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森羅万象 ~ 歩く印象派

脅迫的取り調べ、録音で判明 大阪府警、いす蹴り大声

2010年11月08日 05時06分07秒 | 許すな冤罪事件
 大阪府警東署員による脅迫的な取り調べをICレコーダーで録音していた30代の男性が朝日新聞の取材に応じ、暴言を浴びせられた時の恐怖や強引に自白を迫られた様子を語った。男性は取り調べ後に体重が6、7キロ落ち、夜は捜査員の怒声がよみがえって眠れない日もあるという。

 取材には代理人の森直也弁護士らが立ち会い、約3時間の録音を再生しながら当時の取り調べ状況をたどった。

 東署刑事課の警部補(34)と巡査部長(31)が、システムエンジニアとして働く男性の会社に来たのは9月3日午後1時半。警察が社員を調べていることは数日前から知っていたが身に覚えはなく、自分も調べを受けるかもと思ってICレコーダーをズボンのポケットに入れていた。

 会社の駐車場に止めた車の後部座席で警部補は黙秘権も伝えず、「家もガサ行くぞ」「出せよ、お前、財布。出せ! 出せ! 出せ! なめんなよ」とすごんだ。

 容疑は、大阪府内の女性が昨年12月に出勤途中に落とした財布を着服したとする遺失物等横領で、男性は女性と同じ駅を利用していた。反論しようとしたが、「お前の意見を聞きにきたんちゃうわ」「人生むちゃくちゃにしたるわ」と怒鳴られた。

 約1時間後、大阪市中央区の東署の取調室に連れて行かれた。警部補は自分の家族を引き合いに出し、「4人目も生まれるねん。こうした生活の基盤がなくなったらむちゃくちゃやん」と自白を促した。幼稚園児の長女の笑顔、マンションのローン……。すべてが壊れてしまうと思うと、恐ろしくなった。

 否認する男性に、警部補は「手出さへんと思ったら大間違いやぞ」と大声を出し、パイプいすをけった。調べが始まってから約3時間後、録音に気づいた警部補は急に穏やかな口調で「信じてるよ」と握手を求めたという。

 東署を出たのは午後9時すぎ。調べの間、恐怖でトイレにも行けなかった。自宅への電車で悔しさと情けなさがこみ上げ、乗客の目もはばからずに泣いた。残っていた録音をもとに弁護士に相談し、警部補らを特別公務員暴行陵虐と録音を消させようとした証拠隠滅の容疑で大阪地検に告訴。25日に受理された。

 「冷静に話を聞いてほしかった。すごい圧力で本当に怖かった」。こう語る男性に対し、東署からの連絡はその後ないという。

 一方、府警によると、警部補らは男性への暴言を認めているが、暴力的な行為は否定しているという。当時の取り調べ状況の調査と、遺失物等横領事件の捜査を続けているとしている。(板橋洋佳、野上英文)