映画の話でコーヒーブレイク

映画の話を中心に、TVドラマや旅行の話などを綴ります

THE COVE  入り江

2009-10-20 | 映画 か行
サンダンス映画祭で「観客賞」を取り、海外で注目を浴びているドキュメンタリー映画です。
現在開催中の東京国際映画祭での公開は見送られたと聞いていたのですが、
明日21日TOHOシネマズ六本木ヒルズで公開するようです。
一般公開されるのかどうか?はわかりません。
9月25日に本作を観て以来、あれこれ考え続けています。


ドキュメンタリーって、「政治の腐敗を暴く」とか「社会制度に疑問を投げかける」
「動物を救え・地球を守れ」など伝えたい明確な主張や目的があって作られます。

本作の目的は
「視覚に訴えて、和歌山県太地町のイルカ追い込み猟を止めさせ、イルカを救おう」
というものです。

* イルカ保護団体は、イルカは魚類でなく哺乳類なので「漁」でなく「猟」と表記するそうです。

 < ストーリー >
和歌山県太地町、この町に滞在するリック・オバリーは世界各地で反イルカ猟活動を行ってきた。
そこに彼の活動を映画にするべく監督ルイ・シホヨスらの一団が到着。
地元漁師達の監視をかいくぐりイルカ漁の現場をカメラに収めるための大プロジェクトが始まった。


日本でイルカの肉を食べるって、ご存知でした?
鯨肉として売られることもあるようです。(鯨とイルカは同種で違いは大きさのみとか)
私は全く知りませんでしたが、昔から日本の沿岸地域では鯨に加えイルカも食している地域が
あるようです。
現在、主に食糧として捕鯨をしている国は、ロシア、日本、ノルウェー、アイスランド、デンマーク自治領など。
アメリカは捕鯨国でありながら捕鯨に反対し、捕鯨国のカナダはIOCを脱退しているそうです。
(Wikipedia調べ)
     

映画の中心人物リック・オバリー氏は、60年代人気を博したTVドラマ「わんぱくフリッパー」の
イルカの捕獲と調教をやっていた方。番組終了後、狭い水槽に入れられたストレスからキャシーという名の
イルカが(オバリー氏の主張によると)自殺をしたことで衝撃を受け、イルカ保護に人生を賭けてます。
「フリッパー」が世界中でヒットしたことで、世界各地で捕獲されイルカショーが行われるようになった
というのは何とも皮肉です。
イルカ救助の為に世界中に出向き、ロシアでは同僚女性二人が殺されたと告白。マジですか~!?
ご本人も網を切ってイルカを逃がすなどの行為で、数え切れないほど各国で逮捕されているらしい。

    
         この方がリック・オリバー氏 

一方監督のルイ・サイホヨスは野生生物保護を目指し設立された OPS(Ocean Preservation Society)
代表の活動家で、ナショナルジェオグラフィックのカメラマンだったとか。

数年前、サーファー数人が太地で抗議行動を起こし、その中の一人が「HEROS」のチアリーダー
クレアを演じたヘイデン・パネッティーアだったことで、海外で注目されたらしい。
本映画でもウエットスーツに身を包み、泣いている当時の姿がチラッと映りました。


映画は、
 リック・オバリー氏の活動、
 IWC(国際捕鯨委員会)での日本の政治活動、
 生物濃縮によるイルカ肉の高水銀濃度が人体に与える影響、
 入り江の奥で行われる猟をカメラに収めるためにハリウッドのテクノロジーを駆使する所
などを通して、
反イルカ猟を訴え続けます。


「入り江は血に染まった・・・」とショッキングな表現を使っていますが、牛だって豚だって鶏だって、
食料にするためすればそこは血に染まります。
入り江の音声を聴き、イルカの断末魔(?)だと涙を流すのはあまりに感傷的です。
意図的にイルカ猟の事実を隠していると主張しているけれど、牛や豚の場面をすべて
フィルムに収めて公開はしないけれど、隠しているという感覚は無いでしょう。


捕鯨を行わないカリブの国々に資金援助をすることでIWCでの捕鯨賛成票を金で買っている
という日本への非難は、正々堂々と戦うはずの国際スポーツ界でのルール改正などでも
よく行われる政治活動じゃぁないですか?

