いよいよ最終回。
仲野父の執刀で大江の胸を開いてみたら、もう手遅れだったらしい。それを知ったときの仲野父の表情と周囲の状況が、「白い巨塔」で財前の肺癌が切ってみたら末期だったというシーンと重なった。
東王に戻りたいと言い出した大江を拒否するセンター長と、受け入れるべきというナース軍団で揉める。患者本人の希望とはいえ、死ぬまでの生活に適した施設が他にある(松岡が言うように)のに東王で受け入れようというのは、最善の解ではないように思えた。
最善の解を導くだけがテレビドラマではないが、最終回だからね。最終回のストーリーは作者の最終的な回答であると考えざるを得ないわけで。
一応口では死にたいと言っている大江が、生前葬をやりたいと言い出した。葬儀委員長は朱里。最後まで患者を救いたいという仲野(子)は大反対。その仲野に松岡が、救えなかった患者と向き合うのが怖いのかとか、情けないとか言う。僕が患者か患者の家族だったら、仲野を支持すると思うけどね。というか、救えなかった患者云々じゃなくて、医師として最後まで諦めたくないと思ってるのに葬式なんてできないって言ってるじゃんか。彼の気持ちは、そのまんまだと思うぞ。勝手に決めつけるな松岡。
生前葬では、白いカーネーションを献花しながら自分の大切なもののことなどを話さなければならない。脚本家が言いたいことが、ナースたちの告白と大江のリアクションとして表現されるのか?と思いながら見た。
ナースたちの大切なものは、仕事が多くて、例外として息子、大江の著書など。仕事のことを語った岩渕の話などは、ナースのお仕事とはこうあるべき的なまとめになってはいたが、わりと平凡というか、大江じゃないけど普通の綺麗事だった。それより、大江の反応が「世話になったね」「ありがとう」などとらしくない。きれいな大江だった。人は死を目前にすると浄化されるのか?
ところが、最後の大江本人のスピーチで、「キミたちの話を聞いてたら、もっと生きたくなった」と絶叫して昏倒。患者に生きる意志を持たせるのがホスピタリティだということなんだろうか。センター長が大江を受け入れるときに「究極のホスピタリティが求められる」みたいなことを言ってたし。
しかし、ナースたちの話を聞いて生きる気力を取り戻した大江の生き粘る姿は描かれず、次のシーンでは死んでいた。絶筆?となった原稿は、ちゃんとブルーのインクの万年筆で書かれていた。小説というより随筆だったが。
序盤は朱里のセレブ狩りと、彼女の一本気な性格が巻き起こす騒動みたいなドラマだったが、途中から寅さん要素は後退して、大江を軸にしたナースたちの確執と悩み、みたいな話に変化していった。仲野親子の対決が最後の盛り上がりになるのかと思いきや、最後まで大江の我儘に対してどうするか、というネタでホスピタリティの在り方を問う、みたいな筋で押し切った。正直、大江のネタでここまで引っ張るとは思わなかった。
センター長は黒幕かと思いきや、途中から意外に器の大きい人物として描かれた。朱里のセレブ狩り自粛と合わせて考えると、放映途中で脚本修正・路線変更があったのではないか。視聴率がかなり悪かったわけだし。
堀北真希が出ているだけで個人的には満足ではあるのだが、視聴率5%台がずっと続くドラマを見続けるのは、最下位が確定した10月のスワローズを応援するのと同じような気分だった。
何が悪かったのだろうか? 保険適用外のホスピタリティ重視病院の現実味のなさか? シリアスな展開を茶化す効果しかなかった朱里のナイチンゲール言行録か? 全体的な嘘っぽさが、人の生き死にを描いた後半のストーリーに、今一つ重みをもたせられなかったからか?
泣く演技はいつも通り上手かったのだが…。