映画の話でコーヒーブレイク

映画の話を中心に、TVドラマや旅行の話などを綴ります

ファースト・フード・ネイション  FAST FOOD NATION

2008-09-28 | 映画 は行
「食の安全」がこれほどまでに危機的状況に陥ったことがあったでしょうか?
製造年月日の改ざんに始まり、
産地偽造に、品質表示偽造、
中国産の毒(メタミドホス)入り餃子に三笠フーズのカビ・農薬汚染米の食用転売、
メラミン入り粉ミルクは対岸の火?日本は関係ないだろうと思っていたのに・・・
とうとう日本にも飛び火、
と、枚挙に暇が無い。

毒入りが出た頃から、
大騒ぎになった製造年月日の改ざんや肉の表示偽造が、さほどひどい事に思えなくなってしまった。
「命に係わるわけじゃなし・・・」って随分ハードルが低くなったしまったもんだねぇ


この映画を見ると、ファーストフードのハンバーガーを食べるのも躊躇するかもしれません。
「世の中には知らないほうが幸せなことがたくさんあるんだよ」という映画のコピーの言葉通り、
ハンバーガー好きの方は見るのを止めておきましょう。
な~んて書いたら、かえって気になって怖いもの見たさに呼ばれちゃったりして



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 ファーストフード・ネイション  FAST FOOD NATION 2006 

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  < ストーリー >
カリフォルニア州アナハイムにあるハンバーガー・チェーン“ミッキーズ”の本社。
マーケティング部長のドン(グレッグ・キニア)は、大学が行った各社の肉パテ分析結果から
自社の牛肉パテに糞便性大腸菌が混入していたと社長から聞かされ、
調査のためコロラド州コーディにある精肉工場に赴く。
劣悪な労働条件の下、下請けの精肉工場で酷使されるメキシコからの不法移民。
店舗では、安い時給で働く高校生アルバイトたち。
視察した工場に問題はなさそうだったが、元の契約牧場主や工場関係者から話を聞くうちに
「食の安全性」だけでなく、現代社会が抱える問題があぶり出されていく。


ジャーナリストのエリック・シュローサーのルポルタージュ「FAST FOOD NATION」
日本語タイトル「ファーストーフードが世界を食いつくす」を原作につくった、
ドキュメンタリーではなくドラマです。
真っ向勝負のドキュメンタリーでは業界からの風当たりが強すぎるってことでしょうか?

これまたショッキングだった「スーパー・サイズ・ミー」とは違う切り口で、
ファーストフード業界を舞台に、食の安全性・格差社会・外国人労働者(不法移民問題)などの
複雑に絡み合った問題を描いています。


早い・安い・そこそこ美味いと三拍子そろって便利なファーストフード。
日本でも若者を中心に、今やすっかりなくてはならない存在です。

ここでは「ファーストフードがいかん」と告発するのではなく、
コスト削減で利益を上げようとする企業の姿勢を問うています。

利益を上げるために、徹底したコスト削減を行い、メキシコからの不法移民を低賃金で使い捨てる。
給料の高い熟練者を雇わず、未経験者に短時間で作業をさせるため、
腸を切り離すときに誤って腸を破ってしまい肉に便が混ざることで大腸菌が混入する。
問い詰めるベンに工場責任者(ブルース・ウイリス)は、
パテを生で食う奴がいるか?高温で焼いてしまえば、大腸菌なんて問題ないさ
とバーガーにかぶりつく。
えぇ~!そりゃ生では食べないけど、入ってるって知ってたらそんな絶対食べられへんよ・・・


また商品開発部では、薬品や香料を使って新製品のバーガーを開発中。
今やどんな味でもニオイでも人工的に作れないものはないらしい。

「食品の裏側ーみんな大好きな食品添加物」の著者安部司氏のデモンストレーションをテレビで見て、
コーヒーフレッシュの使用を止めました。
「安い」「便利」「見た目がキレイ」を追求するために入れる添加物。恐ろしい~。


今の世の中、日本でも高校生のアルバイト労働力なくしてはスーパーもコンビニも、
ファーストフードショップも立ち行かない。
映画の中の高校生店員は低賃金でやる気無く、床に落としたパテを拾って焼き、
バーガーに入れたり、
気に入らない客のバーガーに唾を入れたり、暇つぶしに店を襲うなら早朝がいいなんて話をしている。

アメリカ映画やドラマで描かれる労働問題といえば、メキシコからの不法入国。
経営者は不法ということで足元を見て劣悪な環境の中、低賃金でこき使う。
事故が起こって働けなくなったら、麻薬をやっていたなど言いがかりをつけ切り捨てる。
アメリカでの生活を夢見て、命を懸けて国境を越えてやってくるメキシコ人たち。
次々やって来る不法移民に、経営者側が労働力不足になることはない。

  
 * 映画とは全く関係ありません。丸の内界隈に出現した牛をモチーフにしたアートです。

この映画で一番ショッキングなのは、牛の、及び解体作業です。
当然のことではあるけれど、日々スーパーにで並ぶ綺麗に切り分けられパックになった肉や切り身の魚しか目にすることがないと
肉を食べるには動物を殺さなくてはならない」という実感がない。
や牛の元の姿と、パックに入った肉、
両者は全く切り離され、その間の工程に思いを馳せることがない。
突然切り身になるわけはなく、どこかで誰かがあのように解体作業をして下さっているお陰です