生物濃縮により食物連鎖の頂点に立つ鯨やイルカは水銀に汚染されていると主張する。
それならマグロも危ないでしょう。
基準値の20~40倍の含有量と聞くと、食べるのは控えた方が良さそうです。
でもそこがポイントなら、食べるのは危険という前に、水銀に汚染されたイルカや鯨を救おう
という行動や、環境・水質汚染問題に話が向かうなら理解できるが、
そこには全く触れずに「イルカが殺されている、何時間も苦しんだからだ」という所に焦点が
いくのは説得力に欠けるでしょう。

渋谷の交差点で若者にインタビューし、ほとんどの日本人がイルカを食べることを知らないのに
果たして「鯨・イルカの肉を食べるのは日本の文化」といえるのか?と問いかける。
昨年JRの広告で一気に知名度が上がった「蘇民祭(裸祭り)」。ほとんどの人が知らなかったけれど
1000年以上の歴史を持つ文化です。
インターネットやマスコミ等情報網の広がりで、奇祭?秘祭?として連綿と受け継がれてきたものが
一気に知れ渡る現代、ごく限られた地方で生き続けてきた文化は風前の灯です。
多くの人が知らないからといって、文化にあらずということはできません。

昔、生魚を食べるというと欧米人は眉をひそめたもんだけれど、今や築地は日本一の観光地、
刺身大好き外国人は急増してます。

所詮は「鯨を食べる国」「鯨を食べない国」。
食べる国は伝統文化を主張し、食べない国は鯨・イルカ等知的高等動物を食べるのは残酷だと主張する。
そこに鯨の頭数が減少、保護した結果増えすぎたと正反対の主張をしながら生態系への影響を危惧する人たち。

ホントのところはどうなんでしょう?
各国の専門家が集まって、科学的な見地から合意事実を発表してくれないかなぁ?

元々肉食系ではないし、学校給食の「鯨の竜田揚げ」が苦手だった私は、積極的に鯨やイルカの肉を食べるつもりは無いけれど、食べる人の権利を奪うつもりはありません。
食糧難にでもなれば、何だって食べるでしょう?


日本バッシングで必ず出てくる捕鯨問題とイルカ猟。
「Yutube」などで映像が公開され、とんでもないアクセス数になる昨今。
(デンマークや日本のイルカ漁の映像を見たことがあります)
日本で行われていること、何が非難され何が争点なのかを知ることが第一歩じゃないでしょうか?

日本のことを扱った映画が、賞を取り、諸外国で注目されているのに、
映画が日本で公開されず日本人だけが知らないっていうのは問題です。

「え~、知らない」「私は食べな~い」ではまずいよなぁ。



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4 コメント

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Unknown (豆大福さんへ(ryoko))
2009-12-13 14:30:22
長いコメントありがとうございます。
お返事が大変遅くなってしまい申し訳ありません
コメントを頂いてから色々考えてしまいました。
私は豚や牛は食べますが食べ無くても平気、炭水化物と野菜でOKです。「う~、肉食べたい」なんてことはないですし、食に関しては保守的で、新たな食材に挑戦てこともないです。
子供の頃、給食の鯨の竜田揚げや、家で食べるはりはり鍋(鯨肉と水菜)は苦痛でした。私個人は鯨を食べようとは思いません。
関西ではおでんに「ころ(鯨の脂身)」や「さえずり(鯨の舌)」が入ります。
「食」というのはその地域の文化の基本だと思います。(女性割礼など食以外のものについては別問題です)
日本食を食べて「日本人に生まれてよかった~」と言ったり、外国に住んで「ご飯に味噌汁が飲みた~い」と思うように、基本となる味覚は一生続くと思います。

現在食べるものが無く危機に瀕する地域もありますが、先進国では飽食の時代、お金さえ出せば世界中の珍しいものでも饗することができます。しかし、日本でも数十年前までは食べることができず、手近に手に入るものを工夫して食べてきました。県民ショーなど見ていると、食文化の多様さと知恵に驚かされます。
そういう意味で、これはいいけれどそれはダメということができるのかなぁと思います。
勿論絶滅の危機に瀕している種である場合保護することは必要だと思いますし、水銀含有量など食することで人体に影響がある場合は禁止すべきだと考えます。
食する国と食さない国の専門家で異なる結果がでないような共同調査研究をして欲しいもんです。
食べるという行為は生きてゆくための基本で止めるわけにはいきません。命をいただいて生きる以上、感謝の気持ちを忘れてはいかんと思います。
時間制限食べ放題や大食い競争などで、食べ散らかしたり、無理やり詰め込んだりするのは如何なものかと思います。

最近読んだ記事で、グリーンピースから分かれた過激組織「シーシェパード」(カナダ人設立のアメリカの組織で、船がオランダ船籍でオーストラリアを拠点とする組織)の活動に対し、鳩山政権は政府として初めてオランダに船の取締り強化を求めたそうです。またオーストラリアの警察がこの船の強制調査に踏み切ったとか。ただ前回反捕鯨を掲げて当選した首相は、次の選挙を控え及び腰だとか。

