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森羅万象 ~ 歩く印象派

推敲は文章を殺す (河合隼雄「『「出会い」の不思議」)3

2008年09月14日 19時20分45秒 | 読んだ本・おすすめ本・映画・TV評
再び孫引き(河合隼雄「『「出会い」の不思議」P14~15)

「推敲っていうのは ― 添削もそうですが― 悪くすると、この不完全さを壊し、文章を殺すんですよね。」(加藤典洋『言語表現法講義』岩波書店)

河合の云いたいことは以下
「推敲にしろ添削にしろ、どうしても『完全』を狙うのではなかろうか。しかし、不完全なもののほうが生き生きとしており、訴える力をもっていることが多い」。『完全』を狙って努力を続けているうちに生命力を失ってしまう。」

「推敲や添削によって、文章の不完全さが消えていくとき、それは『正しい』と言える。しかし、そこで死んでいったものが何か、を言うのは難しい。このために多くの人が『正しい』ほうに順応していき結果的には、自分の個性を殺すのに努力を払うことになる。」

創作の秘密とは? (河合隼雄「『「出会い」の不思議」)2

2008年09月14日 18時50分05秒 | 読んだ本・おすすめ本・映画・TV評
自分のやりたいことをやるのが勝ち(河合隼雄「『「出会い」の不思議」P39~40)

以下は孫引き(元の出典は横尾忠則『今、生きる秘訣 横尾忠則対談集』光文社文庫)

「世の中っていうのはいくら真面目にやっても誰も真面目を認めやしないと。いくら何をやっても、けっきょく自分のやりたいことをやっとったほうが勝ちなんだと思った」とは加藤唐九郎さんの言。

こうなると後は騎虎(きこ)の勢い。世俗的雑事を避けて仕事に没頭するなどは駄目で、「俗事に刺激を受けないと、ちっとも新しい思いつきが出てこんですね」。要は「軽はずみに引き受けた」仕事に追い込まれ、瀬戸際になって、「僕が作ったんじゃなしに、めちゃくちゃにやってるうちにできあがった作品」が傑作になるのだ。「僕の創作ってまことに怪しげなものですよ。」

創作の秘密に触れた気がすると河合の感想。

河合は続けて
「ともするとわれわれは『やりたいことは後にして、真面目にやろう』などと思うのではなかろうか。そして真面目にやるためには、軽はずみに仕事を引き受けず、俗事を避けて・・・・・・・などと思うのではなかろうか。」
と自身のこれまでを「反省」したりしていて面白い。