岡崎は得点をしているが、彼ら若手はいったい何をしたと言うのか。
ところが日本のマスコミ様は、口先だけの評論家も含めて彼ら若手にはものすごく甘い、甘すぎる。大会前に、やれ優勝候補だの、前回以上の結果だのと騒いでいた日本のマスコミが如何にレベルが低いかが立証された大会でもある。
次はロシア大会である。おそらくアジア枠は削減対象となる可能性は高い。現在の4,5は良くて4ヶ国、下手すれば3だってありうるのが、ブラジル大会の実績である。今まで以上に厳しいアジア予選を勝ち抜かねばならない。前途多難である。
日本サッカーの実力向上の基礎は、国内リーグのレベル向上にある。人気選手をバッシングしていい気になるよりも、実力ある外国人選手、外国人監督を招聘しないJリーグ各チームに厳しい目を向けるマスコミがいないことこそ、日本サッカー最大の欠点だと思います。