この問題はお金と政治が絡んだ、非常に難しい問題です。

ただ、鯨やイルカが高等動物だからそんな動物を殺して食べるのはかわいそうという感情論だけで非難され押し切られることには、反発を覚えます。

今後食料資源の争奪ってことになったら、そんな感情論はぶっ飛んでしまうでしょうが・・・。

お返事を書くのに悩んでしまいましたが、今後とも、コメント頂けると嬉しいです
返信する
Unknown (豆大福)
2009-12-06 05:33:52
私はイルカ・クジラ猟反対です。
(というか、全ての猟に反対です。魚の大量捕獲にも反対です。)

牛豚鶏はどうなるんだ、という反論もあると思います。
私自身は、できる限り肉類は食べない「なんちゃってベジタリアン」です。
「知性があるから」「かわいそうだから」などの感情論はあまり好きではないです。現に人間には計り知れないすばらしい能力と知性を持った動物を日常的に食べているわけですから、この動物はいいけど、この動物はだめ、というのはおかしいと思います。
とにかく、人間は命を食べて生きているということを自覚しなければならないのです。

問題は、ならばどんな命でも食べていいのか、ということ。飼育されている魚類、牛豚鶏で足りるのではないでしょうか。必要以上に食用肉類の種類を増やすことはないと思います。
寿司や焼き肉しゃぶしゃぶ等の食べ放題で大量に残される魚や肉がある以上、食料となる肉類が足りない、とは言えないと思います。クジラやイルカを食べなくてもタンパク源は確保できています。

水銀の問題も、既にカジキ、マグロ等を食べる際は注意が喚起されていますし、人体に危険なものを敢えて猟をしてまで食べる必要性はないと思います。

「文化論」については、文化とは地域性のあるものだと思います。知る人の少ない奇祭等は、文化には違いないでしょうが、日本・日本人全体の文化とは考えにくいです。その地域固有のものと言えると思います。
クジラ・イルカ猟も日本全体の「文化」とは言いがたいと思います。(むしろ「習慣」という言葉が適切ではないかと思いますが、今はそこまでは述べません)
私自身、クジラ・イルカの肉を買って食べたことは一度もありませんし、私の家族親戚友人もだいたいそうです。鯨・イルカ食を文化だとは全く思えません。
それに、「文化」ならば何でも良い訳ではないと思います。例えば、アフリカで行われている女性割礼も「文化」といえるかもしれませんが、人権を侵害し、命をも奪う危険のあるものが「文化」として正当化されうるものではないはずです。

昔からクジラ・イルカ猟を行ってきた地域の漁師さんや一部住民の方たちにとっては、それが生活の糧ですし習慣でしょう。今さら止めろと言われても無理な話です。
クジラ・イルカ猟の問題は、この猟を続ける方達にとって死活問題だということが大きいのではないでしょうか。
調査捕鯨にも莫大なお金が絡んでいます。
要はお金の問題、のような気がします。
それらの産業に携わる人に対しての補償と代替策が提示されなければ、単純に止める、ということは難しいでしょうね。

でも、これほどまでに世界的に批判されている中でも続けなければいけないのでしょうか。
鳩山首相は反捕鯨国のトップにはリップサービスでお茶を濁しているようですが、外交上の大きな摩擦になりかねない重要な問題です。もっと真剣に取り組んでもらいたいものですが。

個人的には、国として、段階的にクジラ・イルカ猟をさらに制限し、いずれはやめる方向に持っていけないものかと考えています。

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こちらにもありがとうございます。 (シナモンロールさんへ(ryoko))
2009-11-02 22:17:01
反応遅くてすみません。
そうですよね、立ち位置が問題ですね。
フリッパーのおっちゃんは、ホントにイルカが好きで助けたいんだろうけれど、中には派手なことをしてマスコミの注目を浴びることで資金を集めることが目的の団体もあるらしいし、だから余計にややこしいことになって平行線ってことになっちゃうんでしょうね。
困ったもんだ。
返信する
Unknown (シナモンロール)
2009-10-27 03:54:28
そうなんですよね、ドキュメンタリー。
ドキュメンタリーで明るく楽しいというのって皆無ですもんね。面白そうなんだけど、娯楽として映画/フィルムを見たい時には躊躇してしまいます。

難しい問題ですよね。グリーンピースのHPにもクジラ肉についての記事がありますね。
いつも思うんですが、こういう環境だとか、文化だとかいう問題って、立ち位置が違うとお互いに理解できないのかなって。しかも、どんな事柄にもそこには利益という側面があるので、それを知らずにきれいごとを語っても、おそらく平行線なのだと思うんです。いくら正しいと思っていても、損得が発生するものには
それがまかり通らない。。。。
 
わんぱくフリッパーの調教をしていた人かあ。いまやどこでもイルカショーしてるのにね。 

まとまらなくてご免なさい。
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