ちょっとショッキングではあるけれど「ノーカントリー」で殺し屋が使っていたあの「プシュー」ってやつを
眉間に撃つ。
足を切断し、皮を剥ぐ、内臓と肉を分け、各部位に切り分ける。

たけし一家を描いた「菊次郎とさき」だったと思うんだけれど、
ある日お姉ちゃんが飼っていたのピーちゃん?を締めて鍋にするエピソード。
「ピーちゃんが…」と泣いていたお姉ちゃんは、泣きながら「美味しいね」と言って
食べていたと記憶している。
11月公開の妻夫木聡主演「ブタがいた教室」は小学校で飼っていたブタのPちゃんを食べるかどうか、
クラスを二分し、TVでも議論を呼んだ実話に基づく映画です。 
   

誰もが食べることで命を繋いでいる以上、その作業を切り離して残酷と見なすのはおかしいですよね。
動物の死によって人間の命が支えられていることを思い、
食事の前には改めて手をあわせ「ありがとう。いただきます」と言って食べることにします。

この映画がもう一つ問うているのは、消費者の食に対する姿勢だろうと思います。


驚くのは、有名俳優が多数出演していること。
 グレッグ・キニア・・・・サブリナ、恋愛小説家、リトル・ミス・サンシャイン、
 ブルース・ウイリス・・・言うまでもなくダイ・ハードシリーズ
 イーサン・ホーク・・・・いまを生きる、ガタカ、恋人までの距離
 クリス・クリストファーソン・・カントリー音楽の大御所、スター誕生
 アヴリル・ラヴィーン・・今をときめくアイドル歌手
 ポール・ダノ・・・・卒業の朝、リトル・ミス・サンシャイン、ゼア・ウイル・ビー・ブラッド
などなど。

有名俳優の出演にもかかわらず、
2006年カンヌ国際映画祭・コンペティション部門で議論を巻き起こしたにもかかわらず、
残念ながらアメリカでの興行成績はいま一つだったようです。



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  ***** 今週 見た 映画 *****

 9月22日 「ディナー・ウィズ・フレンズ Dinner with Friends」 DVD
          デニス・クエイド、グレッグ・キニア主演
 
        「恋は突然に Catch and Release」DVD
              ジェニファー・ガーナー主演

 9月23日 「ファースト・フード・ネイション FAST FOOD NATION」 DVD

 9月26日 「ため息つかせて Waiting to Exhale」 DVD
      katさ~ん、見ましたよ~。
     確かに仕事を持った4人の女性の恋愛・友情ストーリー。
     「セックス・アンド・ザ・シティー SATC」と雰囲気似てました。
     これを見るとSATCがいかに特殊な世界の話で非日常かがわかりますね。 

ウォンテッド  WANTED

2008-09-25 | 映画 あ行
実は公開前(9月20日)に記事をアップしたくて久々に先行上映へ
なのに・・・17日に「おくりびと」を見たばっかりにそちらの記事を先にアップ。
「ウォンテッド」が後回しになってしまいました。

予告編でスゴク、すご~く興味を惹かれたこの作品。
最近の予告編ってなかなかの盛り上げ上手。
以前「ジャンパー」の予告で期待膨らみ過ぎたのか、見てがっかりした時の悪夢が蘇る。
「ハンコック」も、意図的にシャーリーズ・セロンを出さず、
ウイル・スミスの明るいキャラヒーロー物?なんて勝手に暴走してしまったしなぁ~・・・
果たして今回は大丈夫?

         

 * 覚醒せよ、新次元へ。 *
   

映画を見終わってから、頭がふわりふわり
覚醒を通り越して、目、めまいが~?
おいおい、ポケモン症候群じゃああるまいな~?
「お部屋を明るくして、一定距離を保ってね」って映画館じゃあ無理
一生懸命目を凝らして見すぎたかも・・・ちっちゃい子供じゃあるまいし?


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     ウォンテッド  WANTED


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最近ファンタジー映画がなりを潜めたと思ったら・・・コミック原作ヒーローものが相次いで公開。
この映画はグラフィック・ノベル原作ですって。 ん?
グラフィック・ノベルって何ですか???コミック?、小説?漫画ってことですか???
カタカナ使わず分かりやすい表記を求めます
コンフィチュールってジャムでしょ!ドルチェってデザートだよね。(言い換えてもカタカナ・・・)
コンシェルジュ(案内係)って、コンセッション(売店)って、何じゃらほい~?
カタカナ使たらええのんかい?
少々八つ当たり気味・・・


 < ストーリー > シネマトゥデイさんより

恋人にも友人にも裏切られ、いいように利用され、上司の女性からもガミガミ言われ、
自分の人生にうんざりしているウェズリー(ジェームズ・マカヴォイ)。
そんな彼の前に突如現れた謎の美女フォックス(アンジェリーナ・ジョリー)。
ウェズリーの亡き父が秘密の暗殺組織の一員で、
すご腕の暗殺者だったが殺害されたという事実告げる。
訳もわからず組織に連れて行かれ、ウェズリーは組織を継承する立場にあると言い……。


秘密結社もアメリカ映画の大好きなテーマの一つ。
ナショナルとレジャーの「フリーメイソン」、
ジャンパーの「パラディン」
ダ・ビンチコードの「テンプル騎士団」
現在撮影中?の天使と悪魔(「ダ・ビンチコード」の前作)に出てくる「イルミナティー」
グッド・シェパードの「スカル・アンド・ボーンズ」
そして本作は1000年の歴史を持つ「フラターニティー」

「フラターニティー」って、ギリシャ文字のアルファやデルタ、オメガなんかを名称に付けた
大学の友愛組織じゃなかったっけ?
それ以外にも、同業者組織にもfraternityを使うのですね。


「アキレスの時代以来、神に変わり『運命の意思』を実践してきた秘密の暗殺組織“フラタニティ”。
羊のように群れて生きるか、それとも潜在意識のなかの狼を目覚めさせるか、
逃れようとしても無駄だ、すでに運命は選択されているのだ。
我々の目的は世界の秩序を守ること。“1を倒して、1000を救う”君は我々の最後の望みだ。
今こそ、その能力を覚醒させなければならない。さあ、仲間になろう」
って、この組織は何なんだー?
か、神に変わってだ~~!?大きく出たね~。
「月に変わって、おしおきよ~」ってセーラームーンかい?
どこかからの指令?織物工場の糸の織りにあるって・・・飛ばした網目の暗号が暗殺指令?!
「1を倒して1000を救う」とフォックスの組織加入のいきさつ話を聞いたとき、
トム・クルーズ主演、スピルバーグ監督の近未来映画「マイノリティ・レポート」を思い出しました。
起こってもいない犯罪のために抹殺されるのは、やっぱり納得いかんよね。
深く追求するのは止めましょう。
この映画はあ・く・ま・でアクションを楽しむ映画です。ハイ。


「ハエの羽を撃て」ってまるで宮本武蔵やね。箸で挟むのとどっちが難しいのかしら?

暗殺集団の一員になる為に、特訓・特訓また特訓
殴る・蹴る・刺す、まるでサンドバッグ状態。
回復風呂で回復しても、またぞろサンドバッ~グ。いやぁ~、めっちゃ痛そう
回復風呂ってパラフィンパックみたいじゃない?超高性能高圧酸素室みたいなもんかしら?
私も回復風呂入って、元気ハツラツ~になりたいよ。


全編こんなのあり?の連続。アドレナリン、ドバーと出まくりです。
弾道が曲がる・・意志の力で曲げろってあ~た
大音響とこれでもかこれでもかというありえないアクションの連続

見終わって何かが残るわけでも、感動があるってわけではなく、
大スクリーンでアクションを楽しまんかいって映画です。
監督は・・・ロシア人?ほぅ、虎退治のプーチンも真っ青だぜ。


アンジェリーナ・ジョリーはこういう怖い顔したアクションが似合うな~
笑顔を見せられても裏があるやろ?と勘繰らずにいられないような役、いいね!
アンジェリーナの目力はスゴイ!
あんな目で見られたら「蛇ににらまれた蛙」身動きできないよ、固まる
アンジー扮するフォックスだけが「フラターニティー」の掟を守ったんだね。
モーガン・フリーマンには騙されたよ・・・


ジェームズ・マカヴォイの快進撃は凄いですね~。
「ナルニア国物語」
「ラスト・キング・オブ・スコットランド」・・・人食いアミンにとんでもない目に、これも痛そうでした。
「つぐない」ではキーラ・ナイトレーとのラブシーン。
そして本作、次々と主役です。

最初は風采の上がらない情けない奴。悪くないのに「アイム・ソーリー」が口癖
ところが・・・日頃鍛えていらっしゃる?服の上からでは想像できないほどのマッチョ
最後には筋肉隆々で顔つきも別人のよう、
しっかりクールな殺し屋の風貌になってはりました役者やなぁ。

おぉ、懐かしのテレンス・スタンプ。枯れて渋い!


質問です。
あの紡績工場やフラターニティーの本部のロケ地はどこなのでしょう?
御存知の方いらっしゃいましたら、お手数ですがお知らせくださいませ



それにしても話題の人を吹き替えとかプロモーションに使うの、もう止めませんか?
DAIGO(竹下元首相の孫)のプロモーション活動ははっきり言ってマイナスです。キッパリ!
プレミア試写の様子や彼のCMで、予告編で作り上げたイメージが完全に壊れたように思います。
何故DAIGO?
映画とイメージ合わんでしょう?


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おくりびと

2008-09-20 | 映画 あ行
水曜日朝10:30からの回、何と!満席です。
年齢層は高め、平日レディースデイなので女性が多いのは勿論、
年配のご夫婦連れの方々が大勢見受けられました。前の日にチケット予約してよかった

納棺師という職業、初めて知りました。
幸いと言うべきか、祖父母や親戚の告別式には出ましたが納棺の儀に立ち会った経験は
この年になるまでありません。
このお仕事、無かったらみんなが困るお仕事です。
キッザニアで体験学習というわけにはいきませんものね。
世の中にあまり知られていない不可欠なお仕事っていっぱいあるよね~。

告別式やお通夜から帰って家に入る時、「清めの塩」をかけるのは当然のことだと思っていました。
何故?と疑問を持つこともなく、そういうもんだと。

叔父の告別式でお坊さんがおっしゃられた、
「「死」は穢れたものではありません。それで私共の宗派では清めの塩をお配りしていません」
というきっぱりとした言葉にちょっとびっくりしたけれど、そうだよねぇと思いましたが
この歳までやってきたことを変えるというのは、何とも居心地が悪くやっぱりやってます。
でも、穢れてなんていないよなぁ~。

そもそも「穢れ」とは・・・
ウィキペディアによると
『穢れ(けがれ)とは、仏教、神道における観念の一つで、
不潔・不浄等、清浄ではない汚れて悪しき状態のことである。
穢れが身体につくと、個人のみならずその人が属する共同体の秩序を乱し災いをもたらすと考えられ、
通常の生活だけでも蓄積されていくが、死・疫病・出産・月経、また犯罪によって身体につくとされる。
穢れは禊(みそぎ)や祓(はらえ)によって浄化できる』とある。

「死と出産」って「生と死」にかかわることと、「疫病や犯罪」と一緒にしちゃっていいのかね?
トイレは「ご不浄」陽のあたらない北側に・・・、でも無かったら困るぜ!
「ご」を付けるってところにそのへんの思いがこもっているのかも?

政治家の「みそぎ」ってどう考えても浄化なんかされてへんし、
今この時期、相撲の塩も浄化の助けになってへんのとちゃうか~?



     **************
     *                 *
     *    お く り び と    *
     *                 *
     **************


 < ストーリー > yahoo映画さんより

楽団の解散でチェロ奏者の夢をあきらめ、故郷の山形に帰ってきた大悟(本木雅弘)は
好条件の求人広告を見つける。面接に向かうと社長の佐々木(山崎努)に即採用されるが、
業務内容は遺体を棺に収める仕事。当初は戸惑っていた大悟だったが、
さまざまな境遇の別れと向き合ううちに、納棺師の仕事に誇りを見いだしてゆく。



「旅のお手伝い」という求人広告コピーと高給に惹かれて面接に行った大悟。
誤植で実は「安らかな 旅立ち のお手伝い」ってうまいなぁ、座布団3枚!
社名NKエージェントとは納棺のことって・・・社長!
棺おけってランクがあるのね、フムフム。
5万円、10万円、30万円。めちゃくちゃ大雑把な料金体系やね。
30万円の棺は総ヒノキ全面透かし彫り~豪華!
でも一回だけで燃やしちゃうんだよね。
モッタイナイ!かといって、こういうときケチれないよなぁ。大多数は中とって10万円コース?

この映画、よかった~
何がいいかって、日頃気にしない、気づかない、気づきたくないことに目を向けさせてくれる。

家で死を迎えるということがほとんど無い昨今、
「死」が遠いもの、
    非日常なもの、
    忌み嫌われるものとなり、
「生」に対する意識も希薄な気がする。

人はいつかは死ぬという宿命を持って生まれる。
その時がいつ、どういう風に訪れるかは誰にもわからない。

孤独な死、事故死、自ら命を絶った死、笑顔で送られる死等々、
最初はおっかなびっくりだった大悟も、納棺に立ち合ううちに
次第にこの仕事「安らかな旅立ちのお手伝い」に生きがいを見出してゆく。
見ている私達観客も、遺体を棺に収める時の所作に、まるでお茶のお手前のような
凛とした形式美を感じました。

季節は秋から冬へ。
舞台である山形の雪の中での「野辺送り」のシーンが印象的。
昔はあんな風に死者を見送ったのでしょうね。

ふと関西と関東の葬儀の違いに驚いたことを思い出した。
関西では榊に白い布を巻いたものを家の周りに立て、木の板に墨で名前や親族一同などを書く。
一方関東では開店祝いの花輪の色味を白黒にしたようなものを立て、布に名前等を書く。
派手だ派手だと言われる関西ですが、お葬式は落ち着いてます。
子どものころお葬式の配りものといえば、何故か必ず「あみだ池大黒の岩おこし」だった。
今はもうそんな習慣ないのかなぁ?
ほとんどのお葬式は家でやらずにメモリアルホールだものね。

クリスマスのシーン。
      
宗派を問わないNKエージェントにはツリーが飾られていましたね。
山崎努社長と事務員の余貴美子、もっくんの3人が大きな器に山盛りになったフライドチキンを
食べる、食べる、しゃぶりつくシーン。
チキン嫌いの私にはちょっと・・・でも「食べる」って生きるエネルギーの証しです。
生まれたての子ヤギの授乳体験をマザー牧場でしたことがあるけれど、その吸い付く力の凄いこと!
「生きる」ってこういう力強いもんなんだなぁと実感。
死にかかわる仕事のシーンと、食べるシーンが「生と死」を意識させる。
社長の「どうせ食べるならうまいもんがいい」に賛成!

この映画、季節の使い方もよかったです。
大悟の心に合わせるかのように、季節は冬へと向かい、
妻の美香が戻ってきて妊娠を告げる頃から雪解け、そして春へ。
春の訪れに呼応して、新たな命の芽生え、二人の仲直り、出奔した父を赦すエンディングへ進む。

四季があるっていいなあ~。
雪で真っ白なシーンは静寂、桜舞う春のシーンは一気に華やぎを感じる。
好きな季節を聞かれたら「夏か冬。はっきりした季節がいい」と答えます。
花粉症になって以来、春は楽しめないし、だんだん寒くなっていくというのは何となく物悲しくなる。
でもこの映画で春のシーンを見たときは、春って生命力に溢れた勢いのある季節なんだ~と感動!
チェロの丸~い・優しい音が映画の雰囲気にピ~ッタリ。


「死は門だ」という風呂屋の常連笹野さんも、まさに「おくりびと」だったのね。
「また、会おうな」の一言で、な、涙がーーーーー。
     
石文(いしぶみ)のエピソードで、ダメ押し・・・
石文というのも初めて聞きました。
自分の思いを込めた石を送るって、なかなかロマンチックです。

いっぱい泣かされたけれど、湿っぽくならず随所に笑いあり。

昔祖母に、「年寄り笑うな、行く道じゃ」という言葉を教わった。
若いときは気づかないだろうけれど、みんないつかは年寄りになんねんよと。
みんないつかは、死を迎え、家族に見送られることになるんやねぇ。

『人は誰でもいつか、おくりびと、おくられびとー
あなたは愛する人をどう「おくり」ますか?そしてどう「おくられたい」ですか?』
・・・この映画のコピーです。

最近身内の方を送った方によると、葬儀社の方がすべてこちらでしますとおっしゃって、
綺麗に納棺された状態での御対面だったとか。
湯灌(ゆかん)や納棺など、地域や担当された葬儀社によって随分違うものかも知れませんね。


最後に、広末涼子はちょっと・・・他の出演者が皆さん芸達者な方々ばかりだったので・・・。

*** おまけ ***
   滝田洋二郎監督記者会見   



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***** 今週 見た 映画 *****

 9月15日 「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド There will be blood」 DVD

  9月16日 「大統領暗殺 Death of a President」 DVD

    「ミセス・ハリスの犯罪 Mrs. HARRIS」 DVD 

 9月17日 「おくりびと」@TOHOシネマズ海老名




セックス・アンド・ザ・シティー

2008-09-13 | 映画 さ行
実は私、6年位前からテレビシリーズの「セックス・アンド・ザ・シティ」の全エピソードを見ました。
何にそんなに魅かれたのか?
毎回、キャリーの新聞コラム「セックス・アンド・ザ・シティー」のテーマに沿ってストーリーが展開し、
キャリアと恋愛を求めながらもこれでいいのかなぁ~?と揺れる
30代(サマンサは40代?)独身女性の本音を、
飾らずに、あるときはカッコよく、あるときはかっこ悪く。
大都会NYといえど、パーティーやなにかカップルで出席が求められるアメリカ社会では、
キャリアを希求し独身で生きていくのはなかなか大変なんだなぁ
思わず「ガンバッテ!」とエールを送りたくなる話でした。

第4シーズンくらいまでは面白かったんだけれど・・・最後のシーズンはちょっと、
サマンサの癌克服とスミスの献身的な姿には泣かされましたが、
結婚に憧れていたのはシャーロットだけじゃなかったっけ?
キャリー、キャリアを捨ててどうすんの?やっぱりビッグか・・・

あれから4年、その後の4人は?といわれてもちょっと・・・
最終シーズンはイマイチだったし、その上TVのイメージ潰すんじゃないの?と心配しつつ鑑賞。

どうもファッションやアクセサリーにのみ注目が集まって、どこそこのブランドなんてことが
大きく取り上げられ、女性雑誌が軒並み特集を組んでいるそうな。
でもTVシリーズでは、
金持ちの若い娘達がブランドで固めてなかなか予約が取れない有名クラブに出入りしているのを見て、
サマンサが「自分でしっかり稼げるようになってから買うものよ」と憤慨していたっけね。

  
 バーゲンでTV全シーズンをカバーしたこんな本も買っちゃいました



                  

  セックス・アンド・ザ・シティー   SEX AND THE CITY

                  

女の子達は二つのL:LABELLOVEを求めてNYを目指す。


ブランド物に全く興味のない私ですが・・・
ウエディングドレスはデ・ラ・レンタのがシックで素敵でしたね

オープニングの4人の紹介は短いけれど的確。
4人は、年も職業も違うけれど、経済的に自立したハンサムウーマン達。

   
新聞のコラムニスト、現在作家のキャリー・ブラッドショー。
PR会社社長で、恋人スミスのマネージメントの為LAにいるサマンサ・ジョーンズ。

       

ハーバード卒の弁護士だがバーテンダーのスティーブと結婚し一児の母となったミランダ・ホッブス。
画廊勤務後医者と結婚するも離婚。現在弁護士と再婚、不妊に悩むシャーロット・ヨーク。

        

全員違う分野で働いていおり、性格も全く違うからこそ、こんなに仲良しになれたのだろう。
できれば四人の出会いとかキャリアを築くまでのお話なんて、今後やってくれればうれしいなぁ~。


愛し合っていても男と女はひょんなことでずれちゃうんだねぇ。
男と女の間には、暗くて深い川がある~なんて、むかし野坂昭如氏が歌っておられましたが
男女の考え方にずれがあるということを認めなくてはなりますまい。

「形式(結婚式)なんてどうでもいい、ただ君がいれば」と言うビッグ。
一方のキャリーは、シンプルでな~んて思っていたのに、回りに煽られすっかり舞い上がり、
ビッグの憂鬱に全く気付かない。
そもそも結婚式ってものは女性の為にするもので、男性はあくまで脇役です。
(最近は主役をやりたがる男性も増えているらしいけれど・・・)
初婚でファッションリーダーのキャリー、ブランドドレスを並べられたらそりゃ舞い上がるよなぁ。
ビッグとのこれまでの長~い、何度かの裏切りも含めた長過ぎた春を思えば尚のこと。
一方、3度目の結婚で地味に市役所式を済ませてもいいと言うビッグ。
年も年だしあんだけ派手にされて晒し者にはなりたくないってことですね。
確かに男性は引くかも・・・愛する彼女のために我慢して欲しいとは思うけれど。

指輪を自分で買いたいサマンサと買ってあげたいスミス。

仕事と子育て、痴呆の姑のことで頭がいっぱいのミランダと、愛を求めるスティーブ。

子供ができないことでかなり参っていたシャーロットも、旦那さんの勧めで養女受け入れ・・・
あのままいってたら「ジュノ」のカップルみたいに、不妊治療で暴走する妻に夫が引いて離婚なんてことになったかも?

男と女は難し~い。
女の気持ちを理解してくれる男性という意味ではゲイの友人が一番よいのかも?
キャリーとスタンリー、シャーロットとアンソニーの関係ね。
私も、スタンリーみたいな友達が欲しいなぁ。

ヴォーグの編集長を演じるのはキャンディス・バーゲン!TVシリーズにも出ておられました。

ミスター・ビッグの本名は今まで知らんかった~!TVシリーズではずっと「ビッグ」だったよね。
しか~し、ビッグも年をとったもんだ・・・
初めて登場した時のカッコよさったら
  
彼を見たさに全シリーズ見たといっても過言ではありません。

それにしてもサマンサ!寿司の女体盛りって・・・日本じゃそんな食べ方せんよ!
あらぬ誤解を生むではないか。

第6シーズンでガンになって化学療法をし髪が抜け坊主にし落ち込むサマンサを励ますため
自分もトレードマークの長髪をバッサリ切ったスミス、泣かせるなぁ~。
だからこそ、あれほど男をとっかえひっかえのサマンサがダンテの誘惑にも負けず
3年間もスミス一筋で尽くしたんだね


仕事にも恋愛にも貪欲で、妥協することなく自分にピッタリの相手を探し続ける4人の姿は、
セックス描写は過激だったけれど、とても純粋で、
年収何千万円以上でなきゃあダメなんていう日本のタレントと違って
打算のない純愛ドラマを思わせます。

やはりサマンサ姉さんはみんなのリーダー。
50歳を過ぎあんなに愛してくれる年下の彼氏がいるのに、
「あなたより自分が好き」と言ってNYに戻る姿に喝采
彼女はハンサムウーマンの鑑、メンタリティーと経済力はほとんど男です
いやいや男以上に男かもね。


映画についての予備知識は全くなしで見たので、ジェニファー・ハドソンの登場にはビックリ!
彼女を起用して歌うシーンは(アシスタントだもんな~)無し・・・もったいない!
と思ったらエンディングであの迫力ある声!!!うま~いなぁ
   

それにしても現実問題として、女同士でここまで堅い友情を築くことができるのかしら?



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 ***** 今週 見た 映画 *****

 9月10日 「この自由な世界で」@渋谷シネアミューズウエスト
                ケン・ローチ監督の社会派

 9月12日 「アニー・リボウィッツ レンズの向こうの人生」DVD

    「ラブ・アぺタイザー Feast of Love」 DVD
         モーガン・フリーマン、グレッグ・キニア主演

 9月13日 「ウォンテッド WANTED」先行上映@109シネマズMM横浜

ハンコック

2008-09-06 | 映画 は行
映画館での予告編やTVのCMで何度も見たこの映画。
ワイドショーや映画情報番組に主演のウィル・スミスとシャーリーズ・セロンが出演し、
そのユーモア溢れるチャーミングなキャラ全開!好きな役者さんの一人です。
公開早々109シネマズMM横浜にて鑑賞~。


           

   ハンコック   HANCOCK

            
      Good job!
   
でも何故か、手元にチラシが無い!!!
映画館に足を運ぶ時には近日公開~のチラシをもらってくるのに・・・
ハンコックのチラシって置いてましたっけ?
という訳で、写真は2枚のみ、映画館のデ~ッカイポスターです。

        


 < ストーリー >  
ハンコック(ウィル・スミス)は不死身でスーパーパワーを持つヒーローだが、
酒びたりでキレやすく、勢いあまってあちこち壊してしまうため、市民には歓迎されていない。
ある日、線路で立ち往生していたPRマンのレイ(ジェイソン・ベイツマン)を事故から救う。
そのお礼にと、レイはハンコックに「愛されるヒーローにならないか」と提案する。
そんなハンコックとレイを複雑な重いで見つめるレイの妻メアリー(シャーリーズ・セロン)。
ハンコックとメアリーの間には驚くべき秘密が・・・。


「ハンコック」というタイトルただの名前なのかな?と思っていたら・・・
映画の中で言ってました。
記憶喪失で名前も忘れた彼が「ジョン・ハンコック」って名前かと思って
そのまま名乗っているとかなんとか・・・???

それってどういうことかな・・・?で辞書を見たら出てました!アハ体験!
「ジョン・ハンコック」って英語で「自筆の署名」って意味なんですね。
書類に記入する時「あなたの名前を記入してください」の意味で書いてある
「横浜太郎」とか「日本花子」みたいなやつ。
「Put your John Hancock on that check.」で「小切手に署名しなさい」ってことですって。
元々はアメリカの政治家ジョン・ハンコックが独立宣言に最初に署名した人で、
彼の文字が肉太で鮮明だったことから署名の代名詞になったそうです。

  

「名前を書いて下さい」の意味の書類を見て、自分の名前を「ジョン・ハンコック」だと思ったってことやね。
このシーンは笑うとこだったのね・・・
シカゴにあるハンコックセンターも彼の名前にちなんだものなんですね。


前半は期待通り。悪を退治するも勢いあまって大暴れ。
アルコール依存症で、ヒーローのはずなのに、街のみんなの鼻つまみ
子供にまで嫌われる始末。
でも武装強盗をやっつけたり、うちあげられた鯨を投げ飛ばして海に返したり、
酔っ払って道路標識ぶっ壊すシーンなんかは可笑しかったな。

ハンコックは80年前フロリダで記憶をなくし、
以来そのスーパーパワーのせいでずっと孤独な日々を送ってきたんやね
普通誰か人がいなくなったら・・・捜索願いが出るだろう。
なのに誰一人、自分を探してくれる人がいなかったということ、
自分の名前も、何故スーパーパワーがあるのかもわからず、
その結果アルコールに走っちゃったんやね~。
ちょっと切ない

そこに現れたレイはPRマン。
今でこそ電通や博報堂などCMを作る職業の認知度は高いけれど、
初めてPRマンの仕事ぶりを映像で見たのは「奥様は魔女 BEWITCHED」。
サマンサの夫、ダーリンが広告代理店のPRマンで、
クライアントの前でプレゼンテーションするシーンがよくありましたっけ?
コピーライターなんて仕事が注目され始めた頃、
「そうだ!ダーリンの仕事やんか~」と思い至りました。

レイは、ハンコックを正統派ヒーローに変身させるべく策を練る。
策の一環として、身奇麗な格好をし、市民に謝罪、そして刑務所に入りグループセラピーにも参加。
一応犯罪者を取り締まっていたハンコックの不在で、犯罪が増え、
出てきて何とかして欲しいと泣きつかれ、
ジャジャ~ン正義のヒーロー再生です

さぁ~これからどんな武勇伝?と思ったのに・・・

でも、シャーリーズ・セロンがただの妻役~?
んなわけないでしょう~
ないよね~。
ってあたりから、ありゃりゃ~!の展開です。


***** ネタ ばれます *****



メアリー、「蓋が堅くて開かないわ」なんて可愛い奥さんを演じていたのに・・・
あなたのパワーは何ですか?!

メアリーの正体が分かってからは、レイも息子もみ~んな置いてけぼりですか?
すっかり二人の世界になっちゃってからに・・・
離れていると引き合うけれど、近づくと力を失うって・・・厄介ですこと。
紀元前から一体何回ついたり離れたりを繰り返してんの?

自分が何者かがわかり(あんたは何者?私にはわからんよ)、
一人ぼっちじゃなくなって、
ハンコックはニューヨークで正統派ヒーローを続けるってか?

メアリー、レイや息子は年をとっていくんだよ。
あぁ、ハンコックとメアリーの運命やいかに~。

何千年も生きてたら、流石に疲れませんかねぇ?
映画も前半に比べて後半ちょっと息切れ気味?


ジェイソン・ベイトマンは最近大活躍ですね。
「キングダム 見えざる敵」に始まって、
「マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋」に「ジュノ」そして「ハンコック」。
地味なタイプだけど結構ファン




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 ***** 今週 見た 映画 *****

 8月31日 「ハンコック」@109シネマズMM横浜

 9月 6日 「セックス・アンド・ザ・シティー」@109シネマズMM横浜

闇の子供たち

2008-09-03 | 映画 や行
日本映画で、アイドル系宮崎あおいちゃんや妻夫木君を起用したこういう社会派は少ないのではないでしょうか?
日経の映画批評でなかなか取れないという高評価。
こりゃ見に行かなくっちゃ~
でも、きっと東京の小さな劇場でしかやってないんだろうなぁ・・・と思ったら、
何と!109シネマズMM横浜で上映中!


   ****************

         闇 の 子供 たち

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 < ストーリー >

タイ在住の新聞記者南部(江口洋介)は、本社記者つかんだ臓器密売についてのネタを調査。
日本人の子供がタイで臓器移植を受けるというものだ。
NGO職員の音羽(宮崎あおい)、フリーカメラマンの与田(妻夫木聡)と共に、
危険を犯しながらその真実を追う。



東南アジアへの売春ツアーなどという不名誉な事実がマスコミを賑わすことがある。
フィリッピンで日本人とのハーフと思しき肌の色・顔立ちの子供達が結構いるらしいという
TVドキュメントを見たこともある。
だが、この映画で描かれるのは、幼児、10歳にもならない子供達の人身売買で、
売春・臓器密売などの目的で、貧しい村から何も知らずに連れてこられた子供達だ。
格子の檻の中に入れられ、虐待され、病気になると生きたままごみ袋に入れられ捨てられる。
また、臓器提供のため、何もわからぬまま殺される。
非常にショッキングなことだが、こういうことが行われているのは事実だろう。


20年以上前だが、アメリカの牛乳パックのボディーに、顔写真付きで
「MISSING CHILD! 行方不明の子供 捜しています」という広告があったのを記憶している。
先進国アメリカで子供がいなくなるということもショックだが、
牛乳パックに捜索広告が出ていることも驚きで、
それ以上に身代金目当てでなく何の目的で子供がいなくなるか謎だった。
アメリカでは子供のできない人が養子縁組を望むも、なかなか順番がまわってこないとか
審査が厳しくてなかなか縁組できないということもあるようだ。
ミシェル・ファイファー主演の「ディープ・エンド・オブ・オーシャン」で
子供が誘拐された切ない家族の話もありました。
いまも牛乳やジュースのパックに子供捜索広告が出たりしているのでしょうか?

アカデミー賞外国語映画賞を取った1998年のブラジル映画「セントラルステーション」で、
ストリートチルドレンの主人公がお菓子か何につられていった先は
臓器移植のために子供達を集める組織で、「なんと恐ろしい所やなぁ」と思ったもんです。
「イースタンプロミス」は東欧の少女達が騙されてロシアンマフィアの売春組織に売られていました。

映画に描かれるってことは現実はもっとひどいってことでしょうね。


需要があるから供給するのか、売る人がいるから買う人がでてくるのか?
子供を売らなければやっていけないほどの貧困と、
子供を使って金儲けをする大人、欲望を満たそうとする先進国の大人たち。

「遠い国の話ではなく、地図の上ではたったの20cmの距離」


臓器移植で、助からなかった命が助かるということはありがたいことです。
でも日本では法律で15歳以下の子供は移植を受けることができず、海外で手術を受けることになる。
莫大な費用と時間がかかるし、
手術を行う国にも移植を待っている子供たちが沢山いるのに・・・という批判を受けることにもなる。

この映画では、一人の日本人の子供を助ける為に健康なタイの子供が売春をさせられた挙句、
麻酔をかけられ生きたまま臓器の提供者にされる。
生きたまま心臓を摘出され、殺されるということだ。

時として、科学の進歩は罪なことをする。
助かる術がなければ諦めもつくが、
移植をすれば助かると聞き、
残された時間はあとわずかで欧米での移植を待つ時間が無いとなれば、
タイでならすぐにでも移植が可能と聞けば、
どういう提供者か知りつつ罪悪感を感じながらも、心は乱れるだろう。
なまじお金があったら、決断するだけとなったら、行って移植を受ける人もいるだろう。
他人事なら正義を振りかざして批判もできるが、自分の子供がそういう状況になったらと考えると・・・
お金があるかどうかは別にしても、果たしてキッパリ断れるかと聞かれたら・・・自信ないなぁ。
まさに「悪魔のささやき」だよなぁ。

そこで儲けているのは医者と仲介者や犯罪組織で、提供者たる子供は命を奪われるだけだ。
こういうことが昔のことではなく、今現在進行形であるということにショックを受けると共に、
胸が痛く力が抜けました。

アメリカでは法的に問題が無くても、お金が無ければ移植は受けられない。
これまた親として非常に辛いことです。
デンゼル・ワシントン主演の「ジョンQ」は、貧しくて移植を断られた父が
病院を占拠し医者を脅して自分の臓器を息子に移植して欲しいという話でした。

「お金で命は買えない」なんて言われるけれど、今や命はお金で買えるんだな~。

ショックではあるけれど、こういうことが現在行われているということを知ることが、
まず第一歩でしょうか。



*****  ネタばれ あります   *****

  

           

結末は意外な展開。えぇ~!
はっきりとではないが、この一件を追っていた南部も実は幼児性愛者だったということ、
そして彼は自殺をする。
この展開はどうなんでしょう?

幼児買春が特殊なことでなく、
そういう人はあなたの身近にいるかもしれないという監督のメッセージなのでしょうが、
告発しようとする者が同じように性的目的のために幼児を買った過去があり、
罪の意識に苛まれているというのはちょっと納得でけへんよ。
罪の意識があるからこそ、罪を恥じ、命がけで告発してるんじゃないか
という考え方もあるかの知れないけれど、性的嗜好は簡単に変わるもんじゃないというしねぇ。

帰りに本屋さんによって、梁石日氏の原作を立ち読み(すみませ~ん)して確かめてみました。
やはりこの結末は原作には無く、監督の創作でした。
この結末で私は一気に醒めてしまいました。残念です。

こういう映画を見ると、どうしてもタイの国に対し偏見を持ってしまいますが、
タイは政府は日本よりずっと先進的な人身売買対策を行っており、
タイはアジアで唯一エイズ感染者数を減らしている国だそうです。
(逆に、日本は先進国の中で唯一エイズ感染者数を増やしているとか・・・)


監督は、
「この映画はかわいそうな子供たちの話でない。日本を含む先進国の児童買春者と、
それらを創り出す社会を告発する社会的な映画だ」
とおっしゃっているそうです。

供給側(売る側)だけの問題ではなく、
需要側(買う側)を厳しく取り締まり、その2つを取り持つ構造を断ち切ることが必要なのでしょうね。
難しいなぁ。



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