曖昧批評

調べないで書く適当な感想など

「火村英生の推理」第9話「地下室の処刑」の感想

2016-03-15 21:29:58 | テレビ・映画


脱走した諸星が、「火村を本気にさせるため」という理由でアリスを誘拐する。そのシーンを目撃した隣のお姉さんは、アリスを見かけると髪を直していた。アリスモテモテじゃん。原作ではそういうこと一切ないけど。

火村は取り調べでアポロンこと坂亦に会い、美しい犯罪など存在しないと言う。じゃあ、あんたの今までのつぶやきは何だったんだ。

ばあちゃんも、朱美も、火村自身も、坂亦が火村に似ているという。あんな生意気で自意識過剰でわざとらしい目つきをしたガキを、彼女たちが下宿させたり好きになりかけたりしてるのだとしたら、人を見る目がおかしすぎる。

まあ、坂亦役の演技が単に生意気なだけで、狂気を感じさせない大根だったというのもある。

拉致監禁されたアリスは、嵯峨というシャングリラの男に助けると言われるが、嵯峨はICレコーダーで何かを盗み録りしてたのがバレる。嵯峨はフリーライター?で、潜入取材していたのだ。

嵯峨は拳銃を突きつけられ、飲ませてもらった酒に青酸カリが入っていて死亡。拳銃には弾が入っていなかった。処刑は振りだけで、実は嵯峨はテストされていたのだった。

容疑者のひとり、安奈は弾が入ってないことを知っていたが、弾が入っていないことが判明したとき驚かなかった。咄嗟に驚く演技は可能だが、咄嗟に驚かない演技をするのは不可能。という理屈で白。なるほど。

もう一人の容疑者、城は弾が入っていると思っていた。これから拳銃で撃たれて死ぬと分かっている人間に毒を盛る理由とは?

有栖川有栖は、このような不可解な行動の合理的な理由を考えるのが得意だと思う。ネタバレになるが、火村シリーズの長編「乱鴉の島」では、容疑者が絞りこまれる危険を犯してでも唯一の連絡手段を破壊して島をクローズドサークルにする理由が考案されていた。その理由は、それならそうするよな、と納得のいくものだった。

しかし、そういった原作のキラリと光る部分は極めて限定的にしか使われていない。今回もシャングリラと諸星たちの行動が、より荒唐無稽に見えるような幼稚な演出が多かった。

ネットのブラックマーケットなんてものが分かりやすいところにあるのか?
あったとしても、ブラックマーケットなどという単純な呼称か?

スマホのGPSは切れるんじゃないか? 中継基地局の位置から割り出すことをGPSと言っている?

うまく言えないのだが、この脚本家は、テレビやマンガで得た社会についての、世の中についての知識だけで書いてないか? これやったらああなる、人はこうしたら普通はこういう反応をする、といったことを、自分で調べて、自分の頭でシミュレーションして書いてはいない。という気がする。

火村の中の怪物の件もフィーチャーしすぎ。原作はアリスの一人称で書かれているので、悩みも一人称。あれでウジウジしてるのはアリスだけで、馴染みの刑事たちも、そんなこと気にしていない。

ちなみに鍋島や坂下はドラマだけのキャラだ。アルマーニを好む森下刑事ってのはいるが。コマチという女刑事は原作にもいるが、小野ではなく高柳だ。

そっち系の熱いやりとりとしては、火村の「俺の助手はあいつしかいない」ってのがあった。あいつとは、もちろんアリスのことである。

最終回は諸星との最終決戦なんだろう。原作でも最もどうでもいい話をメインに持ってこられてしまった。もはや原作のファンという義理だけで見ている状態。それもあと一回耐えれば終わる。